m-flo。日本に生まれ、日本で暮らしながら、他国に源を持つメンバーやハーフもメンバーに持つトリオ(本作品リリース時点。のちに1名脱退し、現在2人組)。メンバー全員が少なくとも英語と日本語のバイリンガル以上。ラッパーのVERBAL、DJ ☆Taku (Takahashi)、ヴォーカリストLISA。このインターナショナルな感性と温度感のないCOOLなノリが独特なグルーヴ。
インディーズから火がつき、メジャーデビューした彼らはアルバムごとにコンセプトを立てて製作してきた。1stの“Planet Shining”は「2012年、Global Astro Liner号の宇宙旅行」というものに対して本作は「2012年のバーチャル万国博覧会」という設定。そう、「2012年」。彼らがこれらの作品をものしたのは21世紀初頭(1stが2000年、2ndが2001年)。約10年後を俯瞰したストーリー仕立て。Interludeでは万博の注意事項が流れたり、現地レポートが行われたりするのだが、「IEEE回線を通じて囚人が侵入した」などニヤリとできるボイスも入る(ちなみにIEEEをアイ・トリプル・イーといわず、アイ・イー・イー・イーといっているのはちょっとツッ込めるw)。
そんな古典SFを読むような「過去から見た未来」のフレーバーをまといつつ、その2012年が現実になった今聴いても古くない曲の仕立てがSuper COOL!
「prism」。☆Takuの織り成すピアノと生ギの流れるようなサンプルループが美しいイントロに、前のめり系のリズムがイン。温度感がないLISAのヴォーカルの軽やかさとVERBALの熱いRAPの粘りの対比がよい。
「What It Is」はRAP JAZZ?という感じの雰囲気のCOOL TUNE。VERBALフィーチャリングのサンプルループなのだが、LISAの担当部分はフルアコギターとヴィブラフォン、フルートとの絡みで都会的な薫り。
さらにJAZZYな「magenta rain feat. Umjanna」は「m-flo第4のメンバー」とも言われるギタリスト石成正人が率いるユニットumjanna!フィーチャリング。弱音器をつけたペットが物悲しいイントロから、それに軽やかにシャッフル気味にLISAが優しく絡む甘いメロディが続く。所々に挟まれるVERBALの合いの手やRAPもゆったりととていて、☆Takuのサウンドメイキングも二人のスキマに割り込むのではなく、優しく置かれたシカケ、という感じ。
劇仕立てのInterludeに挟まれているので、「曲に没入して聴く」というよりは「世界を共有する」作品。
今聴いてまったく古くないのはまさに彼らは10年先を行っていたのだろう。しかし渾然一体とした3人の魅力はわずか2作目の本作で終わる。LISAがソロ活動を重視するため脱退したからだ。「tripod」=三脚に自らをなぞらえた彼ら、その出自も志向性も微妙に異なる彼らが互いに3方から支えあい、高みを目指すようなm-floの立ち位置が絶妙だったのだけれど...
その奇跡のようなバランスを「作成時に設定されたより未来の」現時点から振り返りながら、久しぶりに聞いた作品です。【収録曲】
1. 正門 (Interlude)
2. prism
3. 東門 (Interlude)
4. EXPO EXPO feat. Towa Tei, Bahamadia & Chops
5. What It Is
6. orbit-3
7. 南門 (Interlude)
8. Dispatch feat. Dev Large, Nipps & Vincent Galluo
9. magenta rain feat. Umjanna
10. 中央タワー (Interlude)
11. come again
12. 西門 (Interlude)
13. Yours only,
14. How You Like Me Now?
15. アリガトウ (Interlude)
16. The Bandwagon
「prism」
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購入金額
3,000円
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購入日
2001年頃
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購入場所
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