竹内まりやの通算7作目のアルバムにして、シンガー・ソングライター形式の活動へと移行してからは2作目となるアルバムが、本作「REQUEST」です。
元々は1987年にリリースされ、他者への提供曲のセルフカバーを中心に構成された作品となっていて、私自身も当時リリースされた通常盤LPは所有しています。
2017年にリリース30周年を記念したリマスターかつボーナス・トラック追加盤として30周年記念盤CDがリリースされ、さらに翌年にはボーナス・トラック無しとなる代わりに180g重量盤2枚組として、LP盤もリリースされていました。
たまたまAmazonで他のLPを探しているときに見かけて、夫であるプロデューサー山下達郎が自ら手掛けたリマスターに興味が出てきて買ってみることにしたのです。
1987年のリリース時には充分にLP1枚で収まっていたのですが、30周年記念盤は音質を重視して溝の幅を広く取った結果、LP2枚組で片面辺り2~3曲ずつの収録となっています。以前掲載した「Wallflower / Diana Krall」なども同じような形の2枚組でした。
内周部の無録音部分がかなり広くなっています。確かに勿体ない感じはあるのですが、レコードの音質は内周の方が劣りますので、高音質盤では敢えてこのように内周を使わないものも結構見られます。
1987年当時のスタッフリストに加え、30周年記念盤のクレジットもジャケット内側に記載されています。
音質は向上しているが、印象が以前と変わらない辺りはさすが
まずは2枚目の1曲目となる、「駅」を聴いてみましょう。
この曲は今でこそ竹内まりやの代表曲の一つとして扱われていますが、本来は中森明菜のアルバムに提供するために作られた曲で、実際に「CRIMSON」というアルバムに中森明菜が歌ったものが収録されています。まあ、そちらも一応持っているのですが、出来については言及を控えます…。
ただ、この時の楽曲の解釈に山下達郎が不満を持ったことで、竹内まりや自身のセルフカバーに繋がったという話もありますので、ある意味怪我の功名ともいえるかも知れません。それにしても、この曲の歌詞は冷静に内容を見てしまうと、単に「駅で元彼を見かけた」というだけのことなのですが、それがここまでの物語に仕立て上げられてしまう辺りに、竹内まりやの作詞家としての非凡さを感じますね。
さて、音質については、良くある表現ですが1987年盤と比較するとベールを1枚剥いだようなクリアさがありますが、最近のリマスターにありがちな大げさな変化は見られず、一つ一つの音がクリアになり、リアルさが増したような感こそあるものの、全体的な印象は以前のものと特に変わっていません。
続いて「恋の嵐」を聴いてみると、冒頭のコーラスでエコー成分がやや増量されている感覚はあるのですが、これも主な音のイメージは特に変わらず、ただ昔よりクリアになったというだけの印象です。
リマスターといってもその完成度は千差万別なのですが、この作品のリマスターは素直に好印象でした。元の音があまり良くない作品をリマスターすると、印象が変わってしまうほど音をいじってしまったり、高域方向を強調して解像度感を無理矢理足しただけというものも多く見られるのですが、楽曲のイメージを保ったままオーディオ的に向上させているこの作品のリマスターは、同年代の音源に対するお手本といえるものかも知れません。
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購入金額
3,748円
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購入日
2019年03月30日
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購入場所
Amazon
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