ハンガリーの現代作曲家クルターグ・ジェルジュとその奥様マルタによる連弾。

タイトルは「ゲームとバッハの改曲・編曲集」。

タイトルのとおり、バッハの有名な曲の連弾と、まるでピアノで遊んでいるかのような小品が織り交ぜられてる１枚だ。

老夫婦による睦まじい連弾の様子は、オンラインで公開されてもいるので、検索してみて欲しい。

クルターグは音楽の教科書をハンガリーで出版しているほど教育に熱心であり、本作の「ゲーム」という曲は、現代音楽という枠組みを逸脱して、ピアノを初めて学ぶ人でも楽しみながら演奏できるように考えられている。

非常に印象的なのは９トラックめの「Perpetuum mobile(objet trouve）」だろう。ピアノの鍵盤を端から端まで順に叩いて、音階を上下させる。はしからはしへと行ったり来たりすると、まるでヴェールのような音響が得られる。

その音の遊びを強弱を付けて、印象的なフレーズをはさみながらクルターグ夫妻は演奏する。演奏自体はきわめて明晰なので、ある程度の厳しさはもちろん認めざるを得ないが、遊び心と初学者への優しさが随所に隠されているのだ。