本日は秋葉原でヘッドフォン・ポータブルオーディオの展示会である「ポタフェス」が開催されました。
気になっていた製品数種類の試聴が主目的でしたが、eイヤホンによる物販コーナーも用意されていて、毎回ここでそこそこ面白いお買い得品などが出て来ますので、これも楽しみにしていました。
ただ、今回は最も期待していたアクセサリー類(ケーブルやイヤーピース等)の特売はあまりなく、仕方ないので比較的手の届きやすいインナーイヤーフォンの中から、そのうち買おうと思っていたこのATH-CKR10のB級品を買ってきました。AKG N20とどちらを買うか悩んだのですが…。
デザインからすると一見リケーブル可能に見えるのですが、実はこれは着脱不能です。後継モデルとなるATH-CKR100ではA2DC端子によるリケーブルが可能となっていますが、この差には注意する必要があります。
再生周波数範囲は5~40,000Hzとなっていて、一応ハイレゾロゴも付いています。現行の第2世代CKRシリーズではCKR100/CKR90/CKR70がハイレゾ対応を明記していますが、第1世代ではこのCKR10のみがハイレゾ対応ということになります。
曖昧さを感じない
まだ鳴らし始めということで、FOSTEX HP-A8に接続してファーストインプレッションをまとめてみたいと思います。
本製品の最大の特徴となるのは“DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS”と呼ばれる、同一のドライバーを2基対抗配置して、片方を逆位相で駆動することにより振動板の駆動力を高めるという技術の採用です。
この効果が出ているのか、比較的大口径のダイナミックドライバーで低域の量を稼いだときにありがちが、籠りのような要素は殆どと言って良いほど感じられません。高域方向もさすがにSENNHEISER IE800までとは行かないものの、かなり緻密でハイハットの細かい動きまでもきちんと再生して見せます。緻密さで言えば、マルチBAドライバー搭載のUltimateEars UE900と比べてもそれほど劣っているとは思えないほどで、ダイナミックドライバー搭載モデルとしては極めて高い水準と言って良いでしょう。
試聴ソースはいつも通りのものが中心ですが、少し違う傾向のものも入れてみました。
イヤーピースについては当初純正のSサイズを装着していたのですが、どうも耳に上手くフィットしない(装着する度に位置が若干変わっている印象を受ける)ためSpinFitに変更したところ装着感がしっくりきましたので、これで試聴してみます。あまりハウジング形状がSHURE掛けに向いているように見えないため、順方向での装着のみとしました。
上記のものがいつも通りというところですが、その他に「Nothing Like The Sun / Sting」や「Stranger To Stranger / Paul Simon」のLP盤から起こした24bit/88.2KHzのWAVなども加えています。
色々聴いていくと、BAに匹敵するほどの緻密な音ではあっても、鳴り方はあくまでダイナミック型であることが判ります。例えば「The Little Things / TOTO」などを聴くと、冒頭の広がっていくような空間が、BAのように際限なく広がるのではなく、あくまでイヤフォンを装着している空間の中できっちりと広がって終わるという印象なのです。
David Garrettのヴァイオリンも細かいところまできちんと拾っているのですが、鳴らし始めということもありやや硬さを伴った響きとなります。これは使い込んでいく内に硬さは取れていくのかも知れませんが。分解能は高く、質感も悪くないので硬さが多少落ち着けばかなり良質な鳴り方に変化してくれそうです。
「Fragile / Sting」の低域の沈み込みは過不足なくという程度でしょうか。あまり大げさでは無いものの、深さは充分に感じられます。特定の帯域での強調感をあまり感じない音のため、あまり苦手なソースはないと思うのですが、逆にこれといった得意分野というものも無いような気がします。平均的に質の高い音を出しているという印象です。「I.G.Y. / Donald Fagen」のような、モニターライクなモデルが得意とするソースではかなりの好印象でした。
ケーブルや装着感など、改善するべき点も多い
先に書いた通り、純正のイヤーピースでの耳へのフィット感が悪いという辺りは大きな弱点でしょう。SpinFitで対応出来たため、個人的には大きな問題ではありませんが…。
比較的大型のドライバーを2基配置しているという構造上、ハウジングが大型化していることがこの装着感の悪さに繋がっている部分はあるでしょう。ただ、SpinFitで改善するということは、イヤーピースに少し工夫があれば済む話ですからね。
一方、リケーブル対応ではないためケーブルについては少し深刻です。まずこのケーブルはタッチノイズがかなり盛大で、外出時にはかなり不快感を伴いそうだという問題があります。皮膜の素材が変更されるだけでかなり改善されるはずであり、この辺りは当時のフラッグシップモデルとしては何ともお粗末です。
そして前述の通りハウジングが大型で重量もあることから、どうしてもケーブルの断線が怖いという部分もあります。音質的にはかなり高評価ですが、耐久性を考えると気軽には外出時に連れ出しにくいという印象です。
さらにこれは長所でもあるのですが、結構能率が高めであり、ホワイトノイズにはかなりシビアです。他の製品では聞こえないようなノイズが大げさに聞こえる傾向がありますので、アンプやプレイヤーにはそれ相応の品質が求められるでしょう。
現在は2万円前後で販売されるところまで価格が下がっている製品ですので、音質だけで判断すればかなりのお買い得というべき水準となっています。しかし総合的な使い勝手を加味したときには、価格相応からややお買い得という辺りに落ち着くように思います。
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購入金額
15,000円
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購入日
2016年12月17日
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購入場所
eイヤホン(ポタフェス会場)
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