所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽の分野では特徴的なジャンルが出来上がるとその後万人にわかりやすく翻訳されてウケのよいジャンルとなっていきます。反体制の象徴だったロックしかり、アナーキリズムを象徴したパンクしかり、実験的なテクノもまた....そんな一般化/大衆化/商業化の波をかぶった作品をご紹介します。
NAZCA(ナスカ)は、サックスの清水靖晃を核とした伝説のバンドMARIAH(マライア)の解散後、そのメンバーだった笹路正徳(キーボード)と土方隆行(ギター)が立ち上げたバンド。この二人に、ベースとヴォーカルの坂井紀雄、ドラムス&ヴォーカルの辻野リューベンが加わった4人構成でスタート。
かなり難解で、プログレ好きを喜ばせたMARIAHとは違い、かなりキャッチーで、ポップ。端々にプログレっぽい音使いや構成、変拍子などは見えるが、主題が明確で、曲調の変化も唐突であっても最後には構成の「転」として戻ってくる。
そんな彼らのデビュー作が本作“WORDS OF LOVE”。プログレを上手く風味として使い、ポップロックとして仕上げてある。
「BLACK AND WHITE」は変拍子構成だけど、明快な辻野のドラムスと土方のギターリフで、ポップさを失っていないライトプログレ。初期のTOTOのような雰囲気もある(そういえばこのNAZCAのメンツは、TOTO同様名うてのスタジオミュージシャンでもある)。歌がある間はポップだが、途中の笹路のオルガン音色のソロ⇒きめフレーズを挟んでドラムス+ベースのみのリズムパターン⇒シンセソロとなだれ込み下りはプログレチックだが。
表題曲の「WORDS OF LOVE」は、かなりポップな8ビートロック。覚えやすいギターリフが気持ちよい。おっと思うのは土方のギターソロの前の、辻野の長い(8小節)オンビートソロ(つーか、長すぎフィルイン?w)。
「STILL」は、笹路のオーケストラルに構築されたクラシカルな音のバックに、坂井の男らしい歌声が響く、シンフォニックバラード。途中、グイーンとエレキギターが切り込んできたところでドラムスが入り、王道のロックバラードに。土方の泣きのギターソロが壮大だ。
このあと、NAZCAは2枚のアルバムを出すが、三枚目の“SAMARKAND”
を最後に解散してしまう。プログレを明確・明快にしたという点ではASIA
やUK
と同じアプローチで、それらはけっこう日本でも売れた。しかし同じ路線のNAZCAはアルバムセールス的には振るわなかった。結局日本には「商業プログレ」というジャンルは根付かず、前述のグループが売れたのは、外人スーパースターのアイドル性やネームヴァリューでそのような下地があるように見えただけなのか。
そのあと構成メンバーは散り、音楽界各所で活躍することになる。ドラマーの辻野だけは消息不明だが(ちなみに2nd以降のドラマー藤井章司は2009年他界、合掌)、土方、坂井と笹路はともにプレイヤー兼プロデューサーとして活動。土方はゴスペラーズ、エレファント・カシマシといった特徴あるバンドを、坂井はLINDBERGやプリンセス・プリンセスといったガールズヴォーカルのバンドを、笹路はユニコーンやスピッツ、TUBEなどビッグヒットを持つバンドをそれぞれ手がけ売れっ子プロデューサーとなる。
もともとMARIAH自体がメンツが固定しない音楽制作・プロデュース軍団だった一面があり、メンバーたちの後のプロデューサーとしての成功を見ても、彼らのイイを創る力はホンモノだったのだろう。
でもその頃の日本にはそれを受け入れる下地がなかった、ということかもしれません。
あと、モノ好きとしては、最初からCDで発売された3rd“SAMARKAND”、あとから廉価版で追加発売された1stの本作のワリを喰って?一番好きな2nd“Ⅱ”がCD化されていないのが↓。Wikiにも残っていないようなバンドじゃあ、今後の再発もないだろーなーorz
【収録曲】
1. BLACK AND WHITE
2. POTENTIAL
3. TAKE IT EASY,BOY
4. HEROS
5. WORDS OF LOVE
6. BEST FRIEND
7. STILL
8. THE GREATEST BAND IN HISTORY
「WORDS OF LOVE」
いい曲は多い....
でも完全に忘れられたグループに。
最近の再発ブームでも取り上げられない。
とりま、買い損ねた“Ⅱ”のCDプレス願う。
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購入金額
1,500円
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購入日
1991年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2021/09/27
こういうの大好物です
cybercatさん
2021/09/27
ただSONY系の旧譜らしく?AAC-LC 320kbpsかmp3で、ハイレゾじゃないんですよ。
この頃の楽曲を、非ハイレゾで買うのは負けた気がするので←?