時は2012年12月中旬、秋葉原は「2012 AKIBA PC-DIY EXPO 冬の陣」で沸いていた。
cybercatもそこに参加したわけだが、
15日17:30にイベントが初日終了したあと(おものだちのmakibisiさんの買い物にお付き合いしたあと)もうひとつイベントが控えていた。
「イヤホン組立体験@ヨドバシマルチメディアAkiba店」
超高級オーディオメーカー「final audio design(ファイナルオーディオデザイン)」によるイヤホン組立教室。
フルオーダーオーディオメーカーとして超弩級のアナログプレイヤーや芸術的デザインのスピーカーをリリースしていた同社がイヤホン分野に入ってきたのはODMメーカーとして。単なる製造請負のOEMと違って、設計まで請け負うODMメーカーとされたのは同社の高い設計能力が評価されたのだろうが、そこで得たノウハウを生かして自らも2009年から自社ブランドでのイヤホン販売を開始した。
こだわりの同社らしく、その価格はクロム銅削りだしのフラッグシップイヤホンでは20万円超の超絶価格。一番の廉価版でも約2万円となかなか手が出るものではなかった(現在は約4千円のモデルもある)。
ただ、マニアックな同社は、単に「売る」だけではなく、マニアの醸成で市場を広げようとしたのか、何度か「イヤホン組立体験教室」なるものをいくつかの会場で実施してきた。
この試みは現在も続いていているが、それは「Adagio III」や「Adagio V」など、同社のラインアップにもある躯体を利用したもの。組み合わされるのはBA(バランスド・アーマチュア型)ドライバー。「Adagio」シリーズには市販品ではダイナミック型ドライバーが組み合わされるので、これはこれでレアなのだが、現在では残念ながら終了してしまった異なる組み合わせの教材もあった。
それが2013年頭の大阪での教室を最後に姿を消したダイナミック型ドライバー搭載タイプ。躯体はODM案件用の型から起こしたオリジナル。これを教材にイヤホンの自作(というかチューニング)を学ぼうという教室。
まず人数制限入れ替え制なので予約券をゲットした後、会場となったヨドバシマルチメディアAkiba店で自作キットを購入する。価格は6980円。これでイヤホン組み立てに必要なすべてが入っており、組み立ておよびサウンドチューニングの指導が受けられる。
そして予約した時間に会場に行くと、10人程度の受講生と指導いただく先生およびアシスタントのおねぇ様が。
部品はこんな感じ。
そして今回のキモ、チューニング用パーツ。
一番高度であろうはんだ付けは終了しているので、基本組み立てに道具はほとんどいらない(爪楊枝くらい/チューニングにはカッターナイフや針が必要)。まず、ハウジングに通されてケーブルを団子結びにしたうえはんだ付けされているダイナミックドライバーにリング状のスポンジを張り付ける。
次にすでにケーブルに通されているハウジングのケーブル穴をふさぐ金具をねじ込む。
次にハウジングにユニットを収めて...
アウターハウジングをねじ込んで...
口に吸音材を詰めて...
お尻にアルミテープを貼って...
イヤーチップをつけて、で・き・あ・が・り。
....で。
ここからが真骨頂。
まず素の音を聴かされる。なんぢゃこりゃ、という感じの下がもっこりと盛り上がった(ブーミー、というのではなく)抜けていない音。
でも、これは計算の上。もう一度ユニットをばらして、最初の方で貼ったリング状のスポンジに切れ目を入れる。
これによってモワっとした低音が抜けてくる。ただあまり切れ込みを入れすぎると軽くなってしまうとのこと。高音の調整はアウターハウジングに詰めたスポンジ。これを減らすと高音が通るようになる。最後の調整はお尻に貼ったアルミテープ。これにごくごく小さな穴をあけるとベンド穴となって低音が出るようになる(穴が大きすぎると損なわれるが)。
こうやって育てていくイヤホン。
cybercatはベンド穴はあけず、とりあえず高音のチューニングをエージング後にしようとその場ではそのままで帰った。
現在1年と少し経ったが...まだ決めきれないw
現在はリングスポンジは写真のまま最小限で、詰めスポンジちょいへらしの状態で、穴をあけようかどうしようかというところ。実は現時点でも低音は十分ある。ふくよかな低音はMISIA
のバラードのピアノの低音弦が心地よいし、高域が相対的に薄いががっちりとした低音の基礎の上に立つヴォーカルやサックスのバランスは良い。低音命!のイヤホン
よりも音が厚いのでむしろ量感がある。
また金属ボディの味なのか、スピーディでトリッキーなフュージョン
もスリリング!
ベースラインがちょい過剰気味なのも、もともとドラマーとしてベーシストのプレイをよく聴いていた自分には違和感ないし。ほんとは穴の大きさが決まったら最終仕様にできるようにテープより見栄えのよいプレートもいただいているのだが...う~ん、も一つ買っとくんだったw
現在行われているBAドライバーのものも異なるチューニング方法を採るようなので今度やってみたいなぁ...と思っているうちに転勤がorz
無理にでもいつか行ってヤル、と思わせる面白い体験だった。
☆がいっこ少ないのは、(チューニングのために分解式なので仕方ないともいえるが)各所のねじが緩みやすいこと。音の問題では、ありません。
【仕様】
ボディ:ステンレス削り出し
ドライバー:9mmダイナミック型ドライバーユニット
イヤホン組立体験@ヨドバシマルチメディアAkiba店 開催のお知らせ
オーディオなんちゃってマニア道
あまり際立ってはいないが平均点。
ダイナミック1発だからか、自分の工作の成果はわからないが、上は特に伸びている、とか、特色がある、とか言うわけではなく、いたって普通。
ピラミッド型の下がきっちり支える芯のある中音域。
人声も基音中心のしっかりと芯がある音。弦楽器もボディ鳴りが伴う下がある音で気持ち良い。
金属ボディらしいガッツある低音。
スピード感があってベースの速いラインや打ち込みのリズムにきちんとついてくる。改めて聴くとベースの音、ホントに良い(←過剰だけれど)。
広い音場を持つが、それは各所のネジが締まっていてこそ。
きちんと各所がしまっていると広い音場としっかりした定位。ただ、ユニットに入るケーブルの部分を目隠しする部品が緩みやすく、緩むと途端にスカスカのボヤッとした音になる。
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購入金額
6,980円
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購入日
2012年12月15日
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購入場所
ヨドバシマルチメディアAkiba店
がじおさん
2014/03/25
あんなちょっとの切り込み入れるだけで変わってくるとは。(^^
cybercatさん
2014/03/25
メーカーの技術の粋を凝らした出来合いものはそれはそれでコストパフォーマンスは高くて良いのですが、いじりがいがある、というのは楽器に近いものがありますね。
hachiさん
2014/04/03
マニアの憧れですよね?
絶対に「素晴らしい体験」だと思います。
cybercatさん
2014/04/03
>絶対に「素晴らしい体験」だと思います。
ベント穴やフィルターの多少で音が変わるというのはまさに「チューニング」で、(メーカーが設定した幅の中で=お釈迦様の掌の上?遊ばせていただいただけでしたが)大変得がたい経験でした。
ザクザクさん
2014/04/08
cybercatさん
2014/04/08
>Final audio designのLAB Ⅰ
あの3Dプリンターで作った...というヤツですね。
試聴機あるので聴いてみたいと思いつつ、聴くとドツボにはまりそうで...(^^ゞ
>いつかは私も体験してみたいです。
是非体験してみてくださいね!