レビューメディア「ジグソー」

素材がこの年は豊作。その好材料を得て、美濃のセンスが冴える。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。流行歌のピアノアレンジ。比較的良くある「企画」ですが、単にBGM風にメロディをなぞっただけではなく、力量があるプレイヤーが、がっつりと曲に対峙すると、真剣に「聴く」に値する作品ができあがります。編曲家としても活躍する才媛が、その年、街に流れた流行歌を素材に自分のテクニックと感性をぶつけた作品をご紹介します。

 

 

加羽沢美濃。ピアニストにして、作編曲家。クラシックピアニストとしての確かな腕前と、劇伴やドラマBGMなどを多く手がける作編曲能力、そして「新・題名のない音楽会」や「ららら♪クラシック」などクラシック系音楽番組での、アシスタントや進行を務める親しみやすさを兼ね備えたアーティスト。活躍するフィールドが広く、決してクラシック演奏一本、と自分のフィールドを制限することなく活躍している才女でもある。

 

そんな彼女が、1997年から2005年まで手がけていたのが、「ピアノ・ピュア~メモリー・オブ・XXXX」(XXXXには年号が入る)。これはその年に話題になったヒットソングを、ピアノアレンジし、美濃自身がプレイしたもの。記憶に残るヒット曲が、美濃のイカした(←死語)アレンジと、それを確実に支える確かなテクニックを持って表現される。この年は記憶に残るヒット曲が多く、ややニッチ目のジャンルに深く突っ込む傾向にある自分であっても「あぁ、アレ」と、すぐ想い出せるヒット曲ばかりが詰め込まれている。

 

アレンジャーとして素晴らしい輝きを見せたのは、「明日があるさ」。元は故坂本九の名曲だが、当時はウルフルズがカバー

して、缶コーヒーのCFに使われてリバイバルヒットした。この陽気な曲を、美濃は前半はクラシカルに仕上げた。自然に体が動きそうなリズムの元曲を、流れるような運指で格調高く再構成し、ひとしきりテーマを弾き終えると、短調にアレンジしてワンコーラス。後半は、グッとスウィンギィなリズムに移り、最後まで駆け抜ける。

 

音の表情のダイナミックレンジが素晴らしいのは、宇多田ヒカルの「Can You Keep A Secret?」。売れた曲のため、デパートのBGM風のシンセアレンジやオルゴール演奏ものなど、多くのインストアレンジを耳にした。ただ単にヴォーカルラインをピアノでなぞっただけのカラオケのメロディガイドのようなつまらないモノから、元曲の内容から激しく弾き倒す激情型?アレンジまでいろんなパターンを聴いたが、美濃のアレンジは最初のクラシカルで緩やかで流れるような導入から、2ndコーラスに入ってからはだんだんと力強さが増し、グングンと盛り上げる。ラストの切り方も全く元曲とは異なるピアノ独奏曲ならではのアレンジ。

 

「波乗りジョニー」は桑田佳祐のソロのヒット曲だが、これはイントロ~Aメロの大きくうねる波のような力強く前進力のある左手のアレンジが面白い。Bメロ~サビにかけては今度は寄せては返す波のような強弱に富んだ奏法が美しく、「海の表情」が良く表されている。

 

この他にも、順当に?美しい「いつも何度でも」、左手の採るラインが緊張感を醸し出す「KISS OF LIFE」、MISIAにこれで歌って欲しい「Everything」など、おなじみのメロディが、美濃のセンスの良いアレンジで綴られる。

 

2001年は、ピアノアレンジに適したヒット曲が多かったということだろうけど、元曲を歌っているメンツを観ても現時点でも活動を続けているアーティストが多く、そういう意味でも「あたり」年だったんだな、と。

この年は
この年は沁みる曲、印象的な曲が多い

 

粒ぞろいの名曲という好素材を得て、美濃のアレンジセンスとプレイテクニックが堪能できる作品です。

 

【収録曲】()内オリジナルアーティスト

1. ひとり(ゴスペラーズ)
2. 明日があるさ(ウルフルズ)
3. 真夜中の純潔(椎名林檎)
4. Point of No Return(CHEMISTRY)
5. 月光(鬼束ちひろ)
6. いつも何度でも~「千と千尋の神隠し」より(木村弓)
7. Over the Distance(矢井田瞳)
8. Can You Keep A Secret?(宇多田ヒカル)
9. KISS OF LIFE(平井堅)
10. 遙か(スピッツ)
11. 波乗りジョニー(桑田佳祐)
12. サウダージ(ポルノグラフィティ)
13. M(浜崎あゆみ)
14. Best Friend(KIRORO)
15. ちゅらさんメドレー
  太陽との約束~ちゅらさん応援歌~The Pain of Growth~Pure・えりい~Love Theme
16. Everything(MISIA)

更新: 2019/07/04
必聴度

アレンジが素晴らしい

曲の構成が良く、街に多く流れた「あの曲」を、美濃のプレイを魅せながらも、ちょっと意外さのフレーバーを効かせてまとめ上げている。

  • 購入金額

    2,940円

  • 購入日

    2002年頃

  • 購入場所

13人がこのレビューをCOOLしました!

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