所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。曲における「調」。クラシックにおいては和音でうなりが生じない純正律で調律されることも多かったため、どの調で作曲された曲なのかというのは曲のニュアンスを決める大きなファクターでしたが、ほとんどの楽曲で平均律が採用されていて、楽器も打ち込みなどが多くなっている現在では、「キーを変える」ということはさして困難なことではありません。しかし曲中の転調に関しては、曲にハッとする衝撃を加えるスパイスであると同時に、それを表現するアーティスト側にも力量を要求する「シカケ」です。シングルの表題曲・カップリング曲ともに、そんなシカケを入れてきたアーティストの作品をご紹介します。
鈴木このみ、アニソンアーティスト。15歳にして2011年の全日本アニソングランプリでグランプリを獲得した翌年2012年のデビューから、一貫してアニソン界に身を置くシンガー。力強い声音と高い表現力でその作品の世界を表現し続けているが、2013年、彼女がまだ17歳の頃の3rdシングルでもすでに高い表現力が垣間見える。
TVアニメ「さくら荘のペットな彼女」のオープニングテーマを表題曲とするこのシングルは、表題曲とカップリング曲ともに「転調」が印象的なアレンジで、彼女の歌唱テクニックが堪能できる。
「夢の続き」。アイドルやアニメ系アーティストへの楽曲提供が多い白戸佑輔の曲らしく、基本爽やかな曲なのだけれど、調が不安定で、Aメロの明るさから、それを引きずったBメロの最後でマイナーに落ち、サビではマイナー調になり、サビラストの繰り返し1フレーズ目のsus4からの解決が悲壮感をたかめるものの、2フレーズ目の解決がメジャー系コード(9th)で最後に救いがあるというような難しい曲。このみは最近のドスがきいたような力強い声と言えるほどの迫力はないものの、この難しい歌をはっきり・くっきりと歌いきっている。
カップリングの「囚人 -Paradox 2013-」は、囚人Pこと猫ロ眠(この円盤の表記は「ねころみん」とひらがな)の代表曲、「囚人」の本人関与によるリメイク。元曲は鏡音レンによるボカロ曲で、ボカロならではの転調や曲調変化なにするものぞの、かなり難しい曲。詞としては、迫害されて囚人となった少年が外の少女と紙飛行機でやりとりをして心の支えとしていたが、少女が遠くに行き、処刑される前に少女のことを想う...という哀しいモノだが、ピアノ伴奏のみの歌い出しのこのみの感情のこもった声ですでに切ない。♪お願いもしこれが最後なら/僕をあの子と話をさせて/狭く暗い閉じたその部屋に/切なくただその声は響く♪繰り返される♪「アイタイ」♪が切ない。原曲の無機質な諦観を感じるレンの声も良かったが、このみの歌は「演じ歌い」の一面もあり、1コーラス目のささやかな幸せから、ラスサビへの絶望感へ落ちていく表現が良かった。
ともに調が不安定で、テクニック的にも難しい曲を、見事に表現していて、このみの力量がわかる。
3作目にしてすでに完成された歌唱を発表したシンガーの作品です。
【収録曲】
1. 夢の続き
2. 囚人 -Paradox 2013-
3. 夢の続き(Instrumental)
4. 囚人 -Paradox 2013-(Instrumental)
「夢の続き」
テクニック的には不足はないが...
彼女の声の本領は、パワーが外に放射する曲調のものに合うと思う。
内にこもる方向ではなく。
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購入金額
567円
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購入日
2019年09月22日
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購入場所
メルカリ
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