正規輸入品だと3万円程度で売られるという、意外と高価な製品なのですが、中古セールで割合手ごろな価格で出ていたので試してみることにしました。
交換用のフィルターは残っていたのですが、イヤーピースは全サイズ欠品していました。試聴時にはお馴染みSpinFitや、JVC HA-FD7用の交換用イヤーピースであるEP-FD1(レビュー未掲載)を使いました。EP-FD1は軸部分が少々緩いのですが、デザイン的な収まりが良かったのです。この2つで音質は結構極端に変わるのですが、音質評価については過去のレビューとの整合性重視でSpinFit装着時の状態で行います。
何故か添付品のケースはソフト・ハードの双方が用意されているという丁寧さです。
写真はSpinFit装着時のものです。SpinFitは音質的なマッチングという意味では悪くはないのですが、ハウジングの形状の問題で、あまり耳奥まで押し込むことが出来ず、SpinFitらしい装着感は得られませんでした。装着感という点に限っていえば、EP-FD1の方が窮屈さがなく良好です。
比較的小さいハウジングではあるのですが、この中に10mmダイナミックドライバー×1基とBAドライバー×2基が入っているというハイブリッド型の構成となっていて、これがAKGのハイエンドイヤフォン、K3003とよく似た構成ということなのだそうです。外観も割合似ていることから、廉価版K3003、中華K3003などと呼ばれることもありました。
もっとも、構成がいくらよく似ているといっても、実売価格で約5倍という差があるだけに、同次元の音を出すとは到底思えません。多くは期待せずに試聴してみましょう。
安くなっていなければ選ぶ必然性を感じない
試聴には以下の2機種を利用しました。
ただ、一聴した時点での感想は、はっきり言ってしまえば「3万円の音は出てこない」です。あまり細かい論評をする意義は見出せませんでした。
まず、決定的に駄目なのは生楽器全般です。
試聴の定番となっているこの辺りのソースで、楽器の質感が全く出てきません。古いMIDI音源で無理矢理再現しているような印象を受けるほど、「生」の質感が表現されないのです。Diana Krallのヴォーカルも全く上手く聞こえません。
高域は結構刺激的なまでにクッキリと再生されますが、ハイハットの質感などはお世辞にも良いものではなく、ただ出ているだけというべきでしょうか。
もっとも、かなり微細な音までクローズアップして聴かせる傾向がありますので、ソースのあら探しにはもってこいかも知れません。mp3のソースを聴くと、320Kbpsでエンコードされていてもブリージングがはっきりと聞き取れるのです。ホワイトノイズやレコード音源のスクラッチノイズなど、とにかくどうでも良い音は非常に良く聞こえます。個人的には美点とは思えませんが…。
この機種のレビュー記事を読むと「はっきりとした音でドンシャリ」という傾向のものが多いと思うのですが、実際に聴いてみると意外と最低域は出ておらず、ベースの本当に低い音はあまり再現されません。高域方向は可聴範囲内では良く伸びていますが、1~4KHz辺りの音が尖っていることで高域が強く出ているという印象を受けるのではないかと思います。
さすがに5千円以下クラスでありがちな、大きなバランスの崩れなどはありませんが、音楽を快適に聴くという行為からは極めて遠い位置にある製品といえそうです。
ちなみにComplyも念のため使ってみましたが、特徴的な高域方向はかなり大人しくなるものの、聴いていて元以上につまらない音となってしまいます。指向性をやや弱めるようなイヤーピースと組み合わせるのが最良ではないかと予想されますが、手持ちでマッチングが良いというものは特に見つかりませんでした。
人によっては極めて高い評価をしている製品ではあるのですが、個人的には同じ刺激の強い音であるならば、基本的な音の質はそこそこ良い、MASTER&DYNAMIC ME01の方を選ぶでしょう。
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購入金額
6,026円
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購入日
2017年08月20日
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購入場所
ソフマップ
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