所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストは売れてくるとコンサート会場が大きくなり、大規模な催しをするようになります。そういった催しはシカケも多く、バンドメンバーやダンサーも豪華で見て／聴いて楽しむことができますが、アーティストの生の声や息吹を感じることはナカナカできません。そんななか売れた後でもギター1本の小規模ライヴを続けているアーティストがいます。そのアーティストの「海賊盤」をご紹介します。

スガシカオ。J-POP界で確かな存在感を示すアーティスト。どエロだったり、澱んだ情念だったりする人間の暗部・恥部をえぐるような、あるいは逆に何気ない日常から人々に前を向かせる小さな灯りを掲げるようなその独特の詞の世界、フォーキィなアコースティック系楽曲からエレクトリカルなアゲアゲファンクまで幅広い曲調の曲を書き、そのオリジナリティ高い音楽性で独特の立ち位置にいる。

どちらかというとアルバムアーティストで、シングルは出せばチャート1桁までは行くがセールスベスト3に入ることはなく、アルバムで存在感を示している。

そんな彼には佳曲も多く、大会場を満席にするだけの集客力もあるのだが、一時大手レーベルを離れ、自分の原点を見つめ直すためにギター1本で各地のライヴハウスを回るツアーも行っていた。

それが「Hitori Sugar」。ギター1本、もしくはシンプルなリズムマシン程度の打ち込みをプラスしたそのパフォーマンスはスガの原点を示していて好調だったが、大手レーベルに復帰したのちもその活動を続けているよう。小規模なライヴスペースで演るので、なかなかチケットが取れないのだが、2015年に行われた“Hitori Sugar Tour2015”、その初日2015年1月11日の恵比寿LIQUIDROOMでの公演と翌週1月18日の横浜F.A.Dでのライヴの一部を生録りしたミニアルバムが限定通販されたので入手してみた。

録音はガチで生っぽく、会場のざわめきや歌声、手拍子も大きくまさにライヴ！

「Re：you」はスガが一時フリーランスになっていた時に最初にリリースした配信限定シングル。イントロと間奏のところで打ち込みのキーボード和音が聴こえるが、あとはリズムマシンと生ギ。会場も狭く、一体感が強い様相。♪Break down♪の掛け声も観客と一緒に叫びながら盛り上がる。あからさまな詞がスガらしい。♪ベッドからみると／暗い照明で／この女／あの女優と／似てない？～途中から／こいつ／まるでメスの犬／どっからこんな声／出してるんだろう？／さっきから／わざとでしょ？‥演技っぽいし／それに付き合うのも／めんどくさいんだけど／どうでもいいことばっかりで／本当にほしいものってなんだ？♪安定したメジャー契約を自ら切ってフリーランスのインディーズ活動をした彼の本音か？「本当にほしいものってなんだ？」

コード進行が美しいフォーキィな曲、「航空灯」。ファンキィなスガもよいけれど、“Hitori Sugar”のときのこういった一面もいいな。歌詞の内容も人生応援歌のような優しいもの。人の欲望やエゴを歌うのもスガならば、赦しや励ましを歌うのもスガ。この落差が面白い。♪ひとりで／傷つく方ばかり選ばずに／間違ったっていいんだぜ／進めなくなってもいい／その場所が／きっと最初のゴールだから♪

「モノラルセカイ」はアコースティックファンク！生ギ1本で激しく歌う。力強い生ギターのカッティングとのびやかなスガの声の対比がイイ！

この盤は“BOOTLEG”の名がついているように、正式なディスコグラフィーではない、生録りの公式海賊盤。加工もなく、マイクも少なく、でも臨場感があってスガが「そこ」にいるような熱気が伝わる。

生ギ中心とはいえ、エフェクターを噛ましている

なかなか映像作品にはなりそうにない、“Hitori Sugar”。でも会場の雰囲気はこのCDで十分味わえる。スガの原点に近い場所にある「生撮り盤」です。

【収録曲】
1. Re：you
2. 傷口
3. 航空灯
4. モノラルセカイ
5. アストライド

スガ シカオ - 「LIVE BOOTLEG」(trailer.)

参考：オリジナルの「モノラルセカイ」