レビューメディア「ジグソー」

最も身近なBowers & Wilkins

Bowers & Wilkinsといえば、世界的に高く評価される高級スピーカーメーカーであり、オーディオを多少かじったことのある人であれば一度は聞いたことがあるブランドでしょう。

 

生憎私自身はBowers & Wilkinsのスピーカーとは全く縁が無いのですが、高級品を扱うオーディオ販売店の試聴室には、このメーカーのスピーカーが必ずといって良いほど置かれているという、定番ブランドでもあります。

 

そのBowers & Wilkinsも、近年のヘッドフォン・イヤフォンのブームを無視できなかったのか、ヘッドフォンやイヤフォンの意欲作を次々に投入するようになっています。ただ、その大半がオンイヤー型のヘッドフォンとなっていて、唯一カナル型のイヤフォンとして用意されているのがC5系となります。

 

初代はBowers & Wilkins C5という製品だったのですが、これに改良を加えたC5 Series2が現行商品として用意されていて、今回入手したのはこちらとなります。

 

 

 

 

 

パッケージも製品も黒でシックにまとめられていて、この辺りのデザインの巧みさはさすがBowers & Wilkinsの製品という印象です。実売価格2万円前後の製品ですが、外観上の演出は価格以上といえるでしょう。

 

 

 

代理店を通った正規輸入品だったようで、Bowers & Wilkinsの代理店となっているD&Mホールディングス(DENON & Marantz)の保証書が添付されていました。

 

 

 

外観上の大きな特徴は、ハウジングを囲むようにケーブル部が硬い皮膜で覆われ、輪を作っているということでしょう。これはセキュアループと呼ばれるこのシリーズ独自の機構であり、一般的なカナル型イヤフォンと同様に耳に押し込んだ後、この輪の大きさを調節することで耳にきちんと固定できるというものです。上手く使いこなせば、確かに少々の動きでは装着位置がずれることはありません。

更新: 2017/12/14
音質

装着位置とソースが上手く定まれば、B&Wサウンドが楽しめる

それでは、今回はAstell&Kern AK100IIを使って試聴してみましょう。

 

 

 

まず、この製品の音質を語る前に注意するべき点があります。それは、とにかくできる限り耳の奥まできちんとハウジングを押し込むことです。

 

この押し込みが不足していると、単に低音だけが突出した全く面白味の無い音となってしまいます。イヤーピースは他のイヤフォンよりは少し小さめなものを選択すると良いかもしれません。きちんと耳の奥まで到達させることが出来れば、少し低域が厚めという程度に落ち着きます。

 

音質的は標準添付のイヤーピース(Sサイズ)でも問題なかったのですが、このイヤーピースは中心の軸が硬く耳に押し込むと少々痛みが出ますので、毎度お馴染みのSpinFit Sサイズを使って試聴しています。

 

 

 

 

まず、全体的なバランスはやや低域寄りです。ただ、他の多くの製品のように最低域が少なくその上の帯域を盛っているようなタイプでは無く、低いところから低域が余裕を持って響いてきます。ピアノの音などは、左手方向の厚みがきちんと表現されていて、ローブーストというよりは重厚さという印象を受けるものです。

 

中域~高域はそれと比べると明らかに量は少ないのですが、女性ヴォーカルやアコースティックギターの音色など、独特の生々しさを感じさせます。バックの音色が少ない女性ヴォーカル曲などは、とても2万円クラスとは思えない見事な質感です。今LPから起こした「Bridge Over Troubled Water / Simon & Garfunkel」を聴きながら文章を打っているのですが、Art Garfunkelのヴォーカルもかなり好相性といえるでしょう。決して質の良い録音では無いこの曲ですが、ついつい手を止めて聴き入ってしまう魅力があります。「Earth Song / David Garrett」はヴァイオリンの音色にもう少し伸びやかさが欲しい部分はありますが、バックの演奏はかなりの厚みと存在感を感じさせます。

 

 

 

 

その反面、「Now / Chicago」などはChicago自慢のホーンの音色が全く映えませんし、「White Forces / fripSide」などは南條愛乃のヴォーカルだけが異様に生々しく、バックトラックが全く存在感を持たないというアンバランスさも見せる部分があり、ソースによる得手不得手がはっきりと分かれる傾向が見られます。

 

 

 

全体的な傾向として、小編成でアコースティック系の音色でまとめられたソースを楽しむのであれば、価格を遙かに超えた素晴らしい表現を見せる一方で、高域方向のクリアさやスピード感が求められるロック系の楽曲や、音色の数が多いソースは苦手とする傾向が見られるようです。音場も平均よりは狭めかも知れません。さすがに2万円クラスの製品で、すべてのジャンルを高い次元でカバーされてしまったら、上位製品の存在価値がなくなってしまいますので、自然な結果ではありますが…。

 

丁度先日来私が注目しているqdcの新製品NEPTUNEとは正反対という性格の持ち主であり、両方持っていればかなり楽しめそうという印象を受けました。

 

自分の聴くソースが得意分野にきちんと合致しているという方であれば、価格を遙かに超えた高い満足度が得られる製品といえるでしょう。試聴して惚れ込んだら買ってしまうというのが正しいタイプです。

  • 購入金額

    5,389円

  • 購入日

    2017年11月13日

  • 購入場所

    ドスパラ

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • harmankardonさん

    2017/12/14

    B&Wは,B&Wの音がしますよね.
    P5を聴いた時,こういう音作りもありかと関心しました.
  • jive9821さん

    2017/12/14

    > harmankardon さん

    この製品も、長所の部分は間違いなくB&Wですね。ただ、P9 Signatureのようにある程度の幅を持つ訳では無く、野球で例えると真ん中のストレートだけは確実にホームランにするタイプ、という印象です。

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