昨年4月に入手していながら、本格的に使うようになったのはつい最近というイヤフォンです。その経緯については、現在このイヤフォンに組み合わせているケーブル、WAGNUS. aenigma Variationsの方のレビューで触れていますので、そちらをご覧下さい。
私が初めて買ったミドルクラス以上のイヤフォンだったのが、このAngieよりも2ランク下位に発売された、JH Audio Michelleでした。
Michelleは突出した何かがあるイヤフォンでは無いのですが、機器との組み合わせや聴くジャンルによる極端な苦手分野というものが無く、平均的に質が高いことが特徴となります。Michelleが発売された当時は、上位シリーズはシェルが金属製に変更された「Layla II」「Roxanne II」「Angie II」「Rosie」へとモデルチェンジされていたのですが、そのラインナップを全て試聴会で聴いた上で、装着感、音質、価格の全てで平均点が高かったMichelleを買ったという経緯があります。
その試聴会での印象としては、まずLayla IIは音の厚みは異様にあるものの、音場の見通しが暗く爽快感に欠けるし、そもそも大きくて重いのでまともに装着出来ないというところ。Roxanne IIはエッジを効かせたロック向けだが、聴き疲れするし装着感がLayla IIと同様で論外、Angie IIはLayla IIを薄口にしたようなサウンドで中域の質がなかなか良く、バランスもこちらの方が良好、装着感は上の2機種よりは少しマシだが常用は厳しそう。Rosieは金属シェルの製品の中では装着感が最も良いが、空間表現が平面的かつ広さも無いのであまり音に惹かれない、というものでした。
つまりMichelle以外で比較的好印象だったのはAngie IIでした。Angie IIの音を保ちつつ、もう少し軽量で自分の耳でも装着できるのならばアリかな、という程度には好印象だったわけです。
Angie IIは、モデルチェンジされる前の世代では当然Angieという製品だったわけですが、この両者の最大の違いがシェルの材質でした。Angie IIは前述の通り金属製ですが、Angie初代は樹脂製だったわけです。ドライバーの改良も入っているためシェル以外にも違いはあるのですが、持ち味の部分がそれほど大きく変わっているわけでも無さそうでしたので、初代の方に狙いを定めて中古品で購入したわけです。
革製のケースだったMichelleとは異なり、アルミ製のケースに収められていました。ただ、コストはかかっているかも知れませんが使い勝手が良いとは正直言えません。
私が入手した個体は、片側だけフェイスプレートがカーボンに張り替えられていました。Astell&Kernのロゴを嫌ったのか、破損を修復しただけなのか…。
初代Angieですので、シェルは全て樹脂製です。JH Audioらしくノズルがかなり長目に作られていますね。
純正ケーブルが添付されていて、ケーブルにはこのシリーズの特徴である低音調整機構も勿論装備されています。
現在は前述の通りWAGNUS. aenigma Variationsが組み合わされています。こちらも純正ケーブルと同様に低音調整機構を備えています。
ヴァイオリンの音を聴くと選ぶ価値があったことを実感する
ここからは音について触れるわけですが、まず試聴は全てケーブルをWAGNUS. aenigma Variationsに交換した後のものとなっています。純正ケーブルの音は率直に言ってそこまでの魅力はありませんでしたので…。
DAPはAstell&Kern A&Futura SE100とCayin N6ii/R01を使用しています。写真撮影時にはHiBy R6 Pro ALも使いました。
まずCayin N6ii/R01で普段聴いているような洋楽ロックを聴くと、変に濃厚でちょっとくどさを感じる傾向がありました。これはaenigma Variationsも濃厚な音が持ち味で、N6ii/R01の濃厚さも合わさることで、それらの相乗効果によりくどさが許容値を超えてしまった感があります。
ただ、そのような中で「ICONIC / David Garrett」を聴くと、ヴァイオリンの音色の美しさが素晴らしいということが判ってきます。
JH Audioというとどうしてもロックミュージシャンのステージモニターという印象が強いのですが、この組み合わせでのAngieはクラシック専用といって良いほど、この分野で強みを見せてくれました。
また、例えばSuzanne Vegaなどの弾き語りに近いソースでも、個々の音の質感が素晴らしく、音数が少ない楽曲であれば強みの方が活きてくることを実感します。
そこでDAPを、ある意味純正の組み合わせといえるAstell&Kern A&Futura SE100に交換すると、N6ii/R01の時よりもくどさが薄まり、音場の見通しも良くなってきます。Angieには分解能や解像度が高く、オーディオ的な描写を見せるSE100の方がニュートラルな表現に近づく分だけ良い組み合わせといえるように思います。
「怪物 from CrosSing / 鬼頭明里」はもうちょっと見通しの良い音が似合いそうですが、1970年代のロックなどはとても良い味が出てきます。とはいえ、実は個々の音を一つずつ分析していくと、特に高域方向の解像度や質感はMichelleの方に分があります。低域のレスポンスもMichelleの方が良好です。Angieはヴォーカルやアコースティック系の楽器の音色に良さがあり、スケール感はMichelleを上回るものの分解能がやや不足していると感じます。
長所を発揮出来る楽曲では、5万円以下クラスとは格の違う音を出してくる一方で、短所が強調される楽曲では、半額以下だったMichelleに勝てない表現となってしまうなど、それなりに癖の強いイヤフォンではあると思います。当時万能さを買ってMichelleを選んだのはやはり正しかったのだと再認識しました。
現在のように一定水準のイヤフォンを複数本使い分けられるようになって初めて、Angieのような性格のイヤフォンを楽しめる余地が出来たと感じています。
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購入金額
33,000円
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購入日
2022年04月01日
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購入場所
HARD OFF
harmankardonさん
2023/01/07
当たり前ですが,JHはJHの音がして,上位モデルはフィッティングが難しく,イヤーピースも選ぶので,本当の音を知るのは苦行です.おまけに,ケーブルの特性を反映するので,更に修行ですね.
AngieⅡを聴いて,RoxanneⅡを聴くと,やっぱり同じ傾向の音だと再認識されられます.
なので,SirenのRoxanneではなく,小型化されたPerformanceシリーズののRoxanne(樹脂モデル)を手に入れました.これはこれで,凄いです.
jive9821さん
2023/01/07
当時のシリーズ全モデルを一通り聴いて、LaylaやRoxanneはそもそも
きちんと装着出来なかったので、音もきちんと評価出来ていないという
のが正確なところだと思います。
ただ、個人的にはLayla系は密度が濃すぎて息が詰まりそう、Roxanne系は
何となくですが表現が作為的で、どことなく違和感が残るというのは
世代に関係なく感じられました。この辺りのモデルは本領を発揮させる
には、私の耳ではカスタムにするしかなかったのかも知れません。
私の耳は大きさも聴覚の傾向も女性的(高域寄り)なので、通常のJHユーザー
の方と印象が異なる部分は大きいと思います。
本来理想的な特性を得るはずのFreqPhase等の技術が、逆に個人差を
強調してしまっているという側面もありそうです。