所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ライヴ盤。ライヴならではの盛り上がりや、ライヴアレンジなど、スタジオ盤とは違う面が楽しめるのは面白い点ですが、どうしても「過去のライヴ」の再現となるため、収められている内容は半年~数年前のものになったりします。それを、ツアー初頭のライヴをスナップショットし、ライヴツアーの後半に販売するという鮮度の高いライヴ盤をリリースしているアーティストがいます。そんなアーティストの同様の試みの3枚目の作品をご紹介します。
スガシカオ。ソウルとファンクをJ-POPに融合させる方向性だが、詞の方向性が内面的で、一時期を除けばパァーッっと明るい踊れる曲よりも、人の内面をえぐる歌の世界を聴かせる曲(詞)がむしろ彼の本質なのではないかと思ったりもする、独特の立ち位置のアーティスト。
そんな彼の2018年のライヴ作品が“LIVE BOOTLEG 3 Hitori Sugar Tour 2018”。
彼はメジャーデビューした後、一時期大手レーベルとの契約をせず、インディーズで活動していた時があるが、その前の「前期メジャー」期間には数枚ライヴアルバムをリリースしている。しかし、それらはライヴベストセレクション。できが良いテイクを集めたライヴ盤。それに対して、今回のは鮮度命。
2018年に行われたツアー「Hitori Sugar Tour 2018」。これはスガが一人でステージに立ち(同行スタッフも2人だけ)、生ギターを中心に、リズムマシンやループサンブラーは使うものの、基本シンプルに演奏されるツアーで、狭いハコで行われることもあり、スガの内側から迸るものが感じられるライヴ。
その幕開けの神奈川CLUB CITTA'公演と2日目の静岡のSOUND SHOWER ark公演から5曲が収められ、ツアーの途中からライヴ会場で販売された「BOOTLEG(海賊盤)」。ま、BOOTLEGとはいうものの、ライヴ会場、もしくはオフィシャルグッズショップで販売されるので、「公認」ではあるのだが、売り切れたらそれまでで、再販はないし、オフィシャルサイトの「Discography」にはカウントされていないような作品。
彼は今までこのテの企画盤を2枚出しているが、
その3枚目。
ライヴに来たファンが、ライヴを思い出すよすがとして、その場で売られる、鮮度こそが命の作品。ただ、ツアー初期でまだ「こなれて」いない演奏は、お化粧する前のスナップショット感があって、「完成度」とはまた別のベクトルの良さがあって、とてもイイ。
ライヴのMCの一部が導入に残されている「斜陽」は、オリジナルが収められたアルバム“PARADE”に同時収録されたアゲソング「午後のパレード」やNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の主題歌「Progress」とは真逆の曲を創ろうと思って作った曲らしい。曲のメロディの展開の仕方は「午後のパレード」の雰囲気もあるけれど、♪君の言葉のひとつひとつ/思い出して集めても/ぼくじゃ/たぶん/見つけられない/君のなにもかも/ひきうけるつもりでいた/そんなこと出来もしないくせに…♪と、詞の方向性はたしかに真逆。ただ、アルバムに収められたのはバンドサウンドで、アウトロには泣きのエレキギターソロがあってドラマチックだった。それに対して、今回は生ギター1本!アルペジオを主体とする緩やかな曲になっており、より「真逆」。
「真夜中の虹」。先日(2020年2月)参加したHitori Sugarのライヴでも歌われたスガにとって思い入れが深い曲。2005年に「コンビニ」「夏陰」などを一緒に制作したSteve Jonesが、末期がんということを知り、ハワイまで遭いに行ったけれど、気の利いた言葉もかけられずに帰ってしまった(出典:スガシカオ ブログ 2016/06/17)気持ちを歌った曲らしい。♪サヨナラさえ言わなきゃ/お別れからずっと逃げ切れるかな… /ぼくのナメクジ色の心を/現実はメッタ切りにした♪~♪何かを伝えたくて/えぐり出した言葉は/1gの重さもなく/すぐに消えてしまった♪元アレンジは、ピアノがバーンと入り、16ビートの3拍目にスネアが入って、疑似32ビートになっているスピード感ある曲だが、Hitori Sugarはギターをかき鳴らしながら歌うスタイル。後半はヴォーカルがシャウト!気合いと気持ちが乗っている。
「19才」は、19thシングルにして、アルバム“PARADE”を代表する盛り上がり曲。♪大キライな/ぼく/19才/大キライな/ぼく/19才♪大人になりきれない自分が大嫌いだと歌う(♪19才♪は「じゅうきゅうさい」ではなく「じゅークサイ」と発音)。〆のフレーズ、♪クロアゲハチョウの様に/誇らしい羽根で飛びたい/くだらないって言わないで/そんな人生がいいの♪の「いいの」は会場のオーディエンスが歌うのがお決まり。“PARADE”からの3作はスガが最もエレクトリックで大がかりなバンドサウンドだった時期で、こうして「一緒に何かする」タイプの曲が多い。元曲はバンド仕立てのエレクトリック感が強い曲。アコースティックセットだと完全に生ギター1本でも演ったりするが(動画参照)、このミニアルバムに収められているのは、一人でどれだけ盛り上げられるのか、というのを極めたヴァージョン。導入からリズムマシン+リアルタイムサンプリングループで、結構ダンサブルなアレンジだが、操る楽器としては生ギターのみ。しかし、これが徐々に盛り上がり、激してくると、リアルタイムでループ録音した生ギターのカッティングに、「ディストーションをかけた」生ギター(ピックアップ収音)のソロが乗るというハードさ。ライヴでは、必ず盛り上がる曲。
スガ独りのプレイで、ツアーとしても始まったばかり、まだ「こなれていない」状態のプレイだけれど、それだけにザクっと迫る荒々しい良さがある。
緻密で完成度が高い「スタジオ盤」や、会場の熱気やサポートミュージシャンの技を楽しめる「ベストライヴ盤」も良いけれど、それとは違った鮮度の高い「生ライヴ盤」。
スガの存在が「近く」感じられる荒さと熱さを持つ「海賊盤」です。
【収録曲】
1. 斜陽
2. 真夜中の虹
3. 海賊と黒い海
4. トワイライト★トワイライト
5. 19才
「19才」この作品に収録のものではないけれど、アコギのみのヴァージョン
完成度ではなく、臨場感と刹那感
そこが聴きどころの「録って出し」盤。
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購入金額
1,400円
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購入日
2018年05月26日
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購入場所
スガシカオオフィシャルグッズショップ
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