今回のレビュー製品「Node 804」は、スウェーデンのPCパーツメーカー Fractal Designが開発したキューブ型のmicroATXケースである。
同社が取り扱うPCケースの製品ラインナップのうち、NodeシリーズはホームシアターPC、ファイルサーバー、ゲーミングステーションなど、マルチメディア向けの用途を想定して開発されている。
「Node 804」はNodeシリーズの最新モデルであり、シンプルで洗練されたデザインを引き継ぎつつも、既存製品には見られない独特な内部設計が特徴的なモデルになっている。
【外観】
Fractal DesignのPCケースといえば、シンプルで洗練されたデザインが特徴となっている。
その特徴を「Node 804」も受け継いでおり、余計な装飾がなく、平面を多用したシンプルなデザインからはモダンな印象を受ける。
■前面部
フロントパネルにはオープンベイがなく、一見すると平面的で無表情な印象を持つが、よく見ると緩やかにカーブしており、キューブ型のケースでありながらも柔らかさを感じさせるデザインになっている。
加えて、外装材にヘアライン加工が施された艶消しアルミニウムが使用されているため、上品な雰囲気がある。
窒息系ケースに見えるが、下部にはメッシュ状の通気口が設けられている。
■背面部
背面部からは、「Node 804」の特徴的な内部構造を見て取ることができる。
背面部の左右には冷却ファンが標準装備されており、中心にある縦方向の開口部にバックパネルを取り付ける。
一般的には、背面部の端に取り付けるバックパネルを、「Node 804」では中央に取り付けるようになっている。
その下に拡張スロットが位置していることから、ケース中央部にマザーボードを設置する構造になっていることが見て取ることができる。
左下の開口部は電源ユニットの搭載スペースになっている。
つまり、前面部から見ると、ケース中央から左側方向にマザーボードに搭載するパーツ、マザーボードの裏側にあるスペースに電源ユニットを搭載する構造になっているということである。
■側面部
サイドパネルはハンドスクリューで固定するタイプで、ケース後方にスライドさせれば取り外すことができる。
小さいながらも重みがあり、十分な剛性のあるパネルなので、歪みを心配することもないだろう。
右側面のフロントパネル部には、光学ドライブのスロット口、3.5mmヘッドフォン/マイク端子、電源スイッチ。USB 3.0×2が配置されている。
右側面を壁に接して配置すると、これらの機能が使えなくなるので、設置場所を検討する際には押さえておくべきポイントとなるだろう。
左側面はアクリルウィンドウからケース内部が見えるようになっている。
光物が好きなユーザーには良さそうである。
■天板部
天板部にはほぼ全面にメッシュ状の通気口が設けられている。
ケース内への塵の入り込みが気になるところだが、内部には防塵用のスポンジが敷き詰められている。
サイドパネル同様にハンドスクリューで固定するタイプで、ケース後方にスライドさせれば取り外すことができる。
■底面部
底面部には2箇所に防塵フィルタ付きの通気口が設けられている。
防塵フィルタはスライドさせることで取り外しが可能である。
左側の小さな通気口は電源ユニットの吸気口として用いるものである。
ケース外部からフレッシュな空気を取り入れることができるため、電源ユニットの冷却効果が期待されるとともに電源ユニット内への塵の入り込みが軽減されるだろう。
【内部構造】
ケース背面部の説明にて触れたが、「Node 804」ではマザーボードをケース中央部に搭載する独特な構造が採用されている。
Fractal Designは、この構造を「デュアルチャンバーケースレイアウト」と呼んでいる。
「デュアルチャンバー」とは「2つの部屋」を意味する。
つまり、ケース中央に位置するマザーボードの搭載面を境にして、ケースの左右にパーツの設置スペースを分割した構造になっているということである。
この「デュアルチャンバー」こそ「Node 804」の最大の特徴である。
パーツの設置スペースを2つの空間に分ける利点として、以下の3点を挙げることができる。
1.熱源を分割することで、ケース内部を効率的に冷却することができる。
2.パーツの組み込みが容易になる。
3.microATXのケースでありながら高い拡張性を確保することができる。
では、次にそれぞれの「部屋」の役割について触れてみる。
■左チャンバー
マザーボードを搭載するスペースで、CPUクーラー、グラフィックスカードなどの拡張カードを収納する。
発熱量の多いパーツが集約されるスペースなので、こちらを効率的に冷却するパーツレイアウトを考えたいところである。
■右チャンバー
電源とストレージを搭載するスペースである。
上部にストレージ、下部に電源ユニットを設置する。
ストレージは上部に集約されるので、電源ユニットの設置スペースをゆったりと取ることができる。
電源ケーブルを取り回しやくなる点もメリットの1つといえる。
【ドライブベイレイアウト】
「Node 804」はmicroATX対応のケースでありながら、3.5インチベイ×8、2.5インチベイ×2、2.5/3.5インチベイ×2の最大で合計12台のストレージを搭載することができる。
メインとなる搭載スペースは、右チャンバーの3.5インチベイである。
吊り下げ式のマウンタに専用ネジ2本で固定する。
2.5インチから3.5インチへ変換するマウンタを使えば、2.5インチストレージを搭載することもできる。
右チャンバーの底部には2.5インチ/3.5インチ共有の2台分の設置スペース、フロントパネルの裏側には2.5インチ2台分とスロットイン式のスリム光学ドライブの設置スペースがある。
狭いスペースを有効活用しようと熟慮された設計である。
【冷却機構】
標準搭載されているケースファンは、同社製の「Silent Series R2」シリーズの120mmサイズで、左チャンバーのフロント及びリアに1基ずつ、右チャンバーのリアに1基の合計3基である。
マニュアルによると、ケースファンは最大10基まで搭載することができる。
背面上部には、「H」「M」「L」の3段切り替えに対応したファンコントローラが搭載されている。
ファンコントローラ内部からは、3pin仕様のファンコネクタ3本と給電用のSATAケーブル1本が伸びており、ファンと電源に接続するようになっている。
一般的にmicroATXのマザーボードでは、十分な数の3pinコネクタは搭載されていないので、その点が考慮された設計がなされているということである。
これはありがたい仕様である。
フロントパネルを外すと、シャーシ前面にはメッシュ状の防塵フィルタが左右に1枚ずつ取り付けられている。
下部に引っ張ることで取り外せますので、ファンのメンテナンス時には役立つことだろう。
また、水冷ユニットの大型ラジエター(280mm又は240mmサイズ)を4箇所にも搭載できるようになっており、microATXケースとしては極めて自由度の高いエアフローレイアウトを構築することができる。
【組み込み】
以下のパーツを組み込んでみて感じた点をいくつか挙げてみる。
【CPU】Intel Core i7-4790K
【M/B】MSI Z97I GAMING AC
【CPUクーラー】ANTEC KUHLER-H2O-620
【MEM】CORSAIR CMY16GX3M2A2400C11R DDR3 2400MHz 8GB×2
【PSU】Thermaltake Evo Blue 750W
【SSD】Intel SSD 730 480GB
【HDD】HGST HDP725050GLA360 500GB、Seagate ST2000DM001 2TB
【GPU】ASUSTek GTX670-DC2OG-2GD5
【ODD】Pioneer BDR-TS04/WS
■フレームの剛性について
パーツの搭載箇所がケースの左右やフロント部など複数箇所に分かれているため、ケースを上下左右に転がすようにして組み込み作業を行った。
作業中は握りやすいフレームを掴んでケースを持ち上げていたが、フレームの剛性が保たれており、歪みを心配することはなかった。
■加工精度について
パネル部の接合部分やエッジ処理、ネジ穴などの加工精度を気にしながら組み込んだが、特に不満を感じる点はなかった。
■マザーボード
Mini-ITXサイズのマザーボードを使用したが、大型のCPUメンテナンスホールのおかげで、一部をケーブルホールとして利用することができた。
使用したマザーボード「MSI Z97I GAMING AC」では、24pin電源コネクタとSATAポートがケースの天板側に位置していたので、天板部にケースファンを設置すると、電源コネクタとファンが干渉してしまった。
天板部に水冷ラジエターを設置しようとすると、ファンの厚みが増すので上記に加えてメモリも干渉してしまいそうだ。
マザーボードのコネクタ配置によっては、天板部に水冷ラジエターを設置できない場合があることを考慮しておくと良いだろう。
■ケーブルレイアウト
「デュアルチャンバーケースレイアウト」により、パーツの搭載スペースが左右に分割されているため、ケーブルは取り回しやすかった。
電源ユニットのケーブルを結束するバンドが標準装備されている点からも、エアフローに配慮して設計されていることが分かる。
■エアフローについて
120mmの水冷ラジエターをリアに配置し、そこに設置されていたケースファンをフロント下部に移した。
背の低い水冷ウォーターブロックを使用したことで、フロントとリアに設置したケースファンの間にエアフローを妨げる支障物がなく、直線的なエアフローを確保でき、CPUとグラフィックスカードを効率的に冷却することができそうだ。
高熱源であるCPUとグラフィックスカードから分離されるため、電源ユニットとHDDも効率的に冷却されそうだ。パーツの寿命にも良い影響がでるのではないだろうか。
■グラフィックスカード
約272mm長のグラフィックスカードを搭載しましたが、フロント部にケースファンを取り付けても十分な離隔を確保することができた。
■光学ドライブ
付属の金属ブラケットを取り付けた後にフロントパネルの裏側にネジ4点で固定する。
Slimline SATAコネクタをSATAデータコネクタとSATA電源コネクタに変換するケーブルが必要となる。
縦方向に固定することになるので、ドライブの表裏を意識して取り付けてほしい。
【温度計測】
上記のパーツを組み込んだ後に各種パーツの温度測定を実施してみた。
結論としては、各パーツが十分に冷却されている結果を得ることができた。
効率的なエアフローが確保されているということだろう。
■CPU温度
アイドル時とロード時のCPU温度を Core Temp(ver 1.0 RC6)にて計測した。
ロード時の温度は、OCCT(ver 4.41)でCPU負荷テストを開始してから10分後の値を採用した。
ケースファンの回転速度は「M」に設定した。
アイドル時 32℃ (CPU占有率 ~5%)
ロード時 69℃ (CPU占有率 100%)
負荷テストを停止すると瞬時に30℃台後半まで温度が下がったことから、熱がケース内に留まることなく、効率的に排熱処理がなされているように感じた。
■ストレージ温度
アイドル時のHDDとSSDの温度を HWMonitor(ver 1.25)にて計測した。
Intel SSD 730 26℃
HGST HDP725050GLA360 29℃
Seagate ST2000DM001 29℃
■GPU温度
アイドル時とロード時のGPU温度を CPU-Z(ver 0.79)にて計測した。
ロード時の温度は、3DMarkのFire Strike(ver 1.1)実行時の値を採用した。
アイドル時 33℃ (GPU占有率 0%)
ロード時 70℃ (GPU占有率 99%)
【総評】
パーツを組み込んでみた感想や検証テストの結果を踏まえて、「Node 804」の性能や特徴をまとめてみた。
・「デュアルチャンバーケースレイアウト」により、ケース内部を効率的に冷却することができる。
・ゆったりとしたパーツレイアウトが可能である。
・大型の水冷ラジエター、10基のケースファンが搭載可能であり、極めて自由度の高いエアフローレイアウトを構築することができる。
・microATXケースと思えない程の高い拡張性はあるが、ケースサイズは大きめである。
・使用するマザーボードによっては、天板部に冷却ファンやラジエターを設置できない場合がある。
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購入金額
0円
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購入日
2014年09月10日
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購入場所
cybercatさん
2015/06/21
また3.5インチベイがたくさんあるのは実用的だと思います。
yachさん
2015/06/21
コメントありがとうございます。
まさにCarbide Air 540の小型版という感じです。
3.5インチベイの数を活かそうと思えば、MicroATXマザーでなければなりませんね。
ケースサイズと拡張性からすれば、このケースでminiITXマザーを使っても、中途半端になってしまう感じです。