以前から何度か話題にしていた、JH AudioとAstell&Kernのコラボによる「The Siren」シリーズの最下位モデルに当たるMichelleです。
以前からイベントなどで何度か試聴していましたが、先日自分の環境を持ち込んでじっくりと試聴出来る機会があり、音質面で納得出来るものだったこと、そして臨時収入が入った勢いで購入してしまいました。
ヘッドフォンでは自分の中で絶対的な基準となるSENNHEISER HD650という存在があるのですが、イヤフォンではそれが定まっていなかったので、ここで何とかそれを定めてしまおうと思ったのです。更にいえば、現在レビュー執筆中のONKYO GRANBEAT DP-CMX1の試聴用に、バランスとアンバランス双方のケーブルが標準添付というこの製品は都合が良いという考えもありました。
The Siren Seriesとしては最下位ですが、通常の販売価格は6万円前後ということですから、一般的な感覚で見れば決して安い製品ではありません。
外箱は率直に言ってさほど高級感のあるものではありません。まあ、私自身そのような要素を求めてはいませんので、これは特に気になりませんでしたが…。
内箱はAstell&KernのDAPの箱と同じようなデザインです。
箱を開けると購入特典カードの下に本体があり、もう一つ革製のケースが見えています。この中に交換用イヤーピースと2.5mm4極バランスケーブルが収納されています。
丁度この写真に内容物が一通り写っています。
The Siren Seriesの上位モデルはいずれも大型の金属製ハウジングであり重量もかなりかさむため、はっきり言ってしまうと私の耳ではきちんと装着出来ません。しかし、Michelleのハウジングであればきちんと耳に収まってくれました。
突出したものはないが、平均的に高水準
早速試聴してみました。今回試聴に使うのは、以前からイベント等でも試聴用に使っていた、Astell&Kern AK100IIです。Astell&Kernとのコラボモデルである以上、同社製のDAPが最も無難な相性を示す可能性が高いはずですので。
MichelleはBAドライバー3ウェイ構成であり、これは今まで使ってきた中ではUltimateEars UE900と近い構成となります。UE900の方は3ウェイ4ドライバー(低域、中域×2、高域)ですが、Michelleは3ウェイ3ドライバーとなります。
先日じっくりと試聴した際には、アユートの方のお薦めもあり、beyerdynamic AKT8iE MkIIを比較用の相手としたほか、The Siren Seriesの上位モデルとなるRosie、Angie IIとも聴き比べました。
この時の印象では、AKT8iE MkIIは高域方向の表現は驚くほど緻密ですし、音場も少し独特の味が乗りますがなかなか素晴らしいものでした。長所の部分はMichelleを明らかに上回っていたでしょう。しかしbeyerdynamicらしく低域が強く主張してきて、しかもその低音に妙な癖がつきまとうのがどうしても気になりました。例えば「Englishman In New York / Sting」などを聴くと、ベースがしゃしゃり出てくるだけではなく、そのベースの音色にどうしても違和感が残るというところです。楽曲全体の印象でバランスを欠いている辺りに納得出来ず、AKT8iE MkIIは早々に候補から外れました。
次にAngie IIを聴きました。いや、厳密に言えば聴こうとしました。最初のうちは良いのですが、ハウジングがあまりに大きく重いので、だんだん耳から外れてきてしまうのです。そしてきちんと装着出来ている時の音質ですが、例えば「Wallflower / Diana Krall」辺りを聴いている分には素晴らしいのです。しかし、ここで少し意地悪なソースとして「Infinite Synthesis / fripSide」を鳴らしてみると、やはりダメなのです。打ち込み系の電子楽器の音がとてもつまらなくなってしまいます。今回は自分のリファレンスとなるモデルを求めていましたので、幅広いジャンルをカバー出来ない以上候補になり得ないということで、これも外れます。
そしてシリーズの中ではMichelleのすぐ上という位置付けとなるRosieです。これは外見などは上位モデルに近いのですが、私の耳でもきちんと装着出来ました。その代わりこれは音質の方に魅力がありませんでした。確かに低域方向の深さや重量感はMichelleより上なのですが、BAとは思えないほど狭い音場が気になりました。また主に楽器の質感などでもMichelleを上回っているとは思えません。
以上のような結果となったため、その時点でMichelleを買うことはほぼ決まっていました。ただ、いつ買うのかは決めていなかったのですが、臨時収入がそこそこ発生したこととeイヤホンのシークレットセール特価が決め手で購入したという訳です。
ここで改めてAK100IIと組み合わせて、出荷状態の3.5mmステレオミニケーブルのほうで聴いてみましょう。
どうしてもAK100IIのキャラクターが出るため、低域方向は量こそある程度は出るものの馬力のようなものが出ません。しかしMichelleの魅力は大体どのようなソースを聴いても、これは苦手だなと感じるものがないということです。音場の広さもずば抜けてはいないもののBAらしく広がりますし、David GarrettでもfripSideのEDM系の音でも、大体水準以上で鳴らしてくれるというのが魅力です。
そしてこれをバランス接続に変えてみると、低域の力感と厚みが向上し、高域方向もよりクリアになり、音場も広がると共に見通しが良くなります。つまりアンバランスの音をそのままグレードアップしたような印象なのです。
今回求めていたのは個性ではなく汎用性ですので、近い価格帯の製品の中でもこの点ではかなり優秀ではないかと思うのです。
音質から装着感まで、明確な弱点がないことが最大の魅力
この後さらにGRANBEAT DP-CMX1での試聴も行いましたが、それはDP-CMX1のレビューの方に掲載します。
DP-CMX1とMichelleの組み合わせは、私にとってはかなり高い満足度となりました。DP-CMX1を返却しなければいけないのが惜しいところです…。
The Siren Seriesの上位モデルと比較して、Michelleが特に優れていると思われる点は装着感です。ハウジングが他のモデルよりは小さく軽いというだけではなく、ノズルの角度が独特であり、これがユニバーサルフィットモデルながら装着時の個人差を少なくするための工夫ということなのだそうです。そのため体が大きく動いても耳から外れたりすることはなく、極めて良好な装着感が得られています。
また、本機はリケーブル対応なのですが、端子形状は一般的なJH Audio形状ではなくCIM 2pinと呼ばれるものです。比較的サードパーティー製のケーブルが手に入りやすいことは魅力ですが、端子の強度はJH Audio形状の方が上であり、この辺りは一長一短でしょう。
ある程度安くなって5万円ですから、お世辞にも安いとはいえません。しかし、その価格を払った価値はあると感じさせるだけの内容は持った製品です。
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購入金額
50,000円
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購入日
2017年03月26日
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購入場所
eイヤホン
harmankardonさん
2017/04/01
いいですね.なかなかイヤホンに5万円以上は出せません...
JH Audioの上位モデルはハウジングが大きいので,フィッティングが難しいですよね.
jive9821さん
2017/04/02
有難うございます。
普段なら購入価格2万円以内が目安なのですが、自分の中のリファレンスになり得るものに出会えていなかったのも事実でしたので、臨時収入の勢いで買ってしまいました。さすがに当分は高級イヤフォンの類を買うことは無いと思います。
試聴イベントの時にアユートの営業の方のお薦めに従って色々と使ってみたのですが、JH Audioの製品で私の耳にきちんと収まるのは、RosieとMichelleだけでした。まあ、代理店が違うため無かった、TriFiでもいけそうですが…。
RosieとMichelleで聴き比べてみたところ、純粋にMichelleの方がずっと好みの音でしたので、結果的に比較した中では最も安いMichelleに決めました。