以前、ビートルズのLPコレクションがデアゴスティーニから発売されたときには、結構多くのアルバムを買いました。やはりビートルズは私の音楽の原体験(の一つ)であるだけに、買うつもりがなかった作品も「この曲は聴いてみたい」などと思って買ってしまうことが何度かあったのです。
その点、クイーンに対しては個人的な思い入れはそこまで深くはありません。そのため、意外なほど音が良いと聞かされて創刊号の「オペラ座の夜」こそ買ったものの、それ以降はそれほど手を出さず、過去のLPが極端に値上がりしている「メイド・イン・ヘヴン」を買っただけにとどまっていました。
ちなみに創刊号の音質については、昨年の東京インターナショナルオーディオショウで、Technicsの超弩級ターンテーブル、SL-1000Rの試聴をしていたときにこのレコードが使われ、私が以前買っていた同作品の30周年記念盤よりも良かったことから後で話を聞いてみたところ、詳しく教えていただいたという経緯があります。
そしてこの「イニュエンドウ」ですが、今まで中古店でもLPを見たことがないということ、そしてこの作品の収録曲の中にCDより良い音で聴いてみたいと思っていた曲があったということで、最初から買うつもりでいましたので、用事で東京に出向いた際に購入してきました。
ジャケットの質感が悪いなどという評判もあるようですが、昔の輸入盤のクオリティを知っていればこんなものだろうとしか思えません。昔のレコードは、盤質は輸入盤の方が良く、ジャケットやライナーノーツの出来は日本盤の方が良いというパターンが多かったのです。
音質は大したものではないが、それは些細なこと
このシリーズは、英国のアビーロード・スタジオでカッティングが行われ、過去の作品の音質も大幅に向上しているという特徴があります。また、180g重量盤でかなりダイナミックレンジも広く確保されていますので、針圧の調整が出来なかったり不正確なプレイヤーで再生しようとすると針飛びを起こすこともあるようです。
ただ、以前のビートルズでもそうでしたが、ごく普通にセッティングされたプレイヤーで再生する限り、そのようなことがありません。少なくともビートルズのLPコレクションや、ジャズの名盤シリーズの創刊号(「Kind of Blue / Miles Davis」)で私の環境で再生に支障を来すような難があったことはありません。私としては盤質にケチを付けている人が案外多いことに驚いています。
さて、このレビューのタイトルで私が言いたいことは表せてしまっていますが、アルバムとして聴いていても勿論傑作と呼ぶに値する作品であるとは思うのですが、私としてはやはり最後に収録されている「The Show Must Go On」の素晴らしさが群を抜いているように感じられます。このアルバムがフレディ・マーキュリー生前最後の作品であることと、この曲の詩があまりに見事にリンクしすぎているのです。
そして、本作の制作時点でフレディの病状はかなり悪化していたはずなのですが、ヴォーカルの艶や力強さはむしろ今まで以上にすら感じられますし、他のメンバーとの連携も非常に上手くいっていることが感じられる仕上がりです。
実はフレディの死後に発表された、次作「メイド・イン・ヘヴン」も、一部の曲は彼の存命中に制作に取りかかっていたものということで、こちらも充分優れた作品ではあるのですが、私はアルバムとしての仕上がりで、こちらの「イニュエンドウ」の方をより推したいと思います。
元々クイーンの作品は多重録音や音源に対する加工を多用するため、オーディオ的に優れたものではありません。ただ、今まで発売されてきたCDはそれを差し引いても納得できる音質とは言いがたく、このシリーズのLPは納得できるレベルの音質で提供される貴重なものといえます。
再生環境があり、作品に興味があるという方には是非レコードで聴いていただきたいと思います。
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購入金額
3,979円
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購入日
2019年02月17日
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購入場所
ヨドバシカメラ
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