レビューメディア「ジグソー」

魔法少女を務めた少女たちの「その後」。普通の女子高生したかった元魔法少女と、魔法少女になりたかった少女のお話。

本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。

そして「芋づる式洲崎綾 Part5」。Webラジオのキャラクターの面白さと天使の歌声のギャップ萌えですっかりファンになった洲崎綾あやちゃん/ぺっちゃん/あやっぺ)関連。12月といえば恒例のイベント月ということで、それに向けてこの1年で増えてきた彼女の直接参加した作品や楽曲、ラジオCDなどから、参加作品の主題歌や演じたキャラクターのグッズ、イベントグッズなどの関連商品まで芋づる式にご紹介するシリーズレビューの5回目。

...とは言っても本作は、あやちゃんが執筆や出演をしているわけではない。

先日からご紹介している「魔法少女OverAge(魔法少女オーバーエイジ)」のノベライズ。それまで主題歌っぽい曲が収められたCDがボカロ盤と肉声盤と出ていたが、最初に出たボカロ盤

 

にはドラマパートがあって、このストーリーの断片が語られていた。主人公伊藤ましろと、あやちゃん演じる桐野さくらの出逢い、そしてその時起こる不思議な出来事。さらに、他の魔法少女(ましろはそのことをまだ識らない)との出逢い、ぽんすけによるましろへのさくらたちの正体の開示と仲間への誘い、イレギュラー害霊(ガイスト)との闘いなどがそのシーンで、それらのエピソードで、この「魔法少女OverAge(魔法少女オーバーエイジ)」の世界観を何となく把握できた。

ただそれはあくまで「断片」であって、楽曲で表現されるストーリーの「魔法少女っぽさ」を増強するエビデンスにすぎなかった。

それを判り易く小説として再構成したのが本作、「私たち、もう変身したくありません」。

これにより「魔法少女OverAge(魔法少女オーバーエイジ)」の世界が把握できるし、同時発売の商業版CD

では、本作の台詞が声優たちによって演じられているので、さらにイメージが強烈になる。

なお本作執筆にあたって、“仮想:主題歌集”のドラマパートで語られた内容がいくつか変更されている。それはましろさくらの出逢いのシーンで、さくらましろを助けたのが飛んでくるボールからではなく、トラックに轢かれそうになった事からだったというような細部?の変更から、ましろがいない(あるいは、死んだ?/目覚めぬ眠りについた?)状況でさくらが慟哭しているシーンのようにエピソード自体が根こそぎなくなったものもある。ただ設定は大筋では変わっておらず、この小説を読みながら、同人盤と商業盤二つに収められたドラマパートを聴くと目の前に情景が浮かぶような臨場感がある(あ、そらのの立ち位置(役どころ)は少し変わったかな)。

お話は、伊藤ましろの観点で語られる。ましろは高校1年生になったばかり。でも実はオタクである。魔法少女の。この世界には、人間の負の感情が凝って実体化した、「害霊(ガイスト)」という存在がいる。それを斃すことができるのは魔法の力のみ。その魔力はほとんど女性にしか発現せず、それも中学1年生のころがピーク。そのため、女子は魔力試験(オーディション)というテストを受けることが義務付けられ、そこで発見された強い魔力を持った者が選抜されて、航空防衛隊に所属し1年間害霊と闘う。彼女たち魔法少女は、自身の魔力で土地の魔力を引き出すことで戦うが、これをすると土地が「枯れて」しまう。これを復活させるには、土地に「魔力結晶」を注入しなければならない。しかし、この結晶は高価な輸入資源。この購入費を稼ぐために、この世界では魔法少女と害霊との闘いをTV番組化し、その売り上げなどで魔力結晶購入費を得ている。

そんな「ノンフィクション」魔法少女番組の熱烈なファンであるましろは、入学式の日にも魔法少女モノの再放映(もちろん大好きな「ルミナス☆クライシス」!)を観ていて遅刻しそうになる。急いで登校しているさなか、ましろはトラックに轢かれそうになるが、不思議な力で救われる。その力を送ったように見えたのが、意志の強そうな瞳をもった少女。

何とか間に合った入学式の後、ましろはその少女=桐野さくらと再会する。友達になった二人が入学記念の写真を撮っていると、春先の「改変期」と呼ばれる害霊が出現しにくい時期なのにもかかわらず、害霊が現れる。逃げるふたり。しかしましろの足がすくんで、追いつかれそうになる。その時さくらが、ましろにこの緊急時に関係なさそうなことを訊く。「ねえ、私たち、......もう友達かな?」。「当たり前だよっ」と返すましろに、「そっか......じゃあ、目標は達成できたし......ま、しょうがない、かな!」ましろの目の前で変身するさくら。それはましろが愛してやまない魔法少女戦隊ルミナス☆クライシスのひとり、「シャイニングチェリー」!

無事?害霊を斃すことはできたが、外部の学校に通う条件だった「変身しない事」を破ったさくらには、1ヵ月後の転校が告げられる。いままで魔法少女として基地内学校の隔離された環境にあって、「普通の友達」を望んでいたさくらの気持ちが痛いほどわかるましろは、さくらへの転校指示を撤回してもらうべく活動を開始する。

レギュラーの中学一年生世代の魔法少女である第五八小隊ことソルシエール・リュミエールの対峙している害霊とは違う系統の、先日出現したようなイレギュラーな害霊を斃すためには、史上一番強力だったというさくらの世代=第五五小隊ことルミナス☆クライシスの再結成が効果的。ましろの身を呈した(もしくは身を晒したw)活動で、「5人全員を説得して再結成できればさくらの転校を撤回してもよい」というところまでこぎつけた。

ゆかりのように復帰に対してさほど拒否反応のないものもいれば、なつみのように「ましろが魔力拡張トレーニングのシミュレーションを受けて耐え抜けば復帰してもよい」というように条件を出すものもいる。とてもつらいその訓練を耐え抜き、なつみを説得するなどして、4人までは揃えたましろ

でも残るそらのをなぜか嫌っているゆかりが、「そらのが入るなら私は抜ける」という。さくら以外の他のメンバーもそらのには多かれ少なかれ思うところがあるようだ。

単身そらのに逢ったましろは、彼女からこう告げられる。「『魔法戦隊ルミナス☆クライシス』は過去最高の視聴率を記録し、大きな成果を上げました。そのために、私のやったことのひとつが、わざとみんなをピンチに追い込む、というものです」「すべては、テレビに映る『魔法少女』を創り上げるため。ましろちゃん。『魔法少女』なんて、フィクションなんです......つまり、嘘です」

自分の大好きだった魔法少女が嘘。そしてルミ☆クラが5人揃わず、さくらの転校を阻止できない...大きなショックを受けるましろだが....

ちょっと甘酸っぱくって、切なくて...でもクスっと笑える物語。

なにより、「魔法少女OverAge(魔法少女オーバーエイジ)」の世界を理解するには必須のお話。同時発売の商業盤CDと揃えればカンペキ。

「大きなお友達」もサクサク読めるので、ぜひ。

CDと同じく、ましろにさくらが抱きつく構図だが、衣装が逆転している
表紙はCDと同じく、ましろさくらが抱きつく構図だが、衣装が逆転している

....................あと百合成分多め♡

■魔法少女オーバーエイジ「私たち、もう変身したくありません」
・著者:砂守岳央
・イラスト:日向あずり

更新: 2020/12/02
洲崎綾推し的オススメ度

今までのドラマパートであやちゃんが表現した「さくら」が解る

いままで断片的だったエピソードが有機的に結合し、あやちゃん演じた「さくら」以外も実在感が高まり、「世界が動き出す」。

更新: 2020/12/30
百合度

結構あまあま

直接的ではないが

  • 購入金額

    1,340円

  • 購入日

    2017年11月14日

  • 購入場所

    K&K-Collection (Amazon)

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