本日Chicagoのベーシスト/ヴォーカリストとして30年以上活躍した、Jason Scheffの脱退が公式に発表されました。そこで彼に関連した作品を何かと考えた際に、真っ先に浮かんだのがこの作品でした。
とはいえ、豪華なゲスト陣で話題となった本作ではありますが、Jason Scheffが直接参加したというわけではありません。ただ、本作はJason Scheff無くしては生まれなかった作品でもあるのです。
TOTOは本作の前に「Isolation」という比較的ハードロック寄りのアルバムをリリースしたのですが、この作品のアメリカ本国での評価はあまり芳しいものではありませんでした。
その前作に当たる「TOTO IV」が世界的な大ヒットを記録していただけに、「Isolation」の評価にはメンバーも落胆したようで、結局はこのアルバム制作時に加入したヴォーカリスト、Fargie Frederiksenを解雇してしまいます。
Fargieは所謂メタリック・ヴォイスの持ち主で、高音域の抜群の張りを活かしてハード系の楽曲を歌うと抜群に格好良かったのですが、ミディアムテンポ以下の楽曲を苦手にしている部分がありました。また、専任ヴォーカリストであり、曲作りなどでの貢献も不足していました。そこで、より幅広いジャンルをこなせ、出来れば曲作りにも関われるヴォーカリストを探すこととなりました。
しかし、これはという人材を見つけ出せないまま時間ばかりが経過します。そんなある日、TOTOのドラマーJeff Porcaroが、たまたま顔を合わせたJason Scheffに事情を打ち明け、適任者を心当たり無いか相談しました。するとJasonはあっさりと「Joseph Williamsはどうだ?」と答えたのです。Josephは以前からTOTOのメンバーたちとも面識があったこともあり、Jeff Porcaroもすぐに「そうか、あいつがいたか!」とオーディションの受験をJosephに打診し、結果としてJosephはTOTOのメンバーとして迎え入れられました。
結果的にJasonの一言でTOTOのメンバーへと迎えられたJoseph Williamsは、加入直後の本作で早速リードヴォーカルとしてもソングライターとしても大活躍し、次作に当たる傑作「The Seventh One」でも中心メンバーとして活躍するに至ります。
再結成時にもヴォーカリストとして再度迎え入れられるというJosephとTOTOの縁を最初に繋いだのが、他ならぬJason Scheffだったという訳です。これが、Jason無くして本作が生まれなかったという理由です。
持ち味の多様性と、やや行き過ぎた実験精神
さて、本作は以前紹介した「TOTO IV」と同様に、期間限定の1,000円盤として発売されたものです。
本作は各ジャンルから豪華なゲストミュージシャンが参加したことで話題を呼びました。
Michael McdonaldやDon Henryといったロック系の有名人の他、David Samboneや巨匠Miles Davisまでが参加しているのです。
楽曲としては、Steve Lukatherがリードヴォーカルを務める名バラード「I'll Be Over You」がヒットを記録しますが、実はこの曲はTOTOが外部ライターを招いて作った初めての曲といわれています。この曲はSteve LukatherとRandy Goodrumの共作ですが、この曲の成果に満足したのか、これ以降Steve Lukatherはこれ以降Randy Goodrumと曲を一緒に作ることが多くなったといわれています。
個人的には他にも「Without Your Love」「Somewhere Tonight」「Lea」など気に入っている曲も多く含まれていますし、Miles Davis参加曲の「Don't Stop Me Now」も素晴らしいと思っているのですが、反面アルバムとしての完成度はさほど評価していません。どうしても全体を通して聴くと何か違和感を覚えるのです。
先ほど改めて聴いていて何となく気付いたのですが、TOTOのサウンドの特色の一つであるSteve Porcaroのシンセサイザーの使い方(というか音)が、何となく本作ではしっくりとこないことがその理由では無いかという気がします。一言で言えば安っぽくて古くさいとなってしまうのでしょうか。
ドラムでも名手Jeff Porcaroがいるにも関わらず敢えてプログラミングを使っているところがあるのですが、これもTOTOの音に馴染んでいるとは言い難く、結果的に何となく「らしくない」音になってしまっているのではないかと思います。
前述のように本作の布陣(厳密にはSteve Porcaroが正式メンバーから外部ミュージシャン扱いに変化)で、傑作「The Seventh One」が生み出されるわけですが、本作はそこに至るまでの露払いという印象を個人的に抱いています。
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購入金額
1,080円
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購入日
2016年09月18日
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購入場所
HMV
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