レビューメディア「ジグソー」

歳を経てたどり着いた境地

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。若い頃はパワーとエネルギーでおした人々も歳を経ると変わってきます。若い頃の影を追いかけて無様な姿をさらす人もいれば、老獪にも「抜く」ことを覚えてしまう人もいます。一般人なら知らず、これがアーティストであれば人々に感動を与えることはできません。ハードロック、というパワーとエネルギーが必要な分野で、それを超えた境地にたどり着いたプレーヤーがいます。そんなグループのライヴパフォーノンスをご紹介します。

NIGHT RANGER。1980年代に活躍したハードロックバンド。毛色の違う二人のギターヒーローとドラマーとベーシストのツインボーカルを特徴とした彼等は、1980年代前半に多くのヒット曲を飛ばした。この頃のメンバーは紅いストラト(Stratocaster)でアーム奏法を駆使したギタリストBrad Gillisとゴールドトップのレスポール(Les Paul)を多用した速弾きとライトハンド奏法のJeff Watson、ドラムスと主にバラード系ヴォーカル担当のKelly Keagy、ベーシストでセンタープレイヤー、ハードな曲のヴォーカリストJack BladesにキーボーディストのAlan "Fitz" Gerald。

ツインギターのハーモニーと味わいが違う二人のヴォーカリスト。キャッチーな曲にギターヒーロー二人のテクニック、平均点以上のルックスで結構売れた。しかし、ロック路線が強い1stから火がついた日本と異なり、本国ではバラードの比重が高い2nd以降で「売れた」のが彼らの悲劇。本当は1st路線のハードロックをやりたかったのが、制作側から「売れる」バラードが要求され、「バラードバンド」となってしまう。そういう状況でバンドは空中分解。何度かメンバーを変え、脱退、出戻りを繰り返して表舞台から去ってしまう。

そんな彼らのアルバムを手に取ったのは実に偶然。他アーティストの新譜を探して購入店の「M~N」の項をあさっていて発見。

「ナイト・レンジャー?懐かしいな、まだやってんのか?」

ひっくり返すとどうもUnplugged系のライヴのよう。近頃追ってなかったので最近の曲ばかりだと識らないからなぁ、と曲をあらためると「Don’t Tell Me You Love Me」や「Sister Christian」といった初期の識った曲もある。

『あの』「Don’t Tell Me You Love Me」がどうアコースティックアレンジされているのか気になって購入。

彼等は現在、5人組でオリジナルメンバーとしてはドラマーのKellyとベーシストのJackの両ヴォーカリストと、ギタリストのひとりBradが残っている(Jackは正確には出戻り)。残念ながら、ギターヒーローのひとりJeffは去り、5年ほど前からJoel Hoekstraというエイトフィンガー奏法の妙手に交替してるようだ。キーボーディストは2013年末Wikiにもまだ記載されていない最新メンバーでEric Levy。

さて...どのような出来?

3rdアルバムからの曲「This Boy Needs To Rock」で幕を開ける。ちょっとカントリーロック調にややスローにして、なんか初期のDoobies

の様な薫りもあるアーシィなアレンジ。元曲のポップロックともとれる、キャッチーで疾走感あるアレンジと比べるとオトナの味。四半世紀以上の時が彼等の上に流れたのが判る、でもイイ成熟の仕方。新メンバーEricのブルージィでジャジィなピアノソロがイケてる!

そのEricのクラシカルなピアノソロからはじまるのは、ある意味彼等にとっての問題作「Sentimental Street」。元曲は「センチメンタル」なロッカバラードで、2ndアルバム以降比重高くなってきたバラード系楽曲の一つの到達点。ただこのテの曲が売れすぎたのでバラードばかり制作側から求められ、第一期は解散に至った。しかし、歳を経た彼等は見事に昇華。ヴォーカルはバラードではメインを務めるドラムスのKelly。ドラムセットを90度頭を振り、左側面を観客側に向けて、昔ながらのスタンドマイクで歌う姿は懐かしい。この曲ではJoelは12弦ギターを使い、きちんと?“24 Strings”となっている(12弦ギターに6弦ギター2本)。

そしてこのCDのハイライト、「Don’t Tell Me You Love Me」!彼等の出世作で最もロック色が強かったデビューアルバム“Dawn Patrol”の1曲目。彼等の特徴であるツインギターがフィーチャリングされたハードな曲だが、なんと生ギターなのにほぼオリジナルに忠実なアレンジ。さすがにBradのソロの最後のアーミングこそないが、オリジナルメンバーJeffのソロをJoelはほぼ完コピ!Kellyはブラシを振り回してるし、パッド系のシンセの音だったのがピアノの音に変えられているが、まさに「あの曲」で、メチャメチャカッコイイ。この曲ではベースにサポートが入る(Will Evankovich)。
Night Rangerが生ギ、というだけで「オッ」となりますなw
Night Rangerが生ギ、というだけで「オッ」となりますなw
機材に頼らず、音色に頼らず、自分たちの出せる「音」で「音楽する」。彼等の過ごした四半世紀が音に現れている感じ。コレが貫禄というものか?

いや~これは「あたり」だった!衝動買いの勝利!
...でもDVD添付バージョンを買えば良かったな~ってか?ww

【収録曲】
1. This Boy Needs To Rock
2. When You Close Your Eyes
3. Sing Me Away
4. Growin' Up In California
5. The Secret Of My Success
6. Sentimental Street
7. Four In The Morning
8. Let Him Run / Goodbye
9. Forever All Over Again
10. Don’t Tell Me You Love Me
11. Sister Christian
12. (You Can Still) Rock In America
13. Boys Of Summer (Bonus Track)
14. Touch of Madness (Bonus Track)

「24 Strings and a Drummer」のほぼフルセット
※57:45~の「Don’t Tell Me You Love Me」必聴!


1985年当時の「Don’t Tell Me You Love Me」

  • 購入金額

    2,900円

  • 購入日

    2013年12月07日

  • 購入場所

    ヨドバシカメラ

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (6)

  • cybercatさん

    2013/12/13

    ラブリエさん、ようこそ!
    >これはポチろう。
    昨日この記事書きながら、そうなるかもと予想してましたw
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