今回はDAP2種類を中心に試聴してみました。まだトータル10時間も鳴らしていませんので、まだ音は変わるかも知れませんが、現時点での評価とお考え下さい。試聴に使ったのは以下のDAPです。

自分が最もよく持ち歩く2台ということです。

IE60は標準タイプのシリコンイヤーピースのSサイズ（添付品）を装着した状態で試聴しています。

まず、全体的な傾向としては低域は最低域が薄めでその上をやや膨らませているという、量感で稼ぐタイプの音です。IE60のレビューを読んでいると「柔らかい低音」などという表現をよく見ますが、良く言えばその通りであるものの悪くいえば力感やレスポンスがもう一歩ということになります。

高域は付帯音が少なくクリアですが、金属の質感などは出にくく、この辺りは正直言って偽IE80の方に分があります。そして中低域辺りがやや薄めなのかも知れませんが、ヴォーカルや弦楽器の音が妙に細身に感じられるときがあります。

この特徴が気になったのがこの辺りのソースで、David Garrettのヴァイオリンはどの曲でもあまり楽しめませんし、「Nのハコ」の特典ディスク収録の「ガーネット」（奥華子のカバー）などを聴くと南條愛乃のヴォーカルが妙にハスキーに感じられます。

その一方で私が最もよく聴くChicagoの曲などは、楽器の構成によってはかなり良好な鳴り方をします。

「Another Trippy Days」などは前述の中低域の薄さが影響しているのか妙に安っぽさを感じさせる音なのですが、「Now」や「Love Lives On」などの楽曲は価格帯を考えればかなり楽しめる水準の音といえます。「TOTO XIV / TOTO」なども概ね良好な鳴り方です。

同じいわゆる洋楽ロックでも、STINGなどはあまり良くありませんので、LA系のロックの音が合っているということなのかもしれません。

音場はどちらかというと狭めで、耳の付近に比較的濃い空間を形成するタイプと言えます。イヤーピースを変えればもう少し万能型のバランスにチューニング出来るのかも知れませんが、数種類試してもしっくりくる物が見つけられなかったので、これは今後への課題としておきます。

決してフラットな音ではありませんし、楽器の質感も種類によって極端に良し悪しが出るタイプですので、モニター的に聴くには全く適した製品とはいえません。ただ、上手く得意ジャンルに填まったときの音はかなり魅力的であるのも事実であり、SENNHEISERらしい造りの上手さは随所で感じられます。

もっとも、以前よりは結構実売価格も高くなっていますし、ライバル製品も充実してきた今となっては、多くの選択肢の中の一つであり、決してオンリーワンの魅力とまでは言えないのではないかという気がします。

追記：

この後約50時間ほどNW-ZX1で大きめの音量を出して鳴らし続けてみたところ、音場の広がりが増し、中低域の薄さも随分解消されました。トータル100時間程度鳴らしてやると本領を発揮してくるのかも知れません。もっとも、この状態でも偽IE80とは一長一短程度の差ではあるのですが…。