レビューメディア「ジグソー」

国産RPGの雄にして、今も連綿と続く系譜をもつ、名作。

  • by
    L2さん
  • 2017/12/03
  • (更新: 2017/12/04)

私が、テーブルトークRPGに触れ始めた頃。

それは、小学生高学年に入るか入らないか、の頃ですね。

 

日本では、まだ、戦略系ボードゲームやゲームブックのようなシナリオ添付ではない、シナリオと紐づけされていないシステムを開発して販売するという道が、あまり根付いていなかったように思えます。

殆どのTRPGのシステムは、輸入、翻訳されたものでしたでしょうか。

初の国産テーブルトークRPGは、遊演体の「ローズ・トゥ・ロード」だという事ですけれども。

D&Dと同じように、ボックスセットで、高価だった事もあり、D&Dに触れた私や友人の手は届かなかった、というか、近所の玩具屋さんには、そもそも「ローズ・トゥ・ロード」が入荷していなかったのか、イラストのテイストが好みではなかった(末弥純さん、天野喜孝さんは好きだったけど、ちょっとそれとはテイストが違ったような…)で存在に気づいていなかったような……。

入って来ても、店舗に一つだけとか、そういう感じだった(後年にお金を出し合って買ったウィザードリィRPGのボックスも一つずつだけの入荷でしたし)と思うので、売れてしまっていた可能性もありますが。

書籍も扱っていた新紀元社と、そこまでの規模ではなかった(多分、想像でしかないですが)遊演体の販路開拓の差かなあ。

 

まあ、それは置いておいて。

 

ソードワールドRPGの登場は衝撃的でした。

「D&Dが良く分かる本」によって、世の少年たち(だと思う、多分。もしかしたら、土管市の少年の一部だけだったカモw)がTRPGに目覚めたと思われる現象によって、TRPGの販売促進、宣伝方法として、「リプレイ(プレイ風景を再現する読み物)」掲載をするという日本ならではの流れが出来てきました。

冒頭の「ローズ・トゥ・ロード」も、「リプレイ」を宣伝媒体として使っていたのではないかなあ。

多分。

小学生から中学生にかけての年代であった私は、その掲載があった本などには、当時は触れていないので…。(あくまでも、私の感想ですが、「ローズ・トゥ・ロード」は大学生位の人達のようなサークル活動している年代のものだと思っていました。)

 

脱線しました。

ドラゴンマガジンを初めて購入したのは、この作品のリプレイ掲載開始があったから、かな。

記憶がどうにも曖昧です。

アイドルが表紙だったという記憶はあんまり無いので、創刊号から購読していた訳では無いことは確か、なんですけれもね。

(購読競合者の居ない)隣町の本屋まで、月一で走ったのは良い思い出です。

 

連載記事の冒頭、キャラクターシートの肖像欄に描かれた各キャラクターの草彅琢仁さんのイラストもワクワクしましたが。

それ以上に、シートそのもののレイアウトや能力値の文字にワクワクしたのです。

更新: 2017/12/03
注意点

今、これを入手する人は、設定の隙間等、当時の認識との差の大きさに注意、かな

TRPGの基本は、まず世界観の構築。

でしょうか。

私が所持している。とあるモチモノ(東京モンスターバスターズ)ではそれについて、結構辛辣な感じでレビューしましたね。

でも、まあ、やっぱり、世界創作はシステム面と並んで、肝だと思うのですよね。

 

まず、初めに、大まかな歴史の流れの解説と、プレイヤーキャラクターが存在している時代の設定が語られます。

 

ソードワールドの舞台はフォーセリアと呼ばれる世界。

 

神話の時代、魔法の時代、剣の時代の三つの時代。

創世神話から、神々の戦いで終わる神話の時代は、世界創作上は基本ですので、流しまして。

魔法の時代は、ソードワールドというか、フォーセリア世界の肝的な、

神に直接作られた人類や亜神の血を引くような魔法使い達によって建国された、伝説のカストゥール王国の成立で始まり、世界の支配、そして、その滅亡で幕を閉じまして。

その技術の遺失や、荒廃から、立ち直って来た、魔法を使えない人々(蛮族)による新王国群の時代である、剣の時代(作品名の由来は、この時代名)が、冒険の舞台となります。

 

本書では、

「時代的には魔法があることを除けば、我々の世界の古代から中世にかけての西洋社会に近いものがあります。

そして、もっとやさしく言えば、一般に『ファンタジー』と呼ばれる雰囲気の漂う世界なのです。

遥かな宇宙の果てか、遠い過去か(それとも未来か)、あるいは次元を超えた異界にあるものか、フォーセリアは我々の知らない場所に存在しているのです。」

という補足が入っています。

この捕足が、黎明期のTRPG布教活動の難しさの現れなのかもしれませんね。

 

世界地図は、こんな感じ。

その中でも、用いられるのは、北に大きく鎮座する、アレクラスト大陸という大きな大陸。

都市国家、軍事国家、部族国家、由緒ある大国など、あらゆるパターンの国家がひしめく設定です。

ロードス島戦記の舞台である呪われた島も、見えていますね。

 

興味深いのは、ファーランドの設定でしょうか。

未踏の地という扱いなのですが、公式では永遠に解明されることがない(設定が存在しないというのが唯一の設定)土地なので、プレイする人が、そのゲームマスターごとに自由に設定をしても、全て否定されないという大陸となっています。

 

ちなみに、同じ世界に存在しているというクリスタニアは、この地図には載っていません。

呪われた島から、遥か南という設定ですね。

ユーラシアを想像させるアレクラスト大陸、アフリカのようなファーランド、オセアニアから東南アジアのような雰囲気なのか、アトランティス、ムーなのか、といった呪われた島。

地図上、北側にそれっぽい大陸がある事は、架空世界とはいえ、なんだかホッとしますね。

でも、クリスタニアの位置関係を考えると、この地図が世界の大半では無い可能性がありますよね。

世界の成り立ちから考えると、フォーセリアは球体ではなく、盤状の世界かもしれませんし。

気候も、精霊とか神の力や、魔法の影響などが残っていて、偏っていたりする設定ですし、赤道的なものが、この地図の中にあるとは思わない方がいいのかなあ。

 

ちょっと脱線しました。

 

ドラゴンマガジンにリプレイが先行連載されていて、紹介記事、Q&Aなどがありましたので、各国家や、組織、街などの雰囲気など、詳細については、ドラゴンマガジンの掲載記事をご覧になってくださいとの文字。

連載当時だからこその、牧歌的な連携ですねw

ただ、ゲームブックレベル位には説明があるので、ルールブックのみを購入した人でも、プレイは出来ますね。

とはいえ、このソードワールドRPGを発売当時にやりたい!と思っていた人は、大抵、ドラゴンマガジンの購読者だったりして、リプレイなどを読んでルールブックに触れようとする訳ですので、世界観の詳細は掴んでいる事が多かったりします。

 

改めて、そういった背景や環境が無い中で、今、初めて読むとなると、

世界観、その背景部分の説明は弱い、という事になるでしょうか。

 

また、設定を説明していく事が中心になっている為なのか、

キャラクター作成ルールが、第2章=能力値の説明、種族について、第3章=技能、第4章=戦闘等々、と並んでいるプレイヤーへの説明セクション(第2章から第9章の全8章)の一番後ろ(第9章)になっているので、

第2章中の、能力値の説明に続いて示される、能力値から算出されるボーナス値についての説明、と、種族の説明の間に、

「キャラクターの能力をどう定めるのか、については第9章に説明があります。それを読んで実際に作成したら第3章から第8章の説明が理解しやすくなるでしょう」

という文章が挿入されているのですが、これは、結構、不親切な構成になってしまっているかなー。

ボーナス値の算出方法と使い方は、能力値の説明とは切り離して、種族の説明に入り、その後に、キャラクター作成ルールに移れば、分かり易いと思われますねぇ。

続いての種族の説明でも、ルール上の特徴、特技が書いてあるのですよね。

これも切り離して(以下略)

 

やはり、ここも、ドラゴンマガジンでの連載当時以外の時期にソードワールドRPGを始めようとすると、説明の拙さを感じる部分になると思います。

その後に出た資料集や上級ルール、Q&A集などを盛りこんだ完全版で、この辺りは解決されている可能性はありますね。完全版については、発掘調査をして、いずれはレビューして見ようと思います。

 

しかしながら、この作品の後継発展作品である、ソードワールド2.0が発表されて随分と経ちますし、完全版ではなく、このルールブックでソードワールドRPGをプレイし始めようとする人は、極めて稀な可能性は否定できませんねー。

更新: 2017/12/04

6面体ダイスだけの判定で、結果を多岐に渡らせる工夫が、このゲームの肝、かな。

まずは、キャラクターシートをご覧ください。

 

・器用度 武器や道具の使いこなす力、戦闘時の命中判定や鍵開けなどの判定に関わる。

・敏捷度 身のこなし、移動速度、戦闘時の行動順や、回避、ジャンプ力などの判定に関わる。

・知力 知識の量、頭の回転の良さ、魔法の成功、威力の決定、識別能力などの判定に関わる。

・筋力 力の強さ、攻撃の威力、装備出来る武器防具の重量などに関わる。

・生命力 身体の頑強さ、ダメージに耐える力、HPとしての役割と、毒などの状態異常に抵抗する判定に関わる。

・精神力 意思の強さ、気力の大きさ、魔法を使用する時に消費するMPとしての役割と、魔法への抵抗などに関わる。

 

この辺りの能力の数、種類の選定は、D&DやT&Tと同じような感じですね。

 

しかし、ソードワールドでは、入手性の難しいダイスを用いず、双六などに付いてくる事も多く、どこのご家庭にも、一個か二個位は存在している事の多い、六面体二つだけ用いるという制限があります。

この方式は、6面体ダイス(D6)を2個振る=2D6ロールシステムと呼びたかったとか、そうでもなかったとか。

 

D&Dのように20面体(D20)、12面体(D12)、8面体(D8)、4面体(D4)といった特殊なダイスを用いず、入手性の容易なものだけ、

T&Tのように6面体とはいえ、同時に大量の数を振るのではなく標準的な数だけ使う、

という事で、T&Tルールと同じく文庫冊子の、この作品では、大掛かりな準備をせずにプレイできるように考えられています。

 

ただし、ダイスの種類、数の制限が有り、使える最大数のダイスで、普通に能力値を決定しようとすると、「2」から「12」と、ちょっと狭まめの範囲になります。

そうすると、生命力、精神力が最大で「12」になってしまうのですよね。

まあ、どちらかというと、最大値の小ささよりも、最低値が「2」、期待値が「7」というのが厳しいのかもしれません。

この数字は、もしダメージを1D6、或いは2D6の目で決めたとしたら、二回もダメージを受けたら死んでしまう数値であると思われるので。

この生命力、精神力も含めて、能力値はレベルアップでは成長しないシステムとなっています。

そうなると、常に死と隣り合わせで、大きな冒険が出来ないキャラクターの方が多くなってしまう可能性があるかな。

能力値が特殊な場合を除いて成長しないのは、他の作品では、HPや耐久度、体力度がキャラクターの体格の基準として用いられているにも関わらず、成長で増加していってしまうと、人間離れした体格になってしまったり、戦闘が苦手な職業であっても、高レベルになっていると、駆け出しの戦士よりもマッチョな体格を持っている事になってしまったりするのではないか、という疑問への答えなのかもしれません。

 

ダイス数の制限など、根幹のシステムで、独自路線を採っているけれども、いっそ、キャラクター作成時だけは、2D6ロールに拘らなくても構わないと思うのですが。

(D&DもT&Tも、キャラクター作成時の能力値は、3D6ロールが基本で、「3」から「18」となるのを想定し、6面体ダイスの期待値「3.5」を反映して、平均的能力が「9」から「12」とされています。その為、どちらの作品でも「13」以上の能力でプラスの修正値が、「8」以下の能力でマイナスの修正が付くという……。

 この二つのTRPGにも、更に、元ネタになる3D6でのシステムが先駆者としてあったのかなあ)

ソードワールドでは、基本能力値決定の際に、AからHの副能力値(キャラクター作成時の未使用する数値)を2D6を基本としたダイスロールで算出し、それを合算する事で、乱数の偏りによる不利益を減らそうという試みが行われています。

キャラクターシートに、記載されている所をもう一度ご覧ください。

基本能力値の左側に、四角と長四角に囲まれたAからHの副能力があります。

単純に、A+B、C+Dと基本能力値に使う副能力を被らないように足していくというのもアリだったと思いますが、ご覧のように、B、C、F、Gは二ヶ所の能力決定に用いられます。

これによって、関連するとしている領域に含まれている扱いの能力同士での格差が出にくいようになっています。

例えば、器用度は高いけれども、敏捷度が極端に低い、とか。

筋力が高いのに、生命力が異常に低い、というような、特殊なキャラクターが生まれにくくなっています。

高名な小説エルリックサーガの主人公のような虚弱体質なのに大剣を用いて敵を打ち倒す、という不思議なアンバランスさが魅力のキャラクターもいると思いますけれども。

(エルリックは、虚弱体質なのに筋力が有る訳では無く、大剣が魔力を秘めたものの為、剣を手にしている時のみ、超人的な力を振るう事が出来るだけなのですが)

普通にプレイして、楽しむ為に、必要な能力が算出しやすい構造ではありますね。

 

この副能力値は、種族ごとに振るダイス数、加算値が異なっており、種族の特徴を表現しています。

ソードワールドで冒険者として作成可能な種族は、

・すべての能力が標準的な範囲である、人間

・手先の器用さと、力強さ、頑強さに定評がある、ドワーフ

・知力に優れ、魔法を操る力に長けるが、力は弱い、エルフ

・人間の子供位の身長で、非常に非力だが、特筆すべき身の軽さと器用さで、楽天的に生きる、グラスランナー(他作品でのホビット、ハーフリングに相当する種族)

・人間とエルフの混血で、両者の中間的な能力をもつ、ハーフエルフ

となっています。

 

人間だけが、AからHまで全て、2D6ロール、他の種族は、1D6+X、或いは1D6÷Xが特徴に合わせて色々と指定されている、といった具合。

それぞれの特徴を極端に表現してしまうと、判定に不利になるような数値になってしまったりしますが、副能力値の能力を跨いで加算し合う組み合わせは、冒険を困難にしすぎないような調整の役割を果たしていると思います。

 

キャラクター作成は、種族決定、能力値決定の次に、技能の取得に移ります。

本項でのメインは、2D6ロールでの判定のバリエーションについてですので、簡単(?)に説明しておきますね。

 

技能は、D&DやT&Tなどでいう所の職業(クラス等)に相当するものになります。

特に冒険活動と密接に関係するとされる技能が、冒険者技能と呼ばれています。

これは、ファイター、シーフ、プリースト、ソーサラー、シャーマン、といった戦闘能力を持ったものが多く、所持している経験値を消費して、成長、取得などを行える技能で、冒険に出るキャラクターの強さを表す、冒険者レベルの元となります。

冒険者レベルは、戦闘時のダメージ減少値や、瀕死の際の生存判定、魔法、毒などへの抵抗基本値として用いられます。

これにより、高レベルキャラクターである英雄達が死に難いという状況を再現しています。

 

キャラクター作成時に、人間は、ランダム、或いは任意に選択する出自によって、初期技能、所持金、経験値などのバリエーションを持っていますが、その他の種族は、種族ならではの背景に沿って、技能、所持金、経験値を所持しています。

冒険が始まる前には、所持している経験点を消費して、プレイヤーが初期技能以外の取得やレベルアップなどを選択していく形になります。

人間以外の種族による技能取得の制限はあるものの、選択の自由度はかなり高く、取得可能な技能を広く薄く複数選択する事自体は禁止されていません。

しかし、技能には、その力を発揮する為の装備制限や、取得に関する条件等があり、それをお互いに満たす事が出来ない組み合わせも存在します。

条件が合わないからといっても、取得できない訳では無く、条件を満たすまでは封印状態で所持する事は可能です。

ただし、そういう取得方法だと、当然、所持している中で最大のレベルによって求められる冒険者レベルは低くなり、戦闘などで、かなり不利になりますので、普通のプレイでは、お互いに技能の条件が相反しているものを複数取得していくような、贅沢は出来ないですねw

以上が、技能についてです。

ちょっと駆け足で失礼しました。

 

さて、ダイスの使い方の妙を語る項目なので、ここからがメインとなる行為判定について、ですね。

成否の判定も、もちろん、ダメージの算出も、2D6で出した目によって行います。

ここでの肝は、能力値の決定では、「ダイス二つを使う」と言いながらも、「1D6+X」という振り方がありましたが、ゲームを開始したら、2D6ロール以外をしない、という事です。

 

サイコロを必ず、二つ振る。

という方法では、結果は、「2」から「12」の数字しか出ないじゃないか。

と、思った方。

大正解です。

2D6ロールによって出される目は、「2」から「12」までの数字しかありません。

この数字だけで、

・攻撃が成功したか、どうか。

・その結果、どの位のダメージを与えたのか。

・攻撃を回避できたか、どうか。

・その結果、どの位のダメージを負う事になったのか。

を、判定するのです。

 

D&Dでは、

・成功判定は20面体を。

・ダメージ算出は、武器毎に、異なるダイス(短刀はD4、長剣はD8等々)を。

・回避判定は無く、防具によって、相手の命中判定を難しくさせる事が出来る。

・防御力にはダメージ減少能力は無い。

T&Tでは、

・成功判定は、3D6ロールを。

・ダメージ算出(戦闘値を比べ合って、差をダメージとする為、武器の攻撃力=ダメージではありませんが)では、武器毎に、異なるダイス数や修正値(片刃短刀は2D6+1、大剣は、6D6+0等々)を。

・回避判定は基本的には無く、戦闘値が小さい側が攻撃を受けます。

・防具に設定された防御点をダメージから引くことが出来ます。

用いる事で、結果のバリエーションを出しています。

 

単純に、ロールの種類は2D6のみ、結果は、ダイスの出目。

となると、極端な話、例えば、

武器は、その辺りに落ちていた棒を使っても、伝説の魔剣を使っても、

ダメージが「2」から「12」の間になりますので、

外見的な意味以外では、武器を選択する楽しみや、意味はありませんよね。

 

成否判定については、行為の難易度や、その判定に関する技能や知識などによる修正を加える事で、目標値に必要なダイスロールの値を上下させて、同じ2D6でも、ハラハラしたり、余裕綽々で臨むことが出来るようになっています。

なので、この部分ではダイス数の多寡はあまり関係無いですね。

 

そして、

ダメージ算出方法が、出色の出来であると、

私は信じて止みません。

これは、当時、凄く興奮しました。

という事で、更に、もう一度キャラクターシートをご覧くださいませ。

シート下半分は、戦闘時に判定に用いる数値を計算、控えて置くための表が鎮座しておりまする。

その右下。

レーティング表写し、の欄。

 

はい、このレーティング表こそが、ダメージ算出の為の乱数表です。

小さくて見づらいのは、許して頂くとして。

2D6ロールとキーナンバーを組み合わせたもので、キーナンバーは武器、防具の性能値です。

 

ソードワールドでは、武器、防具に、扱う為の必要筋力が存在します。

当然、必要値を満たしていない場合は装備できません。

こういった、装備を使いこなす為の必要能力値は、T&Tでも存在しています。

例えば、T&Tにおいて、大剣は、筋力(体力度)21必要なので、筋力の数値21以上のキャラクターのみ使用可能、ダメージは「6D6+0」です。

といった感じ。

必要能力が存在するとはいえ、武器、防具のそれは固定値です。

必要筋力21の大剣は、筋力が21のキャラクターが使っても、筋力30のキャラクターが使っても、「6D6+0」固定です。

(T&Tでは、筋力(体力値)が違うと、個人修正値が違いますので、強さは変わりますけれども)

所謂、規格のある既製品で、大剣の大きさは決まっているという事ですねぇ。

 

ところが、ソードワールドでは、ある考え方を取り入れました。

それは、

「同じ大剣でも、

 コナン・ザ・グレートが振り回す大剣と、

 エルリックが振り回す大剣のサイズは、

 違うんじゃね?

 なによりも、装備は、自分の体格に合わせて選んだりする物だし、ね。

 そして、サイズ違うなら、威力も、その差の分だけ、違うんじゃね?

 (エルリックの得物が魔剣であることは一旦忘れてください)」

という事。

大剣として成立する大きさの下限(ソードワールドでは、必要筋力16)や上限(同、特になし)などの範囲内であれば、

例に挙げたコナンは必要筋力24、エルリックは必要筋力16のそれを持っているとして、どちらも、大剣と呼べる訳です。

しかし、同じ「大剣」でも、二人の持つそれは、重量、大きさは当然異なりますので、威力の違いは出る。

 

そこで、武器、防具の威力、効果を表す方法を2D6ロールのみを使って表現するものが、必要筋力値から導き出される「性能値(キーナンバー)=武器は打撃力、防具は防御力」なのです。

これによって、キャラクターの能力に応じて、装備する武具の打撃力や防御力が異なるというバリエーションが出来た訳です。

ただし、武具の種類が違っても、必要筋力値が被る範囲では、逆に差異がなかったりします。

(例:必要筋力13のブロードソードと、必要筋力13のバスタードソードは、姿形が多少異なるものの、レーティング表で判定するキーナンバーは「13」なので、打撃力に違いはありません)

このルールにより、逆に発生する矛盾(先に挙げた例のように、必要筋力が同じなら、落ちていた棒と、伝説の剣には外見以外の差は、結局無いことになる)に対しての答え。

それは、材質や造りなどの違いで、技能の発揮条件や、用法の違いによる修正値の差などに関わるという設定。

(例えば、必要筋力10のチェインメイル(金属製)と、必要筋力10のハードレザー(革製)では防御力は同じですが、金属鎧を着ていると精霊魔法が使えないという制限を持つシャーマン技能習得者は、後者を装備していないと技能が発揮出来ないですし、同じ重さであるとしても、水中での行動や崖などを登る際の動きやすさへの影響などで、修正値の差が発生したり。

 また、ブロードソードとバスタードソードの違いについては、刃渡りや柄などの長さの違いにより、使用できる場所の制限があったり、バスタードソードは両手持ちで扱う事が出来る為、持ち方を切り替える事で打撃力にボーナスを貰う事が出来たりするのです。)

 

このシステムは、非常に興奮しました。

打撃力、防御力をレーティング表を使って導き出すという事も、楽しいことですけれども。

武器、防具が筋力値に応じて、キャラクター毎に違っていて、自分だけの装備を持っているという、特別感も、また、楽しかったですね。

更新: 2017/12/03
総評

満を持して発売されただけあり、かなり高レベルで纏まったルールブックです。

あんまり語り過ぎると、レビューというよりも、ただの要約になってしまうので、総評へ。

 

リプレイ連載が先にあり、解説記事やQ&Aなども併せて載っていた状態からの、ルールブック発売ですので、中身のルール自体の練り込みも高いレベルになっていますね。

 

新しい判定システムである、レーティング表や、

能力値がほぼ成長しない中での高レベル冒険者や英雄の強さの表現となる冒険者レベル、

舞台となるアレクラスト大陸の設定など。

 

魅力は、とても大きい作品です。

 

しかしながら、ルールブックを単体で入手して、プレイするとなると。

章の並び、説明する項目の推敲など、少し、不親切な部分がありますね。

そうなると、星の数は3つかな。

今、無理して、これを入手する位ならば、完全版を買うべきであるとは思いますが。

 

入手した当時の私にとっては、文句なく、星5つとなりますので、総評としての満足度は星5つ付けるのですけれどもw

  • 購入金額

    640円

  • 購入日

    1989年04月頃

  • 購入場所

    青雲堂書店

15人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (6)

  • タコシーさん

    2017/12/04

    凄い文章量...
    NEC98のゲームでも中世の何処かの国とかで始まるゲームが多かった
    ゲームキャラの名前なんて覚えきれない...誰が誰やら でもゲームは何とか進む...
    で、色々あってFPSとかアクション系に為ってしまいました....私、論理的じゃないからかなあ..
  • L2さん

    2017/12/04

    タコシーさん、ありがとうございます。

    文章の内、七割~八割はアイテムの説明ですので、実質的にはそれほどでも無い可能性があります。

    TRPGの内、剣と魔法の時代を扱う作品の多くは、古代から中世にかけての歴史物に被る浪漫を含んでいますので、それの延長線上としても発展した(私の想像ですが)88、98のRPGでは、そういう要素を含んでいるものが多いのかもしれません。

    後々、サイバーパンクや、近現代が舞台や、日常ものなどのTRPGにもCRPG(TRPGとの対比で作られた造語、今は死語、かな)にも出て来て、普通の風景になっているのが幸せですね。
  • cybercatさん

    2017/12/04

    思い入れが熱く伝わってきて、最後まで楽しく読ませていただきました。
    テーブルトークRPGは一時期やりかけたんですけれど、近くに一人しかプレイする友達がおらず、その友達はハマっていたのでいろいろ遠征したりしてプレイしてましたけれど、自分は始めたばかりだったのでそこまでのめり込まず、数回その友人のグループに数合わせで参加しただけでリタイヤしちゃいました。
    ひとりでやれるPCゲームと違って、「環境」って重要ですね。

    あと文中にエルリックが出てきたのはニヤリとしました。
    魔剣ストームブリンガー..ラストが良かったですね。
    ...ちょっと脱線しましたw
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