創業1752年の和食器販売会社たち吉の洋食器ブランドであるAdam & Eveが
鬼才ルイジ・コラーニとコラボして2001年コレクションと銘打ったシリーズを販売したのは
1983年でした。
その時にコーヒーカップや灰皿を買い揃えましたが、ほとんど残っておりません。
数少ない生き残りが、この小さな灰皿です。
自然界に直線は存在しない
自然界に直線は存在しない。 水平線も地平線もしかり。
人の体にも直線で構成されるものはない。
これがルイジ・コラーニのデザイン哲学の根底に流れているのだと聞いております。
例えば400m級の貨物船を設計するときも、その船体は丸い地球の重力の影響を受けるため、船底を完全な直線で建造すると、船体は歪むのだとか。 その前端と後端は中央に対して1センチ前後の差を持つ曲線で描く必要があるのだそうです。(コラーニ談)
確かにコーヒーカップのみならず、湯呑みでも茶碗でも、四角く形成された製品は口当たりの悪さを伴います。
この灰皿は、瞳をモチーフにデザインされているのでしょうか。
優美な楕円形に対して、黒目に相当する部分が灰皿として機能します。
真横から眺めても、優美な曲線で構成されているのが判ります。
ルイジ・コラーニはドイツ人なのですが、かたや直線基調で構成されているバウハウスもドイツでした。
面白い対品だと思います。
非常に低い
次にルイジ・コラーニのコーヒーカップをご紹介する予定ですが、それも含めて、コラーニの作品は実用性に欠けると思います。
この灰皿にしても、製品の容積に対してタバコを受け止める容量は極めて少ないです。
また火の点いたタバコを休ませると、燃えている部分が陶器表面と接するので、立ち消えが心配されますし、陶器自体も脂で汚れやすいです。
嫌煙の時代、タバコの消費量を減らす目的には合致するかもしれませんが、その機能性を考えると
とても及第点を与えることは出来ません。
だからこそ30年以上を経て割れずに残る個体があるのかもしれません。
多く喫煙されるお客様にお出しすると、交換依頼が飛んできます。
ウレタン
一体成型で焼かれていますので、内部は空洞です。
糸切りに相当する底部は仕上げられていませんので、テーブルを傷つけない為に黒いウレタン樹脂が貼られていました。
しかしウレタンは加水分解してしまいますので、今はこのような有様です。
磁器としての艶は残りますが、工業製品としての品質に疑問が残ります。
コラーニのサインも、アダムアンドイブの商標も、やや傷みが見受けられます。
捨てられない
朧気な記憶ですが、5つ購入したはず。
手元には2つ。
不注意で割ってしまった灰皿もあると思いますが、いくつかは請われて出ていったはず。
いくつかは紛失しているかも。
実用性の薄い、数の揃わない灰皿なのに、今も手元に残る理由は、、。
デザインの力だと思います。
丸いから、直線基調だから、白いから、光るから、大きいから、小さいから、
理由も好みも人それぞれですが、気に入ったデザインのモノは永く手元に残る。
そんな気がします。
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購入金額
1,000円
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購入日
1983年頃
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購入場所
四条たち吉本店
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