1969年作品。111分。原題 “Alice’s Restaurant”
あらすじ
アメリカがベトナム戦争へと本格的に突入していく中、青年アーロは徴兵を逃れようと、徴兵検査の事前質問に虚偽の持病を記入したが、あっさりと見抜かれてしまう。通っている音楽学校も出席停止を言い渡された彼は、音楽で生計を立てようとしながら、ヒッピー崩れのような生活をしている友人のアリスたちとの交流も深めていく。
ごめんなさい。
こんな作品、あらすじどころか導入部だってうまく書けないや(^_^;)。
え~~、恐らくはほとんどの日本人は知らないんじゃないかと思われる作品です。
っていうか、私も長らく知りませんでしたが…。
本作は実は、1967年ころにアメリカでヒットしたフォークソングを元に作られた作品です。
歌を元に映画を作っちゃうってのもすごい話ですが、元曲もすごいですよ。
ある意味。
もう10年くらい前になりますが、一緒に仕事をしていたアメリカ人がこの曲について触れて、「なにっ!?お前はあの曲を知らないのかっ!!??」ってんで無理やり聞かされたようなところのある曲なのですが、結局えらい好きになった曲です。
あ、「曲」って聞くと、ちょっと間違ったイメージを抱くかもしれません。
多分ご存知ない方も多いと思うので簡単に説明いたしますが…
まずは、「ちょっとした大作」です。
バージョンによっても色々ありますが、初出の時でもたしか17分超え。
バージョンによっては22分超えってのもあるらしいです。
でも、「長い曲かぁ~。じゃぁプログレだね」と思ってしまうかもしれませんが、この曲はフォークソングです。
しかも、歌ってる歌詞は
“アリスのレストランには何でもあるよ
入ってごらんよ。裏手にあるところだよ。
線路からたったの半マイルだよ”
これでほぼ全て(^_^;)。
一回だけ別な単語2個をはさみますが(「別」って言ってもそのうちの一つは“Alice”ですが…)、「歌」の部分は基本これだけです。
「そんなんで何故17分っ??」
って思うでしょう?
実は、この「曲」は、「語り」がほとんどを占めております。
ギターをつま弾きながら、延々とフォーク歌手のアーロ・ガスリーという人が語っていくという物凄い構成の曲です。
じゃあ語りの部分ではどんなことを言っているかというと、つまるところ反戦の意味を込めたコメディソング……じゃないな。
どっちかっていうと「コメディソングの体裁を借りた反戦ソング」ですね。
反戦メッセージが入っているとは言っても堅苦しい所は全くなく、「この曲はアリスについてで…それとレストランと…だからこの曲は『アリスのレストラン』といいます」みたいな歌詞…じゃなくて語りで始まり、導入部を要約すると「古い教会を手に入れて住居にしたアリスたちのところへ感謝祭に訪れた際に、地下にあった大量のごみを捨ててあげようと公的なゴミ捨て場に行ったら祭日で休みだったので、どこに捨てようかと思っていたらたまたまちょっとした崖の下みたいなところにごみの不法投棄を見つけたので、小さいごみの山を二つ作るよりも、大きいの一つの方が良いだろうと考えて、そこに捨てたら警察から連絡が来ちゃった」感じのお話し。
いやぁ、長い文章だったなぁ。(^^;)
ここから反戦に持っていくんだからすごい歌でしょう?
だから17分とかかかるんですよ、きっと。
ちなみにこの人は、他にも「Motorcycle Song」という良い曲があって……
あ、「モーターサイクルソング」と読んではいけません。
これは、「モーター『スィクル』ソング」です。
う~~ん……これを始めるとまた更に長文化していきそうだから書くのは止めた方が良さそうだなぁ…。
ともあれ、そんな「アメリカ人なら年齢によってはかなりの確率で知っているであろう曲だが、日本で知っている人はあまり居なさそうな曲」であります。
でもってそんな曲を今度は映画にして、1時間40分にまで伸ばしちゃいました!(^^;)
さすがに歌の内容だけではもたないので、前後にもストーリーが付け加えられています。
っていうか、歌詞の内容が本格的に始まったと思ったら、既に映画が始まってから1時間くらい経ってました(^^;)。
映画を見るまで知らなかったのですが、実は監督がアーサー・ペン。
「俺たちに明日はない」の監督さんです。
だからこの作品も暗い。
まぁ……時代が時代ですからねぇ…
ニクソン大統領がベトナム戦争の終結を宣言したのが1973年だそうで、アイゼンハワー大統領の頃にはアメリカが片足を突っ込み始めていたようですから、そらもう公開時は多分、世間も戦争に辟易しはじめ、反戦運動も盛り上がりを見せていたんじゃないでしょうかねぇ。公開年はウッドストックが行われた1969年ですからして…
映画「イージーライダー」でも描かれたように、長髪の男が田舎に行くと、それだけで嫌がらせや暴力を受け、なおかつそれに対して警察も何もしない…どころか、その長髪男がすべて悪いことをしたことにされてしまうというような…
とりあえず、トランプが大統領となった現代に相通じるものがあるくらいに、世論が分断されていた時代なのでしょう。
というところまで書いて、久しぶりに曲の方を聞き返してみたのですが、やはり曲の方は反戦をうたいつつもしっかりと笑いに包んであり、聴き終わった後にちょっとした爽快感を感じるのですが、それに対して映画の方は、閉塞感というか行き詰まり感というか……とにかく暗いっ!!(^^;)
基本的にコメディ映画好きなので、こういうのはあまり得意ではなく、なんともはや色々と戦争やらなんやらについて考えてしまいました。
最近、太平洋戦争に関する本とかも読んでたからだな、きっと。
という訳で、
・暗い映画が好き
・考えさせられる映画が好き
・社会問題を扱った映画が好き
・この監督が好き
・この曲のファン
などの人を除いては、個人的にオススメは出来ない作品でした。
いや、絶対一般向けじゃないよ、これ。
あ、ちなみに映画の主人公であるアーロ・ガスリー役は、当のフォーク歌手アーロ・ガスリー本人が演じております。
その為、現実にどれほど即しているのかが非常に曖昧になっているあたりがミソかな?
ぷるけんでしたぁ~~。(^-^)
(2017年2月鑑賞)
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購入金額
0円
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購入日
不明
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購入場所
新星堂
ぴょんきちさん
2017/02/27
ほら、日本だって神田川を映画化しちゃったやん、そんなもんですよ(笑)
ぷるけんさん
2017/02/27
しかし、「男と一緒に銭湯に行ったら男がなかなか出てこなくてえらく待たされた」ことを歌って1番が終わってしまう曲を、よくまぁ84分にしたものですなぁ(^^;)
こっちは曲(語り)が長い分、まだ楽ですな(^^;)