レビューメディア「ジグソー」

某CA風外見に隠された実力。カジュアル価格帯では2018年度最推し。弱ドンシャリで聴きやすいハイブリッドイヤホン。

 

数年前から「中華イヤホン」が面白い。それまでも、中国製のイヤホンはあったし、そもそも日本や欧米のブランド名がつけられていても、 結構以前から製造はかの国だったりするので、何を今更...という感じだが、中国メーカーが日本や欧米の高い製造品質要求に応えているうちに地力をつけ、独自設計のイヤホン制作販売に乗り出してきたワケ。ネットの発達でその国に店舗を持たなくてもモノは売れるし、良いモノであればオーディオマニアのマイクロインフルエンサーがネット宣伝もしてくれるので、中国の無名のメーカーでもブレイクする場合も出てきた。

 

2015年付近は、いろいろなメーカーが名作や良作を上回る頻度で、珍作・駄作を乱発していたので、中華イヤホン選びはある意味「宝探し」のような様相だったが、数年経った今、「外れが(少)ない」メーカーというのがある程度固定化されてきた。

 

そのひとつが、Knowledge Zenithこと「KZ」。深圳市原泽电子有限公司のブランドで、比較的低価格のイヤホンを手がける。同社でも多ドラのフラッグシップIEMは2~3万円の値をつけるが、マルチドライバーのイヤホンでも多くは1万円以下...というかむしろ5000円前後という買いやすい領域にある。そんなKZのイヤホンを一躍有名にしたのが、2BA(バランスドアーマチュアドライバー)+2DD(ダイナミックドライバー)の片耳4ドライバーを持ちながら5千円強のプライスタグをつけて、ハイコストパフォーマンスを誇った「ZS5」。某焚き火系なイヤホンをパk...リスペクトしたような形状・カラーと、売価5k付近とは思えない高品質な音で人気を博したが、2017年後半に追加されたのが、形式としては同じ2BA+2DDの片耳4ドライバーのイヤホン「ZS6」。

 

実は同じ2BA+2DDとは言っても、4つのドライバーが全て別の形式だったZS5に対して、ZS6はBAドライバーは同じモノを2つ束ね、DDは10mmの低音用と6mmの中域用のドライバーを使っている3ウェイ構成。

 

同社のHPによると、ステムに近いところにバランスドアーマチュアドライバーが2つ束ねられており、その後ろに10mmのダイナミックドライバーが、その横に6mmのDDが配置されている構造。

 

そしてハウジングは、樹脂製のZS5を改めアルミ製。いくつかあるカラーのうち、グリーンを選択するとまさにCA社の「ANDR○MEDA」。違いはフルBAマルチの「△NDROMED△」にはないベント穴が、BA+DDハイブリッド方式の「ZS6」にはあることくらいだろうか(あ、あと価格は20倍ほど違うケド)。

 

このZS6、中華イヤホン界隈では、2017~2018年の話題のイヤホンだった。まず、アラウンド5000円とは思えない音質、そしてそれまでのKZイヤホンとはレベルが明らかに違う質感、初期ロットと後半では音質が違うという中華イヤホンならではの報告、最後に形状が似ている某イヤホンとの実力の差...など話題に事欠かなかった。

 

自分としては試聴しないでイヤホンを買うことはほとんどないので(線材が違うモノを聴いたことがあるなど想像がつくものは別として)、試聴環境がないこのイヤホンを買うことはないかな、と思っていたのだが、2018年半ばに、何度か本国(AliExpress)でもケーブルなどを購入したことがあるイヤホンセラー(NICEHCK)から、「在庫限りの数量限定特価」の案内があり、話題のイヤホンだし3000円少々なら冒険しても良いかな、と購入してみることにした。

 

 

購入した商品は「簡易パッケージ」と呼ばれるタイプで、煙草の箱程度大きさの白い紙製の容器に入ったモノ。発売当初は「初回限定版」のようなものなのか、新書版くらいの大きさの黒い箱で、添付イヤーピース数などが充実した「豪華版」と呼ばれるパッケージもあったようだが、ZS5とは異なり、これは中国国外にはほとんど出回らなかったようで、他の大多数のネットの報告と同じくこれ。

真っ白な紙箱に線画でイヤホンが描かれただけというシンプルなパッケージ
真っ白な紙箱に線画でイヤホンが描かれただけというシンプルなパッケージ

 

本体にケーブルは繋がっていない珍しい梱包
本体にケーブルは繋がっていない珍しい梱包

 

内容物としては、イヤーピースMが付いた本体とイヤーピースのSとL、ケーブルと説明書というシンプルさ。ケーブルはマイクつきとなしが選べたので、マイクなしの純イヤホンタイプを購入してある。選んだ色は当然?グリーン。珍しいのはケーブルと本体が接合されておらず、バラで詰められていることか。

ポーチやクリップなどは付属しないシンプルな添付物
ポーチやクリップなどは付属しないシンプルな添付物

 

サイドの型番などの彫り込みもシャープで高級感ある
サイドの型番などの彫り込みもシャープで高級感ある

 

本体の質感は結構よい。フェイスプレート側が(CAに倣って?)ビス止めされているハウジングは精緻に見ると、ごくごくわずかフェイスプレートとユニットが収まる部分に段差があるが、許容範囲内だし、色合いもサンドブラストのような加工がされた鈍く光るエメラルドグリーンでかなり高品位。サイドの型番と「Four drivers」などの特徴が彫り込まれた文字も明瞭で、工作精度の良さを感じさせる。

触ると粘りが足りないのが分かるイヤーチップ。放射状の線が特徴的。
触ると粘りが足りないのが分かるイヤーチップ。放射状の筋彫りが特徴的。

 

ケーブルの質は「それなり」
ゴムっぽい触感とプラスチッキーなプラグ部・分岐部のケーブルの質は「それなり」

 

一方、付属品の方は「値段なり」という感じで、先端にフジツボのような筋彫りがしてあり、形状も先細りのイヤーチップは触るとプニプニではなくパコパコたわみ、シリコンの材質に粘りが感じられず、フィッティングと耐久性は悪そうだし、オリーブ色のケーブルは、細いわりにはクセが強くビヨンビヨンと弾性が妙に高い「ゴム」のような手触りで、ちょっと安っぽい造り。ただ、イヤーチップは消耗品だし、ケーブルは2ピンタイプでリケーブル可能なので、この価格であれば「本体だけ買った」と思えば良いか。

 

なお、本品ちまたの噂では

エージング必須、特に最初から数時間は高音ブッ刺さり

個体差結構あり、福引き状態

とのこと。

 

後者は複数購入して比較した猛者に判断は任せることにして、前者に対応するため例によってバッテリー保ちが良いミックミクなDAP

につないで約1週間鳴らし込んでから評価した。

 

 

ではいつもの曲で評価してみる。

環境的にはDAP

直挿し。

 

まず一番良く聴き込んでいる曲。吉田賢一ピアノトリオの高品位ハイレゾ録音(24bit/96kHz/FLAC)“STARDUST”から、

Never Let Me Go(わたしを離さないで)」。この録音、小編制ジャズに良くあるタイプで、ポップスのようにドラムスが中央にはない定位。中央にはベースがあり、左端から中央にかけてピアノ、右側がドラムスという定位。ジャズなのでバスドラバカスカというバランスではなく、ライドするトップシンバル、フットハイハットクローズ、スネアはボサ風に多めに入れられるリムショットと右手は時々打音を織り交ぜるブラシという感じで、かなり中高音優勢なドラムス。従って、ハイ寄りのイヤホンだとステージを右に引っ張り気味だが、このイヤホンも、そう。ただハイがキンキンしていると言うよりは、中高域にピークがあって、一番のヤマはハイハットクローズの音にある。これがもう少し上のライドシンバルのアタックのあたりにヤマがあると刺さるのだが、ギリ刺さらない感じ。ベースも深めの所まで行ってるし、ピアノも良く聴き取れる、悪くはない出来。ただベースに関してはソロになると音がやや薄めという感じがして、「重さ」はイマイチ。

 

もう一つのハイレゾ評価曲、宇多田ヒカルの初期ベスト、“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”(PCM24bit/96kHz)

から、前世紀末のメガヒット「First Love」。これは、グッドバランス!この曲、1stコーラスと2ndでベースのバランスがやや異なり、サビで分け入ってくる1stコーラスのベースと、2番の方で曲頭から鳴り続けるそれとのどちらも良いバランスというイヤホンは多くはないが、このイヤホンの「弱ドンシャリ」で「高音≧低音>中域」というバランスが絶妙にマッチしている。ヒカルの声も良く通るし、ラスサビのストリングスも美しい。アウトロに向かってドラマチックに盛り上げるドラムプレイも、シンバルの広がりやタムの残響も良く聴こえて迫力がある。強いて言うなら、ベースはよく聴き取れるものの矩形波っぽい音色で深みはあと一歩だし、サウンドステージは広くなく、アコギの音などは弦の音中心でボディの鳴りはなくて「軽い」が、価格から考えるとそれらは求めすぎといえるだろう。

 

同じ女声バラードながら、いつも「First Love」とは違った評価になるのが、女性声優洲崎綾のメモリアルファンブック“Campus”

に含まれる、あやちゃん作詞の「」。今回もちょっとビミョー?AメロとBメロはいいんだ、AメロとBメロは。広がりは狭いが、あやちゃんの柔らかな声をベースがきちんと下支えし、包み込むピアノ、左にエレギ、右にアコギが控えて狭いながらにきちんとポジショニングできているのだが、サビになってストリングスが厚くなり、エレピ風の音のアルペジオパターンが加わって音が多くなると、飽和する。かなりステージが狭いので押し合いへし合いしているのでノレない感じ。場所も飽和しているし、音も飽和している感じで...、惜しい。

 

同じあやちゃん演ずる女子大生アイドル=新田美波のデレマス初期持ち歌、「ヴィーナスシンドローム

は、ビート過剰、音過剰の楽曲で、ともすればあやちゃんの声がマスクされる場合もあるのだが、ドンシャリながら「ドンシャリ」であり、左右のステージは広くないが縦?にはわりに広く、音域がずれていると比較的分離が良いこのイヤホンの特性がハマり、聴き苦しくはない。あやちゃんの声はセンターでよく聴こえるし、ベースはグルーヴを支え、バスドラ連打もクリップするまではいかないのでノイジィではないのに低音の力強さもあって、刺さる寸前のハイハットも寸止めで許容範囲内。ただこれだけ音数あると再生で手一杯という感じで、色気まではない。これが同じ曲でも、音源をハイレゾリサンプリング(96.0kHz/24bit)をした「ORT」にするとかなり印象が良くなるので、ソース側の問題もあるのだろうが。

 

同じビート強めで、ベースが重要な曲として評価したのが、ジャパニーズフュージョンの老舗バンド、T-SQUAREの「RADIO STAR」。この曲はオリジナルではなく、ラッパー兼ベーシストのJINOこと日野賢二をゲストプレイヤーに迎えたセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”

のヴァージョン。バランスは悪くない。ベースもきちんと追えて、スラップソロからスキャットのバックになるときの沈み込みなどはきちんと潜る。ベースと絡む板東クンの足技が光るドラムプレイも明瞭。EWIのきらめきもピアノソロの煌びやかさもある。ただ音が少ないと若干「質」が気になるのも確か。特にベースが一本調子な感じなのは大きめバランスなだけに気になるかも。むろんこれは良く聴き込めば...ということであって、外で使うなどであれば全く問題にならない。

 

再生環境に高次なものを要求するオーケストラ系では、「艦これ」こと艦隊これくしょんのBGMのオーケストラアレンジ、交響アクティブNEETsによる「鉄底海峡の死闘」を“艦隊フィルハーモニー交響楽団”

から。弱ドンシャリで押し出しの良いこのイヤホン、こういう戦闘場面を表す、勇壮で打楽器・金管楽器優勢の曲ではわりに「まとめて」くる。しっかり静聴すると弦の低いところの響きやティンパニの地を揺るがす破裂音というのはなくて「壮大さ」には欠けるが、その上の低域は十分あるので押し出しは良い。また、弦楽の広さはあまり感じないが、時々入る金物系のパーカッションの音も良く通るので、左右狭めでゴチャッとした感じも和らぎ全体として破綻がない。サウンドステージの狭さもこの手の曲なら楽器に近い「迫力」に変換される。

 

最後に、古典ロックEaglesの「Hotel California」は同名アルバム

から。この曲、自分の持つ24金蒸着の高品位盤CDからリッピングして起こしたFLACファイルでいつも評価しているのだが、このCDは最近の録音レベルを上げて迫力を出したミックスとは違い、ダイナミックレンジ狙いの古典的ミックス....ということは全体的な平均音量が低く、鳴らしにくいイヤホンだと、DAPのフルヴォリュームまで行くこともあるのだが、このZS6は能率も良く、まだ上限にかなり余裕があるところで上手く鳴る。音としても、制作時代的に上下ややナローで、ミックス上ベース音大きめというバランスは、弱ドンシャリで、厳密に言うと「ドンシャリ」バランスというこのイヤホンとの相性が良く、この古い録音の曲を「クリアに」聴かせる。明らかにアコースティックギターが、エレキよりも優勢なバランスという珍しい音になり、ちょっとモダン。ただザンネンなのは若干ヴォーカルが沈むこと。ちょっとハイハットが刺さり目なこと以外は、ヴォーカル以外の楽器のバランスは意外なほど良いのだが。

 

 

人件費の安さをウリに先進国からモノの生産を請け負い、そこで培われた技術を自分のモノとして自ブランドで売り出す...というのはかつて日本もたどった道であり、そのターンが今、韓国⇒中国にシフトしているため中国イヤホン界には活気がある。ただ日本や韓国と違い、人口の多さと人も含む資源の豊富さで、中国のオーディオ界は単に低価格ゾーンを狙うだけではなく、価格的にも上から下まで、音色的にも様々な提案があっておもしろい。

 

そんななか、現在は片耳8BAドライバーの高級イヤホン(KZ-AS16)もラインアップする中国音響メーカーKnowledge ZenithことKZの、躍進の基礎を築いたともいえる超ハイコストパフォーマンスイヤホンが「ZS6」。買値の3000円はもちろん、元値の5000円強としても十分なパフォーマンスを持ったイヤホンだった。

 

特徴としては

○弱ドンシャリで押し出しの良い聴きやすい音質

○ドンよりもシャリの方がやや強めで、シャープで歯切れの良い印象

○高音域は刺さるギリ手前で寸止めの美学、ハイハットのキレなどが鋭い

○低域はベースの領域の量があり、それも鈍い感じではなく比較的速度も速い

○弱ドンシャリながら中域が沈んでいるワケではなく、女声やサックス、ギターなどは前に出る

○高能率で、スマホやDAP直挿しでも十分な音量が得られる

○リケーブル可能な構造

○某高級イヤホンをほうふつとさせるアルミ製(←大事)の質の良いアピアランス

○超ハイコストパフォーマンス、同質の比較対象が1万円クラスのイヤホンとなってしまう

と良いところだらけ。強いて言うなら

●低域は量はあるが質的には今一歩、少しのっぺりしている

●ドンシャリに隠されているが、その上下の重低音と超高音は薄い

●男声はやや苦手領域か

●左右のサウンドステージは狭い

●付属品、とくにケーブルは質感が良くない

というあたりがウイークポイントか。

 

ただいずれも1万円クラスのイヤホンに求めるくらいのポイントであり、価格と比較すると最強なのは変わりない。

 

その後、巷ではこれを凌ぐハイコストパフォーマンスイヤホンと呼ばれる(というか、ZS6のコピー改良商品とも言われている)PHB EM023なども出てきたが、供給性や工作精度なども含めて「2018年度低価格帯イヤホン」としては最良ともいえる機種です。

 

...たまたまアタリ個体を引いただけかもしれんケドw

 

【仕様】

ドライバー: 10mmダイナミック型(DD)+6mm DD+バランスドアーマチュア型×2
ハウジング:アルミ
周波数特性:7Hz~40000Hz
感度:105dB
インピーダンス:15Ω
ケーブル:1.2m 脱着式(0.75mm 2pin)
プラグ:3.5mmステレオ
重量:26g

イヤーピース:S、M、L

 

KZ ZS6

更新: 2019/11/04
高音

「高音」と聞いてイメージするアタリが持ち上げられていて、活発な感じ

ヌケの良さや、わかりやすいハイファイ感があり、聴いていて楽しい。

更新: 2019/11/04
中域

ドンシャリイヤホンの「谷間」という感じはしない

「ドンシャリ」と言っても、「弱」ドンシャリだからなのか、真ん中が落ち込んだという感じはしない。特に女声やリード楽器はイイ。対して男声は少し元気がないが。

更新: 2019/11/04
低音

量は過不足なくちょうど良い

ドンシャリが過ぎると、低音の量で「合う音楽」と「合わない音楽」に分かれたりするが、低音側は十分かつ、過剰ではなく、良いあんばい。ただし、質的には低音域の楽器の表情の描き出しは今一歩←アンダー5kのイヤホンに要求するレベルではないが

更新: 2019/11/04
音像

左右は狭いので、広さ感の表現は苦手

対して上下?は結構広い感じ。

 

左右の狭さは時として分解能の低さに繋がっている。

  • 購入金額

    3,199円

  • 購入日

    2018年06月07日

  • 購入場所

    Amazon(NICEHCK)

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