加羽沢美濃。最近やや発表のペースが落ちているため作品の露出度が低いのでピアノを弾く姿をあまり見ないし、その機知にとんだ受け答えと広い知識を生かした教育テレビの「ららら♪クラシック」の司会を務める才媛としての印象の方がむしろ強いかもしれないが、もともとポップな感覚と正統派のクラシックも弾きこなすテクニックのバランスを持ったピアニスト。
そんな彼女は2005年までその年のヒット曲をピアノアレンジして発表していた。それが“ピアノ・ピュア ~ メモリー・オブ・○○”シリーズ(○○には年号が入る)。
本作はその記念すべき1作目。男女問わず、ジャンルもアイドル系からロックバンド、テクノ系から企画バンドまでひろく18曲が集められた。ピアノで流行歌を演奏する、というと百貨店のBGMに流れているような、単に耳障りの良い音楽を想像するが、彼女の感性とテクニックで、ハッと惹きつけられる曲もある。
「セロリ」。山崎まさよしの筆になるSMAPの曲はどこかコミカルで、少し悲しいようなメロディライン。美濃は強弱をつけた、でもダンパーを踏んだ流れるような演奏で聴かせる。時折挟まれる左手でのブルージィな伴奏がイイナ。
電気グルーヴの「Shangri-La」は本人曰く「攻撃的なアレンジ」(ライナーノートから)で、ダイナミックなテンションがバリバリ効いた音使いの和音で始まり、左手のベースラインがグイグイ引っ張るグルーヴィな仕上がり。元曲のテクノタッチの淡々としたグルーヴに対して、左手のラインが1小節の中でも緩急と強弱をつけた弾き方で、ソロピアノならでは!の醍醐味が味わえる。
「1/2」は川本真琴
の元気いっぱいのストレートな歌い方が胸に響くギター曲が一変、滝が流れ落ちるような速弾きのイントロで始まった後は、フリーリズムでポツポツと「語る」。♪あたしたちってどうして生まれたの/半分だよね/一人で考えてもみるけど/やっぱへたっぴなのさ♪と歌われるどーにもならない青春の哀しみ。それが後半になるにしたがって、タッチはダイナミックに、感情をぶつけて!
まだダウンロード販売はおろか、インターネット試聴環境ですら整わない時代の「流行歌」。街に流れるこれらの曲は時代と強く結びついている。
美濃の演奏に浸ると、元曲を知らない曲でも「あの頃」の風景が蘇ります。【収録曲】()内オリジナルアーティスト
1. CAN YOU CELEBRATE? (安室奈美恵)
2. セロリ (SMAP)
3. 渚にまつわるエトセトラ (PUFFY)
4. ESCAPE (MOON CHILD)
5. ひだまりの詩 (La Couple)
6. やさしい気持ち (CHARA)
7. Hate tell a lie (華原朋美)
8. PRIDE (今井美紀)
9. Shangri-La (電気グルーヴ)
10. サボテンの花 (チューリップ)
11. 砂の果実 (中谷美紀 with 坂本龍一)
12. 1/2 (川本真琴)
13. Alone (岡本真夜)
14. 白い雲のように (猿岩石)
15. For the moment (Every Little Thing)
16. 明日、春が来たら (松たか子)
17. Glass (河村隆一)
18. Everything(It's you) (MR.CHILDREN)
「セロリ」試聴サイト
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購入金額
2,854円
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購入日
1998年頃
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購入場所
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