サキソフォニストMALTA。最近はジャズフィールドでの活躍が多く、故Lionel Hamptonの楽団のバンマスをやった若き日に戻ったような形だが、日本でのソロプレイヤーとしての活動初期
は明解なメロディとわかりやすい構成、クリアな音色のライトフュージョンの第一人者としてTV番組のBGMとしてよく使われた。
彼の作品はジャズ系のミュージシャンの作品としては珍しく、音色的に当時最先端のものも受け入れてきた。ドラムの音もその傾向が強く、ナチュラルな生音ではなく録音のトレンドを取り入れたものだった。
本作“Summer Dreamin'”は彼の3作目で、ドラマーとしては複数のスタジオミュージシャンが参加するが、プレイ、というより音作りの差が大きくて誰のドラムかすぐにわかるという造り。ドラマーに注目?して聴くとおもしろい仕上がりになっている。
静かな出だしのわりに、岡沢章のパターンにスラップを取り入れたベースとともに渡嘉敷祐一のドラムスがリズムインすると一気にポップになる曲。渡嘉敷の音は、メロウな他の参加2曲(「All Through The Night」と「A Letter From September」)に比べるとかなり「造って」あってデッドにミュートされたスネアに音響効果でふくらみをつけたものだが、渡嘉敷のタイトで正確なプレイはよくわかる。
「Sea Express」は今でもよくTVのBGMで聴く明るくキャッチーでポップな曲。この作品は少し前までのMISIAのツアーサポートや初期の山下達郎のレコーディングで有名な青山純がドラマー。もともと彼はドイツSONORドラムの使い手として有名で、その重厚で芯があるヘヴィな音はPRISM
のころが一番顕著。このノリの良い曲でもそれは健在?で、ジャズ系の作品としてはゲートリバーブを強めにかけた低めの音のスネアがトレンディな感じだ。青山は7曲目の「Fancy Walkin'」でも叩いているが、それを確認するためにクレジットを見なくても判る共通の音作り。
MALTAお得意の流れるようなメロディラインとプレイで彩られたキャッチーな「Have A Nice Day」は、青山がいたPRISMのオリジナルメンバー
鈴木“リカ”徹が叩くが音的には最もオーソドックスでややミュートされた音。軽やかな彼のプレイは主役=MALTAを邪魔せず、確かなテクニックで支える。これはもう一曲の参加である「Ocean Side」ともどもコンビを組む名サポートベーシストGregg Leeとの相乗効果かも知れないが。
当時流行りだったSimmonsで河野道夫が演奏する派手な音響効果の「Super Wave」の様に各曲でとくにリズム系の音作りが差が大きく一曲一曲の印象がかなり違う。
主役たるMALTAのフレーズと音はいわゆる「MALTA節」でどんな曲でもハッピーでキャッチーなんだけれど、あえてそれだから?バックミュージシャンの音作りの傾向を合わせるのでなく、特徴を出したのだろうか。
曲ではなく、音作りでバラエティがある、というおもしろい作品です。【収録曲】
1. Summer Dreamin'
2. Morning Flight
3. Sea Express
4. Ocean Side
5. Super Wave
6. All Through The Night
7. Fancy Walkin'
8. Sunshine Street
9. Have A Nice Day
10. A Letter From September
11. Summer Dreamin' II
「Fancy Walkin'」(動画最初のアナウンスはyoutubeチャンネル作成者による)
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購入金額
3,200円
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購入日
1985年頃
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購入場所
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