レビューメディア「ジグソー」

MONDO GROSSO(大沢伸一)カラーの強いシングル

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。シングルをリリースする際、アナログドーナツ盤のころは表題曲とカップリング1曲ずつでしたが、CDになって収録時間が増え、とくにアピールの観点から12cmのマキシシングルスタイルが一般になったあとは、同じ曲の複数のアレンジやカラオケを入れて、分数を稼ぐことが多くなっています。その場合「水増し感」を感じる作品も少なくない中、優秀なリミキサーのおかげで、それぞれの曲が異なる魅力を表していた作品をご紹介します。

 

bird、女性シンガー。世紀末のSOUL DIVAブームに乗って出てきた彼女は、トラックメイカーでDJの大沢伸一のバックアップを受けていた。Monday満ちるやUAなど特徴ある女性シンガーをプロデュースしていた彼が見出した彼女は、わずか2年間で11枚という怒濤の楽曲攻勢で大沢の世界を表現した。

 

その怒濤のリリースのちょうど真ん中くらい、7枚目のシングルが“GAME”。ジャンルを絞らず、幅広く「合う/受け入れられる」音楽を探った1年目の方向性とは違って、このシングルが含まれる2年目の活動は、クラブ系サウンドに「寄って」行った時期で、一般的な「受け」よりも、フロア系での「印象強さ」を重視したような楽曲・アレンジが並んだ。

 

特にこの“GAME”はその方向性が顕著で、表題曲3パターンと、かつてのシングル曲「空の瞳」のアレンジ違い、Marvin Gayeの名曲「WHAT'S GOING ON」のライヴ音源が収められている。

 

まず「GAME (Single Edit)」。大沢とbirdだけで創ったこの曲のベースとなるトラックだが、部分的にヴォイスモジュレーションがかかったような声の処理、チープな感じのリズム音とゴージャスなストリングスの対比、ソウルフルなコーラスの付け方、相当にJAZZYかつ攻撃的な大沢のピアノソロ、それら全てが緊張感を持ってビートを盛り上げる。フロアにぴったりの曲。とてつもなくかっこよい。

 

デジタルな冷たい感じに仕上げたのは、SOUL II SOULなどのリミックスを手がけた2ステップ系のリミックスを得意とするMJ Coleによる「GAME (MJ Cole Remix)」。バックはループ調に単純化され、せわしない。踊るにはイイカモ。

 

導入時点はデジタルな感じで、普通のリミックスと思わせておいて全く違う感じになったのが「GAME (Jazztronik Triple Headz Remix)」。リミキサーであり、追加のキーボードとプログラミングを担当したJazztronikこと野崎良太の手がガッツリと入っており、デジタルドラムスから、打ち込みだがブラシ奏法のスネアを中心としたパーカッションになったリズム、西嶋徹のウッドベース+石垣一浩のアコギ、生のストリングスカルテットで縦ノリのビートは影を潜め、失踪感あるハイスピードな楽曲になっている。

 

birdとしての一番のヒット曲「空の瞳」

は「空の瞳 (Meets The Blue Beat)」となっていて、大沢による追加のプレイが入って、ランニングベースが支えるハイスピードボサ、という雰囲気。birdの声の説得力はオリジナルの方があるが、大沢が新たに弾いたテンションコード多めのピアノソロと、アウトロのフルアコっぽいピキピキの音のエレキギターソロが軽やかでオシャレ。

 

いずれもそれぞれ違う魅力があり、さすがに飽きさせない。一枚のシングルに同一曲のアレンジ/ミックス違いばかり収められると、最後には食傷気味になってしまうのだが、これはそんなことはなく、別の曲として楽しめる。それでいて、味わいの統一性はあって、birdのいろいろな魅力を引き出している。

 

同じ曲が複数アレンジ入っているシングルで、珍しく「水増し感」を全く感じなかった作品でした。

若野桂によるピンク系のポップな表側のイラストと、昏い裏側の写真の対比が極端
若野桂によるピンク系のポップな表側のイラストと、昏い裏側の写真の対比が極端

 

【収録曲】

1. GAME (Single Edit)
2. GAME (MJ Cole Remix)
3. GAME (Jazztronik Triple Headz Remix)
4. 空の瞳 (Meets The Blue Beat)
5. WHAT'S GOING ON (Live @ Blitz)

 

CDの音源が公開されておらず、Amzonの30秒の試聴以外ないので「GAME(Acoustic Live)」を。

更新: 2020/03/22
必聴度

3パターンの「GAME」に水増し感がない

全部違う。

「空の瞳 (Meets The Blue Beat)」も元アレンジとは違う魅力がある。

  • 購入金額

    1,529円

  • 購入日

    2000年頃

  • 購入場所

15人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • jakeさん

    2020/03/23

    MONDO GROSSOもJazztronikも大好きですねー
  • cybercatさん

    2020/03/23

    その二つが好きならこの曲(のCD)は、ストライクだと思う(貼ったYouTubeはアコースティックアレンジですが、元曲はかなりゴリゴリビートが効いています)。

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