森広隆。「好きな音楽は、Char, jamiroquai, James Brown, Stevie Wonder, 山下達郎など」とかつてメジャーレーベル時代のHPに記していた。cybercatの好みとも完全合致し、ずっと追いかけているアーティスト。彼はタワーレコード系のインディーズでデビューし、その後ワーナーと契約、Maxi Single 4枚とフルアルバム、
ミニアルバム
各1枚残してインディーズに拠点を移す。何がその原因かわからないけれど、売れなくなった、とかそういうのでもないみたい。自分の音楽を通したかったのか。
はたして彼のインディーズ再デビューシングルはザクっと生音を突きつけるような録音状態の盤であったし、続くアルバム
はその先行シングルももう一度練り直して録り直して収録したこだわりよう。一方、メジャー時代通してもほとんど例を見ないほどポップな「MY☆GIRL」や当時飼いはじめたネコをコミカルに歌った「やっぱり猫にお熱なんです」もあってごった煮の様相。
4年の間隔をあけて届けられたインディーズアルバム第2弾は彼の変化が見える。
一言で言うとポップ。悪く言うと軽い。よく言うと肩の力が抜けた、みたいな。
今回のコンセプトは「POP」らしい。短髪ツンツンで鋭いイメージだった彼が、なんとロン毛!
今までとは違った傾向の曲も収められる。
「I Got My Passport」はボサ風のリズムのドラムレスの曲。でもパーカッショニスト宮川剛のノレるリズムに、森の生ギターのカッティング、河内肇のバッキングが乗る、ラテンフレーバーなポップな曲。森のヴォーカルは最終音の長音などで息の長さを魅せるが全体的には力が抜けたプレイ。
「おいしいパン」。森の作詞ではないが(小室みつ子)、かつての「新しい兵器」
のようなメッセージ性の強いソリッドなファンク。♪この地上で/起こること全て/コントロールできるわけじゃない/遠い国の/内戦テロ/テレビの向こうの世界じゃない~そしてある日の朝に/おいしいパン/噛みしめた時に/ふいに思い出すんだ/絶望の目を/モニターに映った/だけどまた続けるんだ/自分に戻って/今夜だけのギグを♪キーボードのシンセブラスではなく、生ブラスのラインがゴージャス。パーカッシヴな河野のオルガンとグルーヴィな紺野光広のベース、サビの前に2/4で1小節だけ挿入されるドラムフィルインで魅せるのは村石雅行。メジャー時代と変わらず、彼らのサポートが仰げるのは森の音楽と向き合う真摯な態度ゆえなんだろう。
「キラキラ」。これが森の新境地か。ファンキィなギターのカッティング、ギターソロはコードと緊張感ある音関係をつくったり、ブレイクにハーモニクスをはさむなど、かなり尖った部分と、詩の内容やキャッチーなサビはPOP!
新しいPOPさと、旧来のファンキィな部分、そして3・11の数日後に創られ配信されていた「ひとりじゃないさ」のように沁みる曲。渾然一体となって、でも「今」の彼をあらわしている。ジャケットも今までのモノトーン調や暗い感じのカッコよさを感じさせたものとは違ってほのぼのとしたタッチ。愛猫ナスカと歩く姿はまさにそのままで「いいんです」というメッセージ。きっとヒトってカッコよいところもあるけどのんびりしたところもあって、世の不条理を憂う鋭いところも猫で癒される一瞬も、全てを内包していて、そして変化していく。
-そんなふうで、いいんです。そういうことかな。
【収録曲】
1. 愛のBeat
2. I Got My Passport
3. ひとりじゃないさ
4. 君への言葉
5. おいしいパン
6. Burnin’ Heart
7. instrumental
8. Lovely Days
9. キラキラ
10. いいんです
「愛のBeat~I Got My Passport~キラキラ~ゼロ地点~いいんです」(with 宮川剛)
-
購入金額
3,000円
-
購入日
2013年06月12日
-
購入場所
Neowing
れいんさん
2014/06/30
cybercatさん
2014/07/01