厳密には、価格改定版では無いものを所有していますが、商品が見つからなかったので、こちらにレビューします。
日本ではマイナーメジャーな作品なので、改訂前の販売でしたが、割とお値打ちに購入。
日本で最も人気のある歴史時代ストラテジー(シミュレーション)のシリーズ達と比べると、画面の地味さが際立っているかな。
ゲーム画面は、表題にもなっているヴィクトリア朝のような、古き良きゴージャス感が有るのですが、イベントやメッセージなどはポップアップウィンドウでの表示のみですし、陸軍、海軍のユニットリーダーを除けば、人物は一切出てきません。
国力を表す数値も、人口、税収、支出、国庫、研究点、威信がメインで、それぞれを構成する細かい数字はあるものの、コマンド制ではありませんので、効果が反映されるのに時間が掛かったりしますし、直接触れる数字も少ないです。
ゲーム進行は、一日単位で、便宜上、税収も含めた収支も一日単位となります。
ゲームオーバーの条件は、地図上から国家が消える事。
下の白地図が、ヴィクトリアで使われているプロヴィンス(州或いは地方行政単位)の区切りです。
全世界統一であるとか、地方統一でエンディング、みたいなクリア条件はありません。
開始年度(シナリオによりますが一番長いシナリオは1836年)から、終了年度(無印1920年、追加パックでは1935年)まで、ひたすら国家の盛衰を見ながらプレイするゲームです。
選択できる国家は、(欧州からの視点で国家と認められていなかったアフリカ諸国、諸部族を除き)当時世界に存在していた全ての国家です。
但し、19世紀に列強と呼ばれていた国家以外では、この終了年度まで存在する事が、目標になる事が多いです。
イベントによって、滅ぶ国もあります。
国力が小さいため、開始早々に侵略されて消える国もあります。
イベントテキストのフレーバー以外で登場して、動かせる人物は、先に上げた陸軍、海軍のユニットリーダーのみで、味気なく感じる人も多いかもしれません。
また、マニュアルも難解で、実際に触ってトライ&エラーを繰り返しながら、有志の作ったwikiを見ないとよく分からないことだらけだったりします。
ゲームといいつつも、軸足は、19世紀の時代の流れをシミュレートするストラテジー。
そういう雰囲気の作品です。
なので、正攻法でプレイしても、生き残れない国は無数にあります。
むしろ、そういう国の方が多いです。
何故なら、19世紀の歴史が、まさに帝国主義植民地化の歴史であったからです。
もちろん、ゲームですので、有り得ない難易度ながらも、植民地政策で消えていった国を大帝国に育て上げる事も可能です。道のりは険しいですが。
チベット文明国化の瞬間。
非文明国というレッテルを剥がすには、かなり高いハードルをクリアしないといけません。
非文明国の軛から逃れる為のスコア達成の瞬間。
左側の国のステータスの表示の中で、国旗の枠下に表示されているのが全体の順位です。
国名の下は、国教ですね。
チベット仏教という細かい括りは無いので、大乗仏教派という事になります。
全体順位を左右する能力が、右側に並んでいる国威、工業力、軍事力の三点セット。
・国威は、読んで字の如く、どれだけ権威があるかという数字。
戦争を仕掛ける時に、大義名分がなかったりすると激減したりする数値です。(ただし、非文明国に対する戦争では、大義名分無しでも、1しか消費しません)
0以下になる事もあり、この場合は戦争を仕掛けることが出来なくなります。
自然増加が微量ながらあり、敗戦時に屈辱を受けたり、経済破綻したりすると、呆れる程減ります。
文明化には100必要となります。
・工業力は、国内の工業生産力を換算した点数ですね。
工場がどれだけ生産力を持っているか、という数値になります。
非文明国では工場そのものを建設する技術ツリーが解放されていないので、上がらない事があります。
また、収支がマイナスになって、借金が増えると、マイナスポイントになる事が往々にしてあります。
文明化には50必要です。
・軍事力もまた、字面から想像される通り、軍備の数字です。
おおよそ自国の主要民族で構成された一個師団の継戦能力最大時の戦力を一点とする計算で算出される、軍備の点数です。(自国文化以外の民族から徴兵した戦力は、半分以下、場合によっては一割程に計算されます)
非文明国はこの計算に不利な、軍事点換算0.2倍の非正規兵しか編成出来ないペナルティがあります。
文明化に必要なのは、10です。
ちなみに、総合8位以内の順位の国家は、列強となりまして、様々なボーナスが付きます。
一番大きなボーナスは、外交ポイントの増加率のアップです。
戦争を含めて、他国と交渉する行為には、全て外交ポイントが必要です。
これは、列強という事で、国際政治の中で顔が利く、という事の表現ですね。
さて、非文明国というレッテルが貼られたままの場合には幾つかのペナルティが存在します。
最大のものが戦争に関するペナルティです。
通常の文明国同士の戦争では、4プロヴィンス以上を領有している国が相手の場合には、全土占領したとしても、首都プロヴィンスは和平交渉によって割譲をさせる事が出来ません。
そして、首都の1プロヴィンスが残っていると、併合(国を完全に吸収して自国として扱う)は不可なのです。
その為、首都プロヴィンスだけにした状態で、もう一度、戦争に勝つ必要があるのです。
しかし、非文明国を相手にした戦争は、全土占領した場合、有無を言わさず、和平交渉無しで併合をする事が出来るのです。
もちろん、和平交渉で欲しいものだけ貰うという謙虚な事も出来ます。(この謙虚さの効用については後述します)
この辺りは、国土は広いものの、列強の軍備に対抗できずに併呑されていった国家の末路を演出するルールなのでしょう。
イギリス、フランス、プロイセン、ロシアというような列強国家などに宣戦布告された非文明国は、ほぼ地図から消えてしまう運命となりますので、非文明国プレイでは彼らに取りいって置かないと危険です。
1836年グランドキャンペーン開始時のチベットの収支と政策情報。
選挙の無い君主制、政党は無印だとチベット仏教の政党化とも言える「ラマイト派」のみです。
このゲームには無党派議員という概念は無いので、選挙をしても、必ずラマイト派が与党になりますね。
直接操作可能なのは、画像左側の税率、支出、関税。
右側は、実施レベルを引き上げることだけが可能で、日々の予算の他に、導入予算が掛かります。
画像の例では、国による医療制度の導入の影響が出ていますね。
導入予算が10846ポンドで、一日辺りのコストが3.92ポンド。
ゲーム開始時のチベットの収支は、マイナス1.5ポンドなので、お話にならないですねw
列挙されているのは、POP(人民を示す単位、民族、宗教、職業の三つの組み合わせで一纏りとされています)の職業部分で、その後ろの数字が変化する急進性(簡単に言うと不満度と反政府感情の合同数値)となります。
頑張ってチベットでグランドキャンペーンを完走する直前のスクリーンショットです。
総合スコアで5位に入っていますので、列強となりましたw
ちなみに、今見えている地図中の白い土地は全てチベットの領土です。
赤は、満州に進出している日本、緑がロシア、ベージュが中国です。
ゲーム概要についての説明で、「世界征服とか、全土統一でエンディングとか、ありません」と記しました。
それは、達成しても特に何が起きる訳でもない、という事でもありますが。
「そもそも、全世界のプロヴィンスを占領しきるのが、困難」なのです。
実は、このゲームには、Badboyレートというマスクデータがありまして、これが上昇すると敵対される確率が上がり、一定の値を越えた場合には、隣接する全ての国から宣戦布告されることになります。
このことを「BBW(バッドボーイウォー)」と呼びます。
BBWに包囲国として参戦する場合のペナルティーがない為、袋叩きに遭うだけという悲惨な結果になってしまうのです。(周囲が小国ばかりの時は、逆に反撃して大きくなれたりしますが)
BBWは、Badboyレートが一定以下にならない限り、常に発動し続けてしまいますので、消耗が大変な負担になるのです。
このBadboyレートが上昇する大きな要因は、「自分の国のものだ、と国際的に認められている土地以外を領土として割譲させる」事にあります。
例えば、日本が九州を他国に取られていたとして、取り返す時は、「本来は日本の領土だったので、国土回復しただけだね」と、Badboyレートの上昇はありません。
しかし、これが、日本がアメリカ西海岸を奪う、となると、「侵略行為(日本の領土とは認められていない場所に進出した)」となって、Badboyレートが上昇します。
1プロヴィンスにつき、1以上のBadboyレートが上がります(条件により、補正が掛かって上昇が激しくなる事がある)
自然下落があるものの、急激な拡張には追いつかないので、元々、列強国で、周囲に小国しか存在しない国で無い限りは、起こすべきではないイベント(?)となります。
こういった仕掛けがありますので、同じ国をプレイしても、同じように展開する事が少なかったりして、繰り返し遊べるゲームとなっています。
2.3回プレイしただけでは魅力は伝わらないと思うのですが、ハマるとこれほど面白いものはないな、と何度でもプレイしたくなるゲームです。
歴史の授業で年表を見てワクワクした人なんかは、楽しめるのじゃないかな、と思います。
何もしない(出来ない)時間も、何故か感情移入して楽しくなる、不思議な魅力があります。
惜しむらくは、日本語版を作成販売していた会社が解散してしまい、英語版しか手に入れられない状況になってしまったこと。
テキストの台詞回しだったり、文脈の妙を味わうには、私には英語力が無いので、寂しいです。
宣戦布告時に相手をこき下ろすような言い回し、結構好きです。
突然、戦争しかけられると、こういう気持ちになるものなんですw
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購入金額
4,800円
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購入日
2008年頃
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購入場所
Amazon
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