これはLH0032の回路をディスクリート部品でユニバーサル基板に実装したものです。LH0032はナショナルセミコンダクターから発売されていた高速オペアンプですが、今では入手が困難です(今のところ私は持っていません)。しかし、定数を含む完全な回路が公開されており、一部のオーディオマニアが実際にディスクリート部品で再現しています。
なお、LH0032自体が内部にディスクリート素子を使うハイブリッドICで、シリコンウェハーから作られる一般的なモノリシックICではありません。
最初の差動入力FETは熱結合が推奨されるようですが、今回はデュアル素子の2SK2145-BL(このランクしか手に入りませんでした)を使いました。それ以外のトランジスタは、一般には2SC1815、2SA1015を使うことが多いようですが、今回はSS8050、SS8550を使っています(このトランジスタは海外の電子工作では定番とされていて、2SC1815などの日の丸トランジスタとはピン配置が異なります)。トランジスタはすべて無選別です。また、補償コンデンサは100pFを使いました。
LH0032のオリジナルは1回路のみですが、今回はソケットに差し替えて使えるように(えっ)1枚の基板に2回路実装してみました。回路図だけで実装すると頭がこんがらがるのでCADツールで実体配線図を作ってから実装しています。なお、配線またぎのポリウレタン線がなかなか思うとおりに実装できず(予め片端にハンダを付けておくなどの対策をしても仮止めに失敗したりとか)、私にとっては鬼門でした。もうやりたくないです。
それと、最初に火入れしたときに1箇所配線を繋ぎ忘れて煙を吹いたことがあります(理由は印刷したCADの読み間違い)。その影響で酸金のうち2本にに焦げたような跡が付いています。もちろん慌てて電源を切ったことは言うまでもありません。半田でブリッジさせて修復しました。
音質としてはクリアで見通しが良い一方、ウォームで聴き疲れしにくい印象です。また、何やら反響のようなものが微かに聞こえます。一般にモノリシックよりディスクリートのほうが音が良いと言われていますが、今回作ってみて実際に良いと感じました。但し、MUSES01や同02、OPA627、THS4631、AD812のような「別にディスクリートじゃなくても良くね?」というオペアンプがあるのも事実です。
ただ、普通に換装しただけだと音量が少し足りない気がしたのでZobelフィルタを経由しています。
なお、オフセット調整用のトリマポテンショは何もいじっていません。めんどくさいというのもありますが、私は直流成分をあまり気にしていないからです(流石に数Vも出てはまずいのですが)。
最初の試聴時はオフセット未調整だったのですが、過渡波形の観測のためにオシロスコープを使用したついでにオフセットも調整しました。ただ、これが音質に影響を与えるとは私には思えませんが……
過渡波形の様子がおかしいのですがこれは一体……
過渡応答(A=11 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=10kΩ 位相補償なし 10:1プローブのみ接続 ガラエポユニバーサル基板)
(12/30追記)15Ω負荷(セメント抵抗)時の過渡波形を以下に掲載します。何やら下半周期の様子が変です。
過渡応答(A=1 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=0 位相補償なし Rl=15Ω ガラエポユニバーサル基板)
波形の更新を停止するとこのようなものが見えました。部分的に発振しているのでしょうか……? あるいは、100pFでは足りないのでしょうか。
(2017/4/15追記)改めて聴き直したところ、MUSES01やOPA627と比べてずっと低域が甘いようです。
(2017/4/19追記)Zobelフィルタと出力に接続した上でNFBで位相補償(10pF)をかけたところ、低域の聞こえが良くなりました。しかし、NFB位相補償なしのときよりも若干音が濁ったような気がしますが、気のせいかもしれません。ただ、33pFでは過補償であるようで、分離が悪くなります(位相補償用のゲタに使ったのは積セラですが村田の温度補償型(CH特性)なので別にコンデンサのせいではないと思われます。積セラの音が悪いと言われるのはF特性やX7R特性など高誘電率系に限った話です)。なお、Zobelフィルタを使わずNFB位相補償のみではあまり効果がないようです。
材料と原価
- ユニバーサル基板 LUPCB-7427W(Linkman) ¥122.04
- DIP8ピン金メッキ丸ピンコネクタ(台湾製) ¥72
- 変換基板 D006(ダイセン電子工業) @¥41 数量2 ¥82
- SIP金メッキ丸ピンコネクタ(台湾製) @¥10.80 数量12 ¥129.60
- DIP6ピン金メッキソケット(台湾製) @¥16 数量2 ¥32
- デュアル Nch JFET 2SK2145BL(東芝) @¥100 数量2 ¥200
- NPNトランジスタ SS8050DBU(Fairchild) @¥42 数量18 ¥756
- PNPトランジスタ SS8550DBU(Fairchild) @¥42 数量10 ¥420
- ポリプロピレンフィルムコンデンサ UPZ(東信工業) @¥16 数量2 ¥32
- 多回転トリマポテンショ J9W(東京コスモス電機) @¥324 数量2 ¥648
- 金属皮膜抵抗 1/4W 1%標準品(KOA) @¥10 数量26 ¥260
- 酸化金属皮膜抵抗 1W 5%標準品(KOA) @¥10 数量4 ¥40
以上の合計 2793円64銭
なお、半田及びポリウレタン線(配線の跨ぎに使用しております)は上記に算入していません。
トリマポテンショにお金をかけすぎた気がします。もう少し安価なものでもよかったかもしれません。
丸ピンコネクタの単価は1ピン当たりの単価なので端数が出ています。実際には20ピン216円で売られていました(ここの店は内税)。
ユニバーサル基板の価格にも端数がありますがこれは消費税(本体価格1円につき8銭)を加算したためです(ここの店だけ外税だった)。
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購入金額
0円
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購入日
2016年09月19日
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購入場所
自作(部品調達はシリコンハウスとデジットと大阪マルツ)
jakeさん
2016/09/25
MihailJPさん
2016/09/26
面実装品については……実はオリジナルのナショセミ製が一応入手できなくはないようで……