レビューメディア「ジグソー」

ローエンドでもQNAPらしさは健在

今まで自宅内でのファイル保管は、Windows Serverで動いているファイルサーバーに保管+各クライアントPCに保管という形で、端末内で冗長化を施した環境がありませんでした。

 

それでも今まで致命的なデータロストなどはなかったのですが、最近ではHDD1台が数TBという容量を持っていて、1台故障しただけでかなりのダメージが生じるという状況となっていましたので、そろそろRAID1に対応したNASを導入しようと思っていました。

 

以前からこのQNAP TS-212Pは導入を考えていたのですが、昨年末のセール価格で大幅に安くなっていたため、購入してみました。

 

 

 

 

 

 

QNAPの2ベイNASとしてはローエンドモデルとなっていて、ホットスワップ非対応だったり、Ethernetポートが二重化されていなかったりと、他のモデルと比べると明らかに劣る仕様となっています。

 

主要スペックは次の通りとなります。

 

・CPU Marvell Kirkwood 88F6282 (1.6GHz)
・RAM 512MB DDR3
・HDD 3.5インチSATA 3Gbps×2

・LAN Gigabit Ethernet RJ-45×1

・USB USB 3.0×2(Rear)、USB 2.0×1 (Front)

 

CPUはシングルコアのMarvell Kirkwood 88F6282であり、1.6GHzと比較的高いクロック周波数ではあるものの、今となってはやや非力でしょうか。ただし、オーディオ・ビデオに対する再生支援などはあるようですので、DLNA配信などは意外と無難にこなしそうです。

 

USBは計3系統あり、USBメモリーなどのストレージの他、プリンターを接続することでプリントサーバーにしたり、UPSとの連携にも対応しているそうです。

 

 

 

主な添付品です。ACアダプターやHDD取り付け及び自筐体向けのネジ、2台目HDD取り付け用のSATAケーブル、Ethernetケーブル、クイックガイド等が添付されます。HDDさえあれば、この添付品だけで稼働状態に持って行けるように考えられている内容といえます。

更新: 2016/01/04
導入難度

組み立てもQTSも見ればわかる程度の難易度

それでは早速組み立ててみましょう。今回はTOSHIBA MD04ACA300(3TB 7,200rpm)を用意しました。本来ならあまり速度が必要なものでもありませんので、回転数が低く消費電力や発熱で有利なWD Red辺りを用意するのが理想なのですが、実売価格の差が大きいためMTBF100万時間を謳うこのモデルとしました。

 

 

 

 

1台目のHDDを組み込んだ状態です。ベイが2段となっていますので、もう1台はこの上に重ねるように配置します。本体との接続は1台目のHDDについては本体の端子に直結なのですが、2台目は写真左に写っているケーブルを利用します。このケーブル(特にSATAデバイスケーブル)がやや短く、取り回しがギリギリになってしまいケーブルに少し負荷がかかっていそうなのが少々不安要素ですが、取り付け自体は極めて簡単ですし、ケーブルも挿せるところに挿すだけですから、特に迷うことはないでしょう。

 

 

組み立てが完了したら、今度はファームウェアの導入とセットアップです。QNAPのNASでは初期設定時にインターネット上から最新のNASとQTS(QNAP NAS用のOS)を取得します。初期状態ではDHCPから取得したIPアドレスが設定されていますので、予めPC側に設定ツールの「QFinder Pro」を導入しておくと良いでしょう。

 

 

 

組み立て直後、ネットワークに接続して電源を投入した状態ではNASのホーム画面はこのようになっています。ここからは画面上の指示に従ってOSやアプリケーションを導入していきます。今回は「手動設定」を選択して導入を進めました。

 

 

 

まずはNASのデバイス名や管理者パスワードを設定します。デバイス名はこれでネットワーク上に表示されますので、わかりやすいものを付けておくべきでしょう。

 

 

 

 

次は日付・時刻関連の設定です。タイムゾーンや時刻の取得方法、利用する場合はNTPサーバーを指定します。

 

 

 

 

手動設定のため、IPアドレス等も手動設定となります。

 

 

 

利用するOSや用途を指定します。私の環境ではWindows / Macintoshの共有は必要となりますので、このように設定しています。

 

 

 

 

RAIDの設定です。今回は冗長化という目的で導入していて、2ベイモデルのNASですから、自動的にRAID1を選択することになります。なお、今回の例ではフォーマット形式はExt4以外選択できません。

 

 

 

 

ここまでの設定内容の確認です。間違いが無ければ、このまま「適用」を選択します。

 

 

 

 

 

 

セットアップが進行している状態です。これが終わるまでは特に何もする作業はありません。

 

 

 

 

 

作業が完了するとブラウザーの表示が変化して、左側に「ログイン」ボタンが表示されるようになります。これをクリックして設定したアカウント情報でログインします。

 

 

 

 

初回ログイン時の表示です。ここで「スタート」ボタンをクリックして、対話式でアプリケーション等を導入します。この辺りはで必要となる情報は利用環境によって大きく異なりますが、QTSの案内は非常にわかりやすく、指示された中から欲しい機能やアプリケーションを選択していくだけで、機能の追加等が容易に完了します。

 

 

 

▲アプリケーションが一覧表示される
▲アプリケーションが一覧表示される

 

 

更新: 2016/01/04
総評

この価格でこの性能であれば文句なし

それでは、まずはNASとしての転送速度を見てみましょう。Windows PCにネットワークドライブとしてマウントした後、Crystal Disk Markで速度を計測してみました。

 

 

▲Crystal Disk Mark 5.1.0
▲Crystal Disk Mark 5.1.0

 

 

このボリュームはセットアップ時の説明の通り、RAID1、Ext4で構成されたアレイとなっています。

 

また、MD04ACA300は同シリーズの6TBモデルであるMD04ACA600の速度から考えると、SATA 6Gbps接続であればシーケンシャルで200MB/s前後という速度のドライブではないかと思います。

 

 

 

 

TS-212PはSATAポートが3Gbpsということもありますが、決してHDDが性能をきちんと発揮しているとは言い難いでしょう。とはいえ実際に使っていても安定して50MB/s程度は出ているという感覚であり、NASとしては充分実用範囲といえるでしょう。

 

そしてDLNAサーバー機能についても試してみました。Blu-ray用に編集したビットレート40Mbps程度のフルHD m2tsファイルを用意して、PCのCyberlink PowerDVDのDLNAクライアント機能で再生してみたのですが、コマ落ち等は殆ど感じられず余裕を持ってトランスコード出来ていたようです。

 

 

QNAPのNASとしては最も安価であり、仕様面では上位機種に対して見劣りも大きい製品ではあるのですが、実用上十分といえる性能と、QTSによる導入の容易さは非常に魅力的であるといえるでしょう。家庭内のネットワークに1台置いておくという使い方には極めてマッチした製品であるといえるでしょう。

 

  • 購入金額

    12,480円

  • 購入日

    2015年12月26日

  • 購入場所

    NTT-Xストア

22人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • Schrödingers Katzeさん

    2016/01/05

     DTCP-IP対応辺りが人によっては必要となるので、その辺りは用途に応じて確認したほうがいいかもしれませんね。録画周りは対応製品でも制限や違いがあるので、カタログなどで確認したほうがよさそうです。
     でも、パフォーマンスが低くても消費電力も低いので、何かの共有とか倉庫に一般家庭では充分だと思いますし、速ければ良いってもんでもないとも思います。
     HDDがあればシステムを構築できるのは「HDD入り」よりも故障に対してただの箱になるリスクが少し減るので、そういう意味でも優位性はあるかなと。
     HDD入りの商品が通常価格だと同価格帯に入ってくるので、色々比較して選択するといいかもしれませんね。
  • jive9821さん

    2016/01/05

    >Schrödingers Katze さん

    DTCP-IPなどが必要という場合には、対応を明言してる国内メーカー製が無難なのは確かでしょうね。速度に関しても実用十分という程度ですので、たとえばBUFFALO LinkStation LS420D0602C辺りの方が明らかに早いと思いますし。

    今回は価格面で優位性が明らかだったという部分が大きいのですが、メーカー製はご指摘の通りHDDの故障でただの箱となってしまう(なんとかすることは可能な場合が多いが、スキルの高いユーザーでなければ困難)リスクもあり、それをどう考えるかによって価値観が大きく変わってきそうです。

    とはいえ、最近の価格であればRAID1対応機としてはメーカー製と比較しても安いという水準ですので、価格重視でも十分おすすめできそうです。
  • Schrödingers Katzeさん

    2016/01/08

     DTCP-IPというより、録画全般だけはちょっと注意したほうがよさそうな雰囲気はありますね。利便性よりはロックすることに振ってるところがあるので、出来そうなことが出来ないことも多いですし。
     BUFFALOの方は、デュアルコアだった利するので、RAID処理なんかは強いかもしれませんね。クロックは同じくらいだったと思います。

     HDD入りの場合は、箱と中身セットで商品なので、保証は不可分になってしまうので、選ぶなら、交換も前提条件に入る2ドライブ以上の機種で、出来れば、一つHDDのミラーを作っておくと、そういう商品は安心かもしれません。

     まぁ、安心の専業メーカーって所と、好きなドライブを入れられる(ある程度の統計と傾向のデータを出してる人たちも居ますし、ドライブ自体の特性もありますし。)ところ、ある程度の自由が確保されるところ辺りはこの製品のいいところじゃないかと思います。設定しないといけないということは「選択肢がある」ということでもありますし。
     熱についてはこの機種ではちゃんと空冷されていそうなので、あんまり速くて凄いのを買うと、I/F側でパフォーマンスを生かせないので勿体無いことと、消費電力が増えることが問題かもしれませんね。

     逆に箱入りの方は、買ってきて繋ぐだけで済む、DTCP-IPなどの、国内固有のリビングで必要になりそうな機能をサポートしている、スマフォとの連携など、個人用とで特化した工夫がなされているなどの、お手軽さがあったりすることと、時期や商品によってはHDDが内蔵されているので、トータル金額が抑えられる可能性があるなんていうメリットもありますね。

     速度については、数字ほど圧倒的なこともないので、直接作業域につかうとかしなければ、倉庫に使う分には問題はでない速度が出てると思いますし、一台もなければ、一台あるとデータの扱い方が変わるくらいのパフォーマンスは出てるんじゃないかと思います。
     ってことで、あのセールで手に入れた人はお買い得だったんじゃないかと思います。
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