実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
もう2年半にわたって断続的にご紹介しているMarion Zimmer Bradley(マリオン・ジマー・ブラッドリー)の連作、ダーコーヴァ年代記。前回ご紹介した“ストームクイーン”から今まで物語的に空白の時代だった“The Ages of Chaos~混沌の時代”の描写に移っている。前ハイパードライブ時代に地球から飛び立った移民船が不時着し、現地の生物との交配により超能力を得てそこで暮らし始めてから千年ほど後。科学文化的には地球でいう中世時代程度に落ち着いたが、得た超能力を開花させ、超能力(ララン)を基礎に文明を発展させていた時期。そして、能力が七大氏族に集約される以前のまだいろんな能力を持つ様々な氏族が覇を競っていた時代。
ファルコンズワードを治めるマッカンラン家。他の領主と同じくマッカラン家はラランを持つ家系だっが、それはダーコーヴァ全体としても非常に希な形質。それは動物と心を通わせることができるちから。それはその動物となり、その目を使って視、その鼻を使って嗅ぎ、その舌を使って味わうことができる<ちから>であり、自分の思う方向に動物を従わせる力。ただ、この<ちから>はマッカラン一族ですら全ての人間に備わっているわけではない、希な形質だった。
現在のマッカラン家当主、ミカエル・マッカラン卿はその力を持つが、残念なことにその<ちから>を受け継いだのは子供たちの中で一人だけだった。長兄のリューヴェンにはラランは備わるがマッカラン家独特の<ちから>は備えず、次兄ダレンにはラランそのものがない気配。唯一その<ちから>を備えるのが、上の娘ロミリー。
彼女はマッカランの<ちから>を色濃く引き継ぎ、動物の感じることを感じ、動物の見るものを視る事ができた。
しかし、ここで中世期まで退行した風俗が邪魔をする。この世界は完全な男系世界。女性は能力があろうと家に入り、夫を支え家を切り盛りするのが美徳とされていた。ミカエルは以前はそれでもロミリーがマッカランの<ちから>を備えていることを兄たちに「見習うように」というくらいには許容していたが、長兄のリューヴェンが自分に<ちから>がないことを責められ、資質的にも政治向きでない自分が領主につかされることに耐えきれず、ラランの研究所の一面を持つ「塔」に出奔してからは、長兄より資質のない次兄にムリヤリ動物の世話をさせ、継母にロミリーに対して妹のマリーナとともに「レディらしく振る舞う」しつけをするよう命じるようになった。
それでも動物との交流をやめられないロミリー。勉強や習い事を抜け出しては鳥小屋や鷹舎に通った。数ある鳥の中でも最も飼い慣らすのが難しい鷹。その中でも気位が高く、人に馴れないヴェリン鷹。捕獲された野生のヴェリン鷹を飼い慣らすのを自分にさせて欲しいと父に懇願するロミリー。それを禁じた父に反し、深夜鷹と対峙するロミリー。鷹の飢えと怯えと怒りとが伝わってくる。鷹と対峙しうさぎの肉を持ち、鷹に食べさせようとするが、飢えが強く伝わって来るのに食べてくれない。鷹の心をのぞき込み、鷹の心を落ち着けようとし、ロミリーの心が通じた鷹は食べようとするそぶりを見せるが、やはり食べない。その時ロミリーは理解した。鷹は新鮮な肉しか食べない。食べられないのだ。鳩舎に入りその場で鳩を屠り、鷹に与えるロミリー。かくして鷹とロミリーの絆が繋がれた。
その鷹=プレシオサを父に隠れて訓練し、ついに自由に飛ばす日が来た。訓練が十分でなかったり、人との絆が完全でないとそのまま野性に帰ってしまうかもしれない試練の時。プレシオサを放し、ヴェリン鷹の飛翔力で遠く飛んでいくのを見送る..鷹は見えなくなり長く辛い訓練が水泡に帰したかと思い始めた時、ロミリーの視野が鷹の視点になり、獲物を見つけ、狩りをし、そして還ってきた!このことでロミリーとプレシオサは固い絆で結ばれた。
しかし、ロミリーは父ミカエルの意向で寡夫の貴族に嫁に出されることになる。プレシオサも取り上げられ、能力のないダレンに与えると言われる。それに反抗し、プレシオサを放した事でひどくぶたれたロミリー、ついに城出を決意する。途中荒くれ農夫に手籠めにされそうになった彼女がそこから逃げてひもじさにさまよっていたとき、口の中に血が溢れるような感覚が!プレシオサが獲物を捕らえてロミリーのところに還ってきたのだ!
その後ロミリーは男装して、簒奪者に王位を追われた王に忠誠を誓う一派に、鷹使いの少年として潜り込む。そこで指揮をしている王の乳兄弟に叶わぬ恋をして、破局後女性だけで生きていく剣の姉妹の仲間になるが、自分の欲しているのは男性を拒絶する女性になる事ではなく、性差を超えて人間として見てもらえることだと気づく。
彼女の想いはかなうのか?そして彼女が行動を共にする一派は簒奪者から王位を取り戻せるのだろうか?
これは、女性が自分の力で立つ物語。ウーマンリブ華やかなりし頃の作家であるブラッドリーには女性を描くときに過剰に虐げて問題提起をしたり、超然として男性に寄りかからないフリー・アマゾンとして「自立」を描写することも多い。しかし、男性に虐げられたり、一人で道を切り拓いたり、男性を排除する集団に属したりする経験を経ながら、最終的に自分の技術を元に一人の人間として認めてもらえるまでに成長することを綴ったこの物語が女性が一番生き生きと書かれている。中世的な男性優位の世界にあって、少女が自分を見つけながら居場所を造っていく、その苦労と喜びを描いた、そんな物語です。
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購入金額
960円
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購入日
1988年頃
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購入場所
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