今じゃ信じがたい話であるが、1990年代のコンピュータ用CPUの大半は整数演算専用で、浮動小数点(FLOAT)演算が出来なかった。
というか、その頃のCPUは「FLOAT演算」を行う場合、整数演算機でFLOAT演算を行う(というより、入力された数式に対する回答例集みたいなもの)パッケージを用い、仮想的に演算結果を返すという動作をしていた。
そのため、FLOAT演算命令が含まれるプログラムの場合、内部割込み命令を出してFLOAT演算パッケージを使っての計算結果を返し、次の処理に移るという、非常に面倒くさい動作をしていた。
そこで、FLOAT演算専用の演算機が登場した。AMDのAm9511である。
このFLOAT演算機は、AMDによりAPU(Arithmetic Processing Unit)と命名されたが、動作内容そのまんまの意味を持つFPU(Floating Point Unit)と呼ばれるようになる。
ちなみに、現在のAMD-APUは、
Accelerated Processing Unit の略である。
AMDユーザーは死んでも忘れてはならぬので、覚えとこうな。
閑話休題。
ただ、これらのFPUは基本的に「外部処理装置」であり、またI/Oポートを介してデータを右へ左へとやっていたので、いちいちFLOAT演算の度にFPUへ飛ばす命令を挟まないといけないなど、相変わらず面倒この上ないコードを必要とした。
そこで登場したのが、FPUコプロセッサである。
CPUと直結され「FLOAT演算だけを肩代わり」するというもので、CPUは自動的にFLOAT命令処理をFPUコプロに橋渡しし、FPUコプロは演算結果を直接CPUというかメモリへ返す事が出来た。
そのため、FPUコプロはFPU利用の明示命令が不要となり、I/Oポートより数倍高速に橋渡しが出来、従来の外接方式と比べて飛躍的に速度と精度が向上。
プログラムや計算によっては、数倍の速度で結果を返せるようになった。
後に、このIntel486(DX)でIntel8086向けFPUたる8087が統合され、Pentium以降のCPUではFPU内臓が”当たり前”となっている。
んで、486の内臓FPUを殺したのが、486SX。
安価なので、こっちのほうが当時よく見たっけね。
オマケで、Am486 DX2-66。
i486系の互換プロセッサで、Intelとほぼ同速を維持した。
さて、FPUコプロがどういうもんかテキトーに書いたところで、ようやっと現物写真である。
MC68881は、モトローラの開発したMC680x0-MPU向けというか、FLOAT演算専用コプロセッサとして開発されたもので、ガチにFLOAT演算以外の事は何も出来ない石だ。
汎用命令は全てMC680x0側に頼る形となり、単体では基本的に動作しない。
MC68881は、MC680x0側の動作クロックに応じて複数のバージョンがあるが、これはRC20Dという20MHz動作に対応するバージョンにあたる。
なお、本来はこのクロックを双方で併せてやる必要があるのだが、MPU(CPU)側が遅い分には特に問題にならない(コプロ側がMPUより鈍足の場合、そこがボトルネックになる)ので、MPUより速いのを積めばちゃんと連携動作する。
こいつはMC68881のPGA版にあたり、X68000XVIやXVIcompactなどに装着可能なもの。
他にもFPU用PGAソケットを持つモトローラMPU搭載機ならば、基本的に動くはずである。
なお、X68000に搭載されたMC68000は「FPUコプロセッサの連係動作を想定されていないMPU」のため、XVIではコプロのくせにI/O接続となり、本来の実力は発揮出来ない。
FPUコプロの本気モードが見たければ、FPUコプロ接続を前提として設計されたMC68030を搭載するX68030(クロックの問題から68882でないと駄目ですが)が必須である。
X68000-XVI側のFPU用PGAソケット。
ここに、FPUコプロ表面の印と矢印の示す角を合わせて取り付ける。
完全に差し込んでも少し浮く(0.5ミリ前後)が、それで正常らしい。
無論、X68000にプラグアンドプレイなんぞ無いので、積んだだけでは動作しない。
搭載完了後、起動ディスクのConfig.sysにある”Float2.x”を”Float3.x”に書き換え、仮想浮動小数点演算パッケージ(Float2)を切り離し、FPU計算ドライバ(Float3)を組み込んで起動するよう、起動設定を変更してやる必要がある。(X68030ではFloat4.xに書き換えること)
空いてたから、挿したかっただけなんだよ。
搭載による恩恵は判りにくいのだが、SX-Windowを使う場合は積んだ方が軽い。
メモリ拡張の恩恵を更に引っ張り出すため追加してみたが、殆ど「穴があったら埋めたい」欲望で手に入れたので、今のところ一部のソフトでしか変化ないかな......
そのうち、ゲーム類でも試す予定。
ジオグラフシールとかは、コプロとメモリ積むと紙芝居から脱するらしいけど、ホンマかいな。
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購入金額
2,480円
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購入日
2016年09月20日
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購入場所
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