2013年10月時点では未発表の新作だが、実際には店頭で試聴もできるし、オーダーもできる。
Tune5には、使用するBAドライバの違いで、バリエーションが2種類ある。
BAドライバーは、両方ともSONION AcuPass 1723。バリエーションは、1723WT03と1723WT03/9の違い。
違いはベントの有無で、1723WT03/9は低音が多少盛られている。
1723WT03使用機(Tune5 CL)の方が、フラット傾向だが、それでも低音は十分に感じられ、物足りなさは無い。
自分は、Tune5 CLを購入した。1723WT03/9使用機の名称は不明。
2種類とも試聴は可能で、Tune5 CLよりも1723WT03/9使用機の方が、確かに低音が多く感じられた。
説明では、試聴機で聴くよりも耳に合せた実際の製品の方が、低音が増えるとのことだったが、私の場合は、製品でも試聴機と同じくらいだった。
シェルの造りは、見た目の質感はがっかりするくらい。これは、工業製品であるユニバーサル機に慣れていたせいで、カスタムIEMの異様な形状に驚いたのが原因の大半。
一方で、フィットは完璧で、最初から全く違和感がなく、遮音性も素晴らしい。カナル部は、長い。奥深くまで入れることになるので、入れるときや外すときは多少のコツがいるが、慣れの問題。
現時点で約一か月使用しており、最長では5時間程度連続で使用したこともあるが、装着性で不具合を感じたことは無い。
ドライバーは、AcuPassそのもののクロスオーバーで使用されていて、後から手が入っていない。また、Tune5 CLでは、音響ダンパーも使用されていない。インピーダンスが75Ωと高めだが、ドライバーの感度が高いせいかiPod等でも十分に聴くことができる。ケーブルとの接続ピンは、ノーマルでは特殊なもの(UEやWestone等とは互換性が無いという意味で)が使用されているが、MMCXコネクタも追加料金で選択できる。ノーマルピンは、2.54mmピッチのコネクタピンから切り出せば利用可能で、比較的簡単にリケーブルもできる。
音質は、解像度が高くクリアで、高音部が非常に気持ちよく伸びる。全体的に明るい印象。高音部の刺さりは無い。
低音は、そこそこあって不足は感じない。締りがあって気持ちが良い。非常に低い音は、耳よりもずっと下方で鳴っているように聞こえるが、それ以外の音は、少し高めに位置する。女性のボーカルは、目線の少し上くらい。
音場の広さは普通。左右、上下はアンプとの組み合わせでもそれほど変わらないが、前後の奥行きはアンプとの相性で変わるみたいだ。
インピーダンスが高いので、無音時のノイズとは無縁かと期待していたが、DAPやアンプとの組み合わせで、盛大にノイズが聴こえる場合がある。普段使用するDAPやアンプを持参して試聴する必要があると思う。
Tune5を聴いた直後に、UEのUE900を聴くと、決定的に高音の伸びが足り無いのを感じるが、一つ一つの音の太さや立体感は、UE900の方がある。Tune5 CLに戻すと、音楽がシンプルに感じる。
使い始めた頃は、高音部がきつく感じたり、全体的に角があるような印象があったが、50時間を過ぎた辺りで激変して驚いた。
その後の変化は緩やかで、角が無く聴き疲れのしない音になっている。
ユニバーサル機を使っていて、耳の中に異物感を感じたり、使うたびに聞こえ方が微妙に違ったりするので、イヤーチップをあれこれ試したり試行錯誤を繰り返していたが、カスタムIEMでは、ポンと入れれば毎回期待通りの音が聴こえ、しかも遮音性が格段に良くなる。また、風のある日に風切り音が全くしないこともうれしい発見だった。毎日の通勤が楽しくて仕方がない。
2013.11.24 追記
購入から2か月経過した。その間に、手持ちのイヤホンとの違いが分かってきたので、追記する。
Etymotic Research ER-4S
高音の伸びと音の分離の良さは凄いと思う。また遮音性も、Tune5よりも良いかもしれない。しかし、角のある音は、聴き疲れするし、「最低限は出ている」としばしば評される低音は、私にとっては全く物足りない。しかも三段キノコは、1時間くらいで痛みが出てくる。Tune5は、高音の伸びは同等に感じる。分離は少し甘めだが、エッジが柔らかく、聴き疲れすることがない。また、低音は、私にとって量は最低限は出ているし、それも相当低いところまで出ているのが判る。
Shure SE-215
Null audioのLuneケーブルと組み合わせて使用している。Tune5と比べると、低音過多。しかも締まりがなく、ぼわついた感じ。中高音は、分離が悪い。
Shure SE-425
全体的に線が細くエッジがきつい。低音は少なすぎる。ボーカル部分から上は、Tune5と似ているかもしれないが、高音部の伸びは、明らかに劣る。同じ2ドライバー構成とは思えないくらい、窮屈な鳴り方をする。
Shure SE-535
低音の量は、同じくらいか少しTune5の方が多く感じる。中高音の分離や伸びは不満を感じない。私としては、非常に好みの音なので食いつきは良いが、聴いていると飽きる。どこか一本調子と言うか、棒読みのナレーションを聞いているみたいな感覚になる。
Tune5では、音楽として聴いていて楽しい。
Klipsch Image X10
低音の量は、Tune5よりも多いが、私には多すぎる。30Ω程度のアッテネーターを入れるとちょうど良くなるが、中高音のエッジがきついと感じることが多い。高音の伸びは、Tune5よりも劣る。
UE Triple Fi10
低音の量が多い。高音も結構伸びるように感じる。何と言っても音場が広いのが特徴で、その違いが大きい。ボーカルが引っ込んだように聞こえるが、ケーブルを変えると結構補正が効く。その状態だと、AcuPass 1723WT03/9を使用したTune5の方が、似ていると思った。Tune5の方が、全体的に解像度が高く感じる。TF10は、音が重く感じる反面、Tune5は軽くさわやか。曲調で使い分けられそう。
UE UE900
低音の量は、少し多いが、高音が伸びず、もの足りなさを感じる。ボーカルやその下、低音までの領域の音の質は、UE900の方が分離も悪くなく、かつ音に立体感がある。高音部の足りなさを気にしないような曲の場合は、UE900の方が好ましいと思うことがある。
Creative Aurvana Air
Tune5 CLの音質は、これが一番似ているかもしれない。これをもう少し分離を良くして、耳穴の奥まで突っ込んで聴いたらTune5 CLになりそう。ただ、他のカナル型などに比べて遮音性や音漏れには弱く、(耳かけフックが付いているので多少は良いのだろうが)、最適な装着位置から少しでもずれると音が激変するので、屋外に持ち出す気にならない。
ともあれ、Tune5 CLは大変に気に入った。ただ、理想を言えば、UE900の低音~中音部にTune5の中音から高音部が重なったらいいだろうとも思う。
最新のBAドライバーを使いこなして、魅力的な製品に仕上げてしまうearmoさんの対応力には感心する。一方で、ヨーロッパではAcuPassドライバーに低域ドライバーを組み合わせたモデルもいくつかあるようだ。ここはぜひearmoさんにも、得意のCIドライバーとの組み合わせなどで、3ドライバーや4ドライバー版を開発してもらえないだろうかと期待してしまう。
カスタムIEMを使用して気がついたことは、使い続けているとボリュームの設定がどんどん下がっていくこと。最近、街中でIEMを外すと、街の騒音がなんてうるさいのだろうと感じるようになってしまった。少ない音量で十分に楽しめると言うことだから、聴覚には良いことなのだろう。
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購入金額
51,450円
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購入日
2013年09月21日
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購入場所
ハーモニー補聴器
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