早速試聴してみましょう。外出時に最もよく使われるDAPである、Astell&Kern AK100IIで試聴しました。

本来は1.5万円近辺で値下げにより7千円未満という価格は、私にとってはMASTER&DYNAMIC ME03とほぼ同様なのです。丁度価格感も音質も、このME03とのライバル関係というのが正しいように思えます。

まずは「Pamela / TOTO」を聴いてみます。AKGはK70xの印象から、どちらかというと低域があまり主張せず繊細な高域で聴かせるタイプというイメージがあったのですが、N20は低域のベースの辺りがどっしりと厚く、割合エネルギー感を強く感じさせる傾向があります。実は以前試聴したときの印象では、上位のN25はこの傾向に拍車がかかり、低域の主張が強すぎてあまり心地の良い音ではなかったので選ばなかったのです。

N20はその点フラットバランスが極端には崩れておらず、音楽を聴いていて不快感とはならないのは、N25を明確に上回る点です。ハイハットの鳴り方などはK70xやN40にも通じるニュアンスはあるのですが、やはり上位モデルと比べると大雑把な表現となってしまいます。ただ、ごく普通に音楽を聴いている分には、「Now / Chicago」や「While My Guitar Gently Weeps / The Beatles」など、私が普段良く聴いている洋楽ロックは概ね快適に聴いていられました。

さすがに「Earth Song / David Garrett」のヴァイオリンの音色は価格なりとなってしまい、偽物感が強くなってしまいます。この辺りのソースはもう少し上の価格帯のイヤフォンでなければ厳しいところでしょう。私の手持ちでは、JH AUDIO MichelleやNoble Audio Savant Universalなどを除けば、ELECOM EHP-BA100がなかなか良く鳴る程度ですから仕方ありません。

全体的には1万円を大きく下回る実売価格を考えれば、十分に優秀といえる音は出してくれます。個人的にはME03と比較したときには、ME03の方がやや好みに近い程度といえますので、5千円前後クラスの製品と比べてもひと味違う実力の持ち主ということが出来ます。

ただ、この製品の形状をよくご覧いただければ判ると思うのですが、通常のイヤフォンとはノズルの角度や配置が結構異なっていて、ハウジングを耳に合わせ、結果的にノズルが耳道に入っていくという装着の仕方ですので、人によっては全く角度は合わないかも知れません。それによって音質の印象が大きく変わる可能性はあります。

PHILIPS SHE97x0系やAuglamour R8などでは何か物足りないと感じたときに、近い価格でワンランク上の表現をしてくれる存在として、N20は最適な選択肢となり得る存在でしょう。ただ、さすがに2万円前後クラスの良く出来た製品と比べれば、それなりに劣る点はあります。