レビューメディア「ジグソー」

いつも思い出して反省する「雷神」!(青春の思い出シリーズ NO.16)

 

 6枚のDISKに101曲。 陸上自衛隊第1音楽隊、航空自衛隊航空中央音楽隊、海上自衛隊東京音楽隊、陸上自衛隊中央音楽隊、陸上自衛隊西部方面音楽隊、海上自衛隊横須賀音楽隊、航空自衛隊西部航空音楽隊、海上自衛隊大湊音楽隊、航空自衛隊南西航空音楽隊、陸上自衛隊北部方面音楽隊などそうそうたる演奏家によるものだ。

 代表的な行進曲から組曲まで収録、「雷神」はもちろんの事、「星条旗よ永遠なれ」、「エル・カピタン」、「美中の美」も「アメリカン・パトロール(ドラムロール入り)」も入っている。

 最近のCDは、Amazonなどで全曲とも一部を視聴するする事も出来る事が多い様だ。

 最後のディスクには「オマケ的要素」もあり、「いたずらクラリネット」や「メキシコの祭り」より「祭り」なども収録されている。

 このシリーズの中で「最も思い出深い曲」は、スーザの行進曲「雷神」だ。

 Youtubeの方だが、1985年4月29日に西尾市民文化会館で収録された物で、愛知県幡豆郡吉良町立吉良中学校吹奏楽部の演奏。この学校については良く知らないのだが、聴いてみるとその技術には驚かされる。想像するに、地区や全国の大会で活躍しているのだと思う。(録音技術が…と言うのは関係無い)

 

 39”付近からトランペットが高らかに鳴り響く。その後は管楽器の美しさが際立つ…。いずれにしても、「トランペット」が美しい曲なのだが、我々のブラスバンドは全く駄目だった。トランペットも他の楽器も「下手くそ」だった。「下手くそ」なら、もっともっと一生懸命に練習すれば良いのだが、余り練習はしない。そもそも、日頃のメンバーの「姿勢」が成っていなかった。そして、その原因は「自分」にあったのだが、それに気付いたのはずっと後の事だった。

 

 

 小学校の5年か6年か、小学時代もかなり最後の方だったが、ある日、いつもの様に練習をしようとすると楽器が無い。楽器と言うのは学校で貸与されている楽器とは別に個人で持ち込んでいる「トランペット」だった。その楽器が、昨日確かに練習の後に仕舞ったのだが、その場所に無い…。細かく説明すると長くなるのだが、その楽器は当時通っていたキリスト教会の先輩に貰った大切な物だった。良く使いこまれているのだが、バイプの厚みがあって重い楽器だった。メッキや塗は完全に剥げ落ちているのだが、「これぞ」と言う時には「真鍮磨き」を使ってボロ布で磨くと「ピカピカの金色」になった。音も深みがあり、学校のトランペットよりも良い音で「自慢の楽器」だった。

 どこを探しても見付からないし、自分の勘違いで他の場所に置いた訳でもない…。通常なら親に相談して警察を呼び学校には盗難届を出すところだ。結局、楽器は最後まで見つからなかったが、紛失した本人も大騒ぎする事は無かった。確かに、自分としては「とても悔しいし残念な事」だったが、当時「キリスト教信者」と言う事もあって、「無くなったのは自分のせいで、悪いのは自分」と納得したのだ。もちろん、学校にも届は出さなかったし、当然、「犯人捜し」もしなかった…。

 本当を言うと、当時から「犯人」は分かっていた。もっとも、「紛れも無い証拠」をつかんだ訳でもないが、「犯行」には「動機」が必ずある。動機が思い当たるのは「ただ1人」だった。「犯人は楽器が盗まれたら困るだろう」と思ったから盗んだのだろう。楽器が欲しくて盗んだのではない…。それに、「内部の状況に詳しい者の犯行」と良く言われる様に、外から侵入した者が盗んだのなら、他の高そうな楽器も盗むはずだが、全くそんな気配は無かった。そもそも、楽器がどこに仕舞われているのかは外部からの侵入者には知る由もない…。
 もう「時効」なので頭文字だけ公表しよう。すでに「殺人罪」でも十分「時効」が成立する。今更、「ネットで晒し者にして仕返しをしよう」とは思っていない。トランペット担当の「U」だ。同学年だが、こっちはいつも先輩らとつるんでいたので(彼にはそう見えた)、彼とは余り親しくしていなかった。Uにも十分責任があると思うが、彼は極度の「アガリ症」で、皆でそれを馬鹿にしていた。トラッペットの独奏ではテンポはどんどん走るし、最後は息切れがしてまともな演奏をした事が無かった。女子の全員も含めて、合同練習をすると必ずUが失敗をして全員に笑われる…。Uの好きな女子はフルートの「Oさん」で、良く知っている娘。その娘の目の前で恥をかかされ続けたのだから、Uには大変な屈辱だったに違いない。顧問の先生までもが、度重なる中断でイライラして「舌打ち」をする始末。そんな長い間のストレスが溜まりに溜まって「犯行」を犯したのだと思う。証拠を示して「このやろう!」と半殺しにする手もあったが、やはりそれはしなかった…。

 結局、先輩から譲り受けた楽器が無くなったのは痛かったが、その頃、自分自身の興味は「音楽、楽器演奏」から「別の物」へと移っていたのが最大の理由だろう。しかし、Uを許していた訳では無い。彼への仕返しは、「捕られても平気な顔をする事」だった。

 しかし、Uが受けた「パワハラ、集団的いじめ」(Uの立場からして)は酷い物だったのかも知れない…。それにしても、「困ると思って必死で仕返しをした」が「一向に困っていない表情」を見たUは、いったい、どんな気持ちだったのだろう?トランペットは古井戸の中にでも投げ込まれたのだろうか?

 「どうすれば良かったのか?」の結論など出ていないが、人生の中で、最も反省させられた出来事であった。

 

 だから、悪いけど、「雷神」を聴いていると、頭から39“を経過するといつも必ず思い出すのは「失敗して項垂れる、Uの顔」なのだ…。

 

※このシリーズは基本的にシーケンシャル(番号順)に投稿していますが、今回は、例外的にシリーズNO.15より前にNO.16(この投稿)を公開しています。

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