所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。成功したアーティストでも、その状態を維持するのは難しく、過去の遺産を食い潰しながら、無限に売れていた頃のコピーを生産し続ける人、製作意欲が減退したのか新しい作品をリリースしなくなる人もいます。一方、歳を重ねても新しい基軸を入れて進化し続ける人もいます。独自の世界を創りながらも、さらに進化を続けるアーティストの作品をご紹介します。
久保田利伸。彼がいなければ、現在のJ-POP界隈の音楽性はずいぶん違ったモノであっただろう。母音が多く、リズムに乗せづらい日本語をビートに乗せ、クロい薫りをプンプンに漂わせながら、でもポップスの芯は外さず、良質のJ-POPをリリースし続けるアーティスト。
彼の2年ぶりの15thアルバムが“L.O.K”。L.O.Kとは、Lots Of Kisses...ということらしい。
音色的に統一感もあり、「安心感」もある一方、結構目新しい曲も混じっていて、長年のファンを裏切らず、飽きさせずの塩梅が素晴らしい。
アルバムタイトルでもある「L.O.K」の短いフレーズがふわっと始まり、終わって、アルバム本編に入る。
まず、ハーフ・メキシカンのヒップホップMC/ラッパーAKLOとのコラボ曲、「Cosmic Ride feat. AKLO」。強い縦ノリのビートと、その間をふわっと歌うクボタ、リズミカルで無機質なAKLOのラップがファットなシンセに乗って届く。トーキングボックスの使い手にしてクボタの盟友柿崎洋一郎のソロが懐かしくも新しい。
このアルバム、アレンジは原則柿崎か森大輔が時にクボタとペアを組みつつ手がけるが(「Peaceful Sky」のみUTA)、どちらかと言えば森の方がスローな曲やメロウな曲が多い。森担当の中で唯一ビートが強い曲が「Loving Power」。ファットなシンセの音も柿崎とビミョーに違う。一番違うのが、声の加工がトーキングボックスではなく、ボコーダーということか。全体的に造りが新しい感じだ。このあたりはクボタと同世代の柿崎と、ひと回り以上下になる森との差か。
8曲目にフェードイン~フェードアウトで、トップにも挿入された「L.O.K」がやや長めに挟まれ、そのあとは少し曲調が違う。「Upside Down」や「Bring me up!」といったシングル曲が並ぶが、同じシングル曲である「Free Style」は「L.O.K」に挟まれたセクションに位置しており、この最後のセクションが「シングルセクション」というワケではない。ただ、若干色合いが違う(もしくは前半に比べて統一されていない)ので、アルバムとしては「+α」、というパートなのかも。
どの曲も結構色合いが違うが、ラストの「Bring me up!」は車のCFにも使われたファンキィかつポップな曲で♪Pum pum pum…♪の部分のリズムカルさが印象的な曲。これも柿崎のアレンジで、安心するなぁ...
付属のDVDはシングル2枚(1枚はダブルA面)3曲のMVと、クボタの2013年~2014年の活動...というか、このアルバムに収められている楽曲やアルバム関連の作業の記録動画。ジャケット撮影場面やMVの絵コンテ、撮影・編集シーンなどが収められる。
面白かったのは、紙で作った街の中でクボタ(と他の登場人物が)踊り、歌う、実写アニメ風の「Upside Down」のMVのクロマキー合成のシーン。このシーンでは紙の街の中をクボタがリズミカルに歩きながら、歌うのだが、実はルームランナーのようなものに乗ってその場で歩いていたという...w
アルバムとしては「L.O.K」で挟まれた部分は、統一感があり、「いわゆるJ-POP」から少し離れた感じで、独特の感性を示し、ラストはポップでとっつきやすい曲を並べている、新旧どちらのファンにもアピールする形。
本作“L.O.K”、5年前(2015年)の作品だが、すでにクボタは50を超えていた。それでいてこの攻め方。素晴らしい歳の取り方ダナ...
ルームランナー映像が観られるDVD(赤い方)付きは初回限定盤だけ
【収録曲】
<CD>
1. L.O.K 〜Foreplay〜
2. Cosmic Ride feat. AKLO
3. Free Style
4. majo ?
5. Squeeze U
6. Honey Trap
7. Loving Power
8. L.O.K 〜The play〜
9. Upside Down
10. Da Slow Jam
11. Tiny Space
12. Peaceful Sky
13. Bring me up!
<DVD>
1. Bring me up! (Music Video)
2. Upside Down (Music Video)
3. Free Style (Music Video)
4. TOSHINOBU KUBOTA 2013-14 ドキュメント "Kissing for my people"
「Bring me up !(Short Ver.)」
新しさと安心感のバランスが絶妙
常々言っているが、長く続けるにはこれが一番重要。
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購入金額
3,599円
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購入日
2016年03月29日
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購入場所
ビックカメラ
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