久保田利伸。このアーティストが日本の音楽界に与えた影響は大きい。1980年代半ばから活動しているが、当時市民権を得ていなかったブラックミュージックをJ-POPの本流のひとつまで引き寄せた。自ら歌うだけではなく、アイドル系を含め多くの楽曲提供をし、「クロっぽい薫りのJ-POP」という1ジャンルを築いた。
彼自身の1stアルバム
はその路線を推し進めたもので、今の目から見ると「ブラックミュージック風味のJ-POP」という程度のクロさだったが、それでも十分クロかった。彼がいなくては平井堅もスガシカオもCHEMISTRYも宇多田ヒカルもいかなった/もしくは/その浸透に大きな困難にあたっただろう。
そのKUBOTAはこの2作目のアルバムにしてさらなるチャレンジに出る。このアルバムを出す前にリリースしたシングルは3枚(「失意のダウンタウン」「TIMEシャワーに射たれて・・・」「GODDESS ~新しい女神~」)、いずれもシングル売り上げTOP100以内にはランクインしたが、まだ彼の存在感が完全には認知されていなかったデビュー3年後の2ndアルバムで、FUNK路線に明確に舵を切ったのだ。どうしてもある程度のキャッチーさ、J-POPらしさを要求される「(いわゆる)シングルA面」を1曲も含まないアルバムを出すことによって(カップリング(B面)としては「一途な夜、無傷な朝」(CDのみ)とバージョン違いの「永遠の翼」が収録)。
売るためにJ-POP王道に媚びるのでなく、J-POP本流にクロい色を入れよう、という気概にあふれている。
「PSYCHIC BEAT」。Aメロがワンコードのこの曲をアルバム1曲目に持ってくるあたりがKUBOTAの覚悟か。サビも抑揚がなく難しい曲。強いて言うならBメロのメロディアスな部分だけが一般受けしそう?杉山卓夫のピアノソロはテンションノートバリバリの攻撃的なもの。ラストもテープが切れたようなブチっとした終わり方。
イントロの静かな導入でバラードが始まるかのような錯覚を起こさせておいて実はシンベのうねりとギターのカッティングが鋭さがファンキーなダンスチューン「RANDY CANDY」。江口信夫のカタめのドラムスと羽田一郎の鋭いギターのカッティングがアゲる。
ラストを飾るのは隠れた名曲「八番目の虹の色」。歌う中村キタローのベースラインが控えめなバックにのせて朗々と歌うKUBOTAの歌声に絡む。♪I break my lonely days/すべて君のせい/青空も風も/気付いたのさ/朝が来る理由も/二人居る理由も/八番目の虹の色/瞳に映して♪最近作詞も自分でやることが多いKUBOTAだが、初期に良く組んでいた川村真澄の難しい詞に上手く歌をつけている。
この作品は売り上げ順位自体はKUBOTAの作品の中では最も振るわなかった(オリコン最高37位)が、ポップスさとファンキィさのバランスが明確に後者に移った作品。これがオリコン1位を記録する3rd~5thアルバムという頂点に続いていく助走となった、という意味では注目すべき作品。
他にも、ハネる6/8リズムの「北風と太陽」、切ない「一途な夜、無傷な朝」、さらにクロい「ダイヤモンドの犬たち」とバラエティにあふれ楽しい。この中からさらにクロさを抽出・濃縮してそれが3rd以降の成功につながるわけだけど、若き日のKUBOTAのイロイロなチャレンジが見える、たのしい作品です。【収録曲】
1. PSYCHIC BEAT
2. 北風と太陽
3. PLACE
4. RANDY CANDY
5. LADY SUICIDE
6. 一途な夜、無傷な朝
7. ダイヤモンドの犬たち
8. 薄情LOVE MACHINE
9. 永遠の翼
10. VISIONS
11. 八番目の虹の色
「RANDY CANDY」
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購入金額
3,200円
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購入日
1987年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2013/09/02
擦り切れるほど聴きました(CDですが( ̄▽ ̄)
これがあまり売れていないというのは意外でした。
cybercatさん
2013/09/02