スガシカオ。独特の詞の世界を持つシンガーソングライター。一般的にはSMAPに提供した「夜空ノムコウ」の作詞者や嵐へ提供した「アオゾラペダル」の作詞作曲者、自身で歌ったものとしてはNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」の主題歌「Progress」(特別編成ユニットkōkuaとして)
で識られている。それらの曲ではあまりネガティヴなイメージはないが、彼の本質の少なくともひとつはヒトの奥深い感情をえぐるような詞にある。実は彼の曲作りは曲⇒編曲⇒詞の順番で進むらしく、詞は酒を呑みながら4時間くらいで仕上げるとのこと。酒を呑まないとカッコつけてしまう、とのことだが、「タガ」をハズした彼の詞は真理を突いている。
この作品は数あるアルバムの中でもかなり内省的で内側に向いた作品。初期からのサウンド的ブレーン森俊之がキーボードで絡む以外はスガがギターとベースを弾いて残りが打ち込みという曲が多い。その無機質な肌触りの曲に乗るのは強い(こわい)詞。彼の精神界が楽しめる。
初っ端の「サナギ」から昏い。♪あなたがいなくなってからもうずっと/体はサナギ色になって渇いて/冬の寒い部屋で生まれ変わるの/まるでそれは美しい蝶みたいに/まだ濡れているその羽根を/誰かに駄目にされないように/少しずつひらいていくの/空を飛ぶユメを見て…/そんな日が不意に/やってくるのだとしたら/その羽根でどこへ/飛んでいけばいいかしら/家畜に名前がないように/あなたの名前を忘れてしまうの/思い出して泣いてしまうよりも/あなた自体を消してしまうの♪ガツンと響く生ギターとヴァイオリン奏法でふわんとブキミに入るエレギの装飾の対比が面白い。
ファンキィなリズムにのって歌われる「クライマックス」はシングルにもなった曲なのにちょーネガティヴ。♪いま/ぼくはもしかすると/世間一般で言ういわゆる/「ふられてしまう」という/クライマックスに遭遇している・・・?/ドラマの最終話で/主役じゃない方がふられちゃうシーンみたいだ/君は白々しく言うんだ/「ずっと友達でいよう」って/ぼくはたぶん「今まで/ありがとう・・・」なんていうかもね/世界中のヤケクソは/きっとこんな風に生まれてしまう/最終電車にのって/家にたどりつく間/"青春ってそんなもんか・・・"って/目を閉じて考えていた/気がついたら終点でぼくは一人/目を覚ましたんだ♪ワウがかかった明るいカッティングとちょっと懐かしめの(アナログシンセmoogによる)シンベ丸出しのベースがリードする曲調とこの詞のギャップ!
「秘密」がまた「来る」詞。♪ねぇ/気になって友達に聞いてみたんだ/君がちょっといない間に・・・/ぼくらがそっと内緒で会っていること/誰にも話していないよね?/thu-lu-thu thu-lu-thu どこで何をしていても/thu-lu-thu thu-lu-thu ぼくだけの君~誰も君の心には/さわらせたくはないから・・・/その消えてしまいそうな/ぼくらの秘密に/誰かが触れてしまうと/きっとこわれてしまうから/ぼくが永遠にそれを/守るつもりでいるんだ♪Aメロのワンコードとサビの展開の対比がいい落差。
付属のDVDにはこのアルバムからの3曲のシングルのPVとライヴ映像を挟みながらのロングインタビューが収められる。このアルバムの曲の成り立ちや、「クライマックス」のPVのミスマッチ感(稲川淳二の怪談をTVで見ている外国人家族)の狙い?など識っておくとよりアルバムが楽しめる小ネタが多く面白いかな。でもそのDVDを見てもスガの全容はつかめないけれど。そんなつかみ所のないアーティストのアヤシイ曲満載の作品です。
【収録曲】
<CD>
1. サナギ
2. カラッポ
3. 光の川
4. アーケード
5. クライマックス (Album Version)
6. June
7. あくび
8. 魔法
9. 秘密
10. 風なぎ
<DVD>
インタビュー&オフショット、ライヴ映像(ダイジェスト)
・クライマックス(PV)
・光の川(PV)
・秘密(PV)
「秘密」
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購入金額
1,400円
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購入日
2012年11月11日
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購入場所
Amazon
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