所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。歌で何を「歌う」か、夢、愛、情景...様々なテーマを歌う人がいますが、それが「想像の世界」ではなく、等身大の自分であるアーティストがいます。そんな「その時の自分の気持ち」に向き合い、歩んでいったアーティストの作品をご紹介します。
新山詩織。高校生の頃、自身の想いをぶつける形で創った「だからさ」や「Looking to the sky」が同世代の共感をよび、口コミで人気を博す。その後デビューを果たし、自分のその時の心情を言葉に紡ぎ、歌ってきた。
彼女の声はいわゆる「美声」ではない。また音程コントロールや技法という点では、上を行く同年代シンガーも少なくない。
ただそのかすれがちの声の存在感...というか自分の心の声を吐き出しているような「リアリティ」、詞の内容の同時代性、全て彼女の「写し絵」を見ているようで、歌を通してアーティストが感じられるという点では希有の存在だった。
そんな彼女が高校卒業後1年ほどしてリリースしたシングルが、“ありがとう”。
高校を卒業してからの彼女の歩みと変化が感じられる作品となっている。
表題曲「ありがとう」は、別れの季節を歌った卒業ソング。1年前の「今ここにいる」
では♪今は見えなくても/揺るぎない想い/ひとつあれば/誰よりも輝き/羽ばたける/きっと/涙が希望に変わる♪と歌ったが、その時から時が経ち、その情景を外から見られるようになっている。♪このまま/さよならなんて/言いたくはないから/迷わない/素直な想いを君に伝えるんだ/ありがとう/これ以上何も/伝えられないから/あの日の笑顔/ずっとずっと忘れないように/君と/2人/また会えるように♪
カップリングの「シャボン玉みたいに」は、自分の気持ちを情景に乗せて歌う曲だが、これも詞が秀逸。♪行ったり来たり/こんな気持ちはいっそ/なまぬるい風の中/溶けてしまえばいいのに/つぶやいた/その瞬間/夏の風が/私の/身体を/横切っていった♪やや軽めに流して歌う詩織の声は普段よりもハスキーさが減じており、かろやか。途中のスライドギター風のフレーズには土方隆行のセンスが出てるな。
本品は3形態発売されたシングルのうち「LIVE盤」なので、ライヴのDVDが付く(他はCDのみのものとMVつき)。デビュー2周年を記念して行われたアコースティックライヴ。彼女はレコーディングでは笹路正徳のバックアップを受け、バンドアレンジだが、このライヴは彼女の弾くものも含めて2本の生ギターとエレピ(一部の曲でピアニカ)とアコースティックなアレンジ。
「分かってるよ」では弾き語りのスローアレンジ。声が、表情が良く伝わる。
一人での弾き語りもあり、とても彼女の声が、心が良く届くセット内容。彼女の声はバンドサウンドでも負けないけれど、やはり路上ライヴあがりの彼女にとっては、こういった「原点」というセットだとさらに響く。
そんな彼女が活動を休止したのは昨年末。
6年間自分の想いを歌ってきたが、その中で見つけた「新たな夢に向かうには音楽活動を続けながらは難しいと判断した」かららしい。
今彼女は23歳(2019年現在)。
人生を「決める」時期でもある。
彼女の見つけた「新たな夢」がどんなものか、その実現にどれだけの時間が必要なのかわからないけれど、アーティスト活動を「終了」や「卒業」ではなく「休止」と表現した彼女が、少し大きく、少し深くなって戻ってきてくれる日を信じてる。
-その時彼女はどんな「姿」を見せてくれるのだろうか-
【収録内容】
<CD>
1. ありがとう
2. シャボン玉みたいに
3. ありがとう-instrumental-
<DVD>
1. Looking to the sky
2. 分かってるよ
3. たんぽぽ
4. 絶対
5. ゆれるユレル
新山詩織 アーティストデビュー2周年記念ライブ
「しおりごと ~acoustic version~」 2014.12.12@代官山UNIT公演
「ありがとう」
歌とともに成長する彼女が見える
1年前の学校の中で悩んでいた彼女の、1年後の視点が見える。
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購入金額
1,620円
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購入日
2015年12月06日
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購入場所
山野楽器
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