LT1028はアナログデバイセズの低雑音オペアンプです。等価回路図を見る限り、全段バイポーラ構成です。
メーカーが推奨する用途は「高性能オーディオ」のほか、「赤外線検出器」「加速度計およびジャイロ・アンプ」などがデータシートに記載されています。
LT1028はゲイン-1(反転等倍)で安定とされていますが、非反転増幅では安定しにくいようです。姉妹品にLT1128があり、これはユニティゲイン安定です。その他、メーカー選別品のAグレードがありますが、私が購入したのは選別品ではない無印グレードです。
なお、LT1028/LT1128には1回路品のみがあります。
位相補償が前提だが明瞭
普通にcMoyアンプで使うと発振します。発振すると音が濁ることが多いのですが、このオペアンプの場合位相補償なしでは音量が不安定になったりガサゴソ言ったりします。過渡応答を見ても、リンギングが激しすぎて入力に(オシロスコープで見られるほどに)反射してしまっています。
過渡応答(A=11 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=10kΩ 位相補償なし 10:1プローブのみ接続 ガラエポユニバーサル基板)
33pFで位相補償をすると、音が明瞭に聞こえます。強いて言えば、OPA604の音が近いでしょうか。MUSES8820や8920のような繊細さには欠けるようです。
また、コンデンサの代わりにZobelフィルタを使った場合も、発振が原因とみられるノイズを抑制することができました。
過渡応答(A=11 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=10kΩ Cfb=33pF 10:1プローブのみ接続 ガラエポユニバーサル基板)
(12/30追記)15Ω負荷(セメント抵抗)時の過渡波形を以下に掲載します。
過渡応答(A=1 Vin=200mVp-p f=100kHz Rfb=0 位相補償なし Rl=15Ω ガラエポユニバーサル基板)
ヘッドホンアンプ程度なら
この石は1回路用なのでステレオで使うにはもう1つ同じものが必要です。DIPのソケットで使うには、変換基板も必要です。
位相余裕がなく、ボルテージフォロワでは発振してしまいます。そのような用途には、LT1128が用意されています(これは持っていません)。パラメータ検索ではゲイン2以上で安定となっていますが、データシートにはそのような記述が見つけられませんでした。
電源電圧は±4~±22V(絶対最大定格)で動作します。電流出力はカタログ上30mAのようで、最近の高感度のイヤホンなら駆動は可能です。実際にcMoyアンプでSHE9710を駆動することができました。
位相補償に積セラを使うなら良好
今回購入したのは一般グレードですが、適切に位相補償すれば高品位な音になります。同価格帯で表面実装の1回路品ではほかにOPA827、OPA2211などがありますが、それらより安価です。ただ、DIPの選別品は高価になってしまいます。
また、位相補償にディップマイカコンデンサを使った場合は合計でそれらを上回ってしまいます。私は試聴時、ソケット化した積層セラミックコンデンサ(村田製作所製。低容量では温度補償型です)を使っています。
位相補償すると若干マシになる
発振すると熱くなります。24V駆動のcMoy回路の場合、位相補償なしの条件では、外気温29.7℃に対し44.2℃まで上昇しました。
位相補償33pFの場合41.2℃、コンデンサではなくZobelフィルタを付けた場合、42.0℃です。どちらも発振対策には有効と思われますが、フィードバックキャパシタのほうが発熱対策には若干有効であるようです。
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購入金額
788円
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購入日
2016年06月10日
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購入場所
マルツ大阪日本橋店
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