後継モデルのSPHEAR Sが発表されたためか、FOCAL製のイヤフォン、SPHEARの国内正規品が安く売られていました。
FOCALは高級スピーカー製品群で知られ、今年の7月からは老舗オーディオメーカー、LUXMANが代理店として取り扱うようになったブランドです。そのためか、FOCALとしては手ごろな価格のこの製品(といっても3万円前後)であっても「良いスピーカーを作るブランドだけに、音楽のツボをきちんと押さえた音作り。国産の『ハイレゾ対応』を売りにした製品など足下にも及ばない」などと絶賛されているのが、このSPHEARをはじめとするヘッドフォン・イヤフォン製品であったりします。
個人的にはこのような評価はただのブランド信仰だとしか思わないのですが、販売店のレビューなどでもこのような論調ということで、そうなると本当なのかが気になってきます。そこで大幅に安くなった価格に魅力があったということもあり、半信半疑ながら入手してみました。
2枚目の写真では上に跳ね上げていますが、ここに国内代理店の保証書が貼付されています。
外装は特に格好良いとは思いませんが、質感などは価格相応にあり悪くはありません。ただ、必要も無いのに必ず付いてくるスマートフォン対応リモコンは何とかならないでしょうか…。
魅力もあるが弱点の方が明かに気になる
それでは早速試聴してみましょう。
開封直後の音は正直言って聴くに堪えないレベルの音でしたので、ONKYO DAC-HA300を使って50時間以上鳴らした上で改めて試聴してみました。
まず、最近試聴をする際に最初に聴くようにしている「Shape Of My Heart / Sting」です。冒頭のアコースティックギターの音色などは硬質で派手さが覗きますが、胴鳴りの表現などはなかなかですし音場もまずまずです。ただ、高域方向の音が妙にカサカサで、耳につく辺りが気になります。実は鳴らし始めはこれが特に気になり、長時間聴いていられるものではなかったのです。
こうなると多分厳しいだろうと感じた「Great Expectations / TOTO」にソースを変えてみたところ、予想通りでした。ハイハットの音がとにかく汚いのです。妙にやかましく感じるような強調感がある一方で、金属の質感はまるで出ません。Joseph Williamsのハイトーンのヴォーカルにも、ハイハットにまとわりついている付帯音が強く残っていて、彼らしい伸びやかさは全く感じられません。
一方でDiana Krallのように音数が少なく、アコースティック系の楽器で固められたソースであればそういった弱点があまり強調されず、悪くは無い音になります。とはいえ、3万円クラスのイヤフォンとしては少々物足りない程度ですが…。
また、David Garrettのヴァイオリンは高域方向の付帯音で音色が変わってしまいます。彼ならではの美しい響きは全くなく、電子ヴァイオリンで弾いているかのような安っぽい音になってしまうのです。
添付のイヤーピースで厳しかったので、手持ちのいろいろなイヤーピースを使ってみたのですが、残念ながらSpinFitやSpiral Dot、SONY EP-EXN50(ノイズアイソレーションタイプ)、Complyなど音が大きく変わるものも一通り試してみても、高域方向の改善は見られませんでした。Complyで減衰するよりも低い周波数の部分が強調されているのではないかと考えられます。
ただ、全く駄目な音なのかと言われれば、アコースティックギターやベースなどの音色で「おっ」と思わされるような良さを覗かせることもあり、その辺りに魅力を感じる人はいるかも知れません。それでも、私が用意したソースで「これなら得意」と感じる程良かったものはなく、総じて低~中域はそこそこ、高域はやかましく質も悪いという傾向は変わりませんでした。
というわけで、私が聴く限りでは何を以てこの製品を絶賛するのかは見出すことが出来ませんでした。元値の2万円台どころか、今回の購入価格である1万円前後クラスでも、これより良質な音を出してくれるイヤフォンはいくつもあります。
イヤフォンはオーディオ機器の中でも特に評価の個人差が大きい存在であり、他人の評価をアテにしてはいけないということを改めて思い知らされた格好です。私が聴く限りではとにかく高域方向は質・量共にはっきりと難がありますので、それが気にならないようなソースで使うのであれば全く使えなくは無いと言う程度の製品であり、積極的にお薦めできる点は「FOCAL」というブランドを格安で手に入れられるということだけではないでしょうか。
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購入金額
9,980円
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購入日
2017年11月03日
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購入場所
フジヤAVIC
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