レビューメディア「ジグソー」

一度は歴史に埋もれたアルバム

Chicagoの通算32作目として発売された本作ですが、本来はアルバム「TWENTY 1」(1991年)の次に制作され、22作目となる予定の作品でした。

本作は1993年頃に作られ、1994年初頭発売という予定になっていました。ある意味原点回帰的な、力強いロック系の曲が多数を占め、しかも収録曲は全てメンバーの自作曲ばかりということで、David Fosterプロデュースの3作(16~18)やシングルヒットを多数輩出した「Chicago 19」などとは対極的な作りであったといって良いでしょう。

しかし、この内容を発売元のReprise(及び親会社のWerner Music)が問題視し、発売に待ったをかけます。というのも、アルバムのチャートアクションはともかく、シングルでは過去最大級の成功を収めた「Chicago 19」に対し、ロック色を強めた「TWENTY 1」はシングル「Chasin' The Wind」が辛うじてTOP40に入ったという程度で、セールス的にも奮わなかったのです。

「TWENTY 1」に対する反省は、バンド側とレコード会社側とで正反対のものでした。レコード会社側は過去に成功を収めたAOR中心の路線に戻るべきと主張しましたが、バンド側は自分たちが思い描いた理想のアルバムを作ろうとし、結果的に力強いブラスサウンドが全開の熱いロックアルバムを作り上げました。それがこの「Stone of Sisyphus」だったのです。

「Chicago 16」以降のサウンドしか知らない人が聴くと、このアルバムがChicagoの作品であることがまず信じられないかもしれません。80年代Chicagoの代名詞といえるラブバラード曲は殆ど見当たらず、曲調も詞も、内容はバラエティに富んでいます。

「All The Years」ではデビュー作に収録されていた「Someday」の冒頭で使われていたシュプレヒコールが挿入されていたり、「Sleeping In The Middle Of The Bed」に至ってはChicago風のヒップホップサウンドが展開されていたりするのです。

ただ、過激な歌詞でファンの間で話題となっていた楽曲「Get On This」は、今回のリリースの際にカットされていますし、音も全体的にソフトに仕上げられていて本来のこのアルバムが持っていた荒々しい魅力はやや削がれています。

なお、メンバーは本作からドラムのTris Imbodenが正式に加入しているほか、「TWENTY 1」から正式に加入となったギターのDewayne Bayleyが曲作りやヴォーカルで大活躍しています。彼は本作がお蔵入りした後「Night & Day」制作の前に脱退しているため、彼のパフォーマンスが大きく取り上げられたのは本作だけということになり、その意味でも貴重な作品といえます。彼のヴォーカルは実はJason Scheffと声質が近く、ハイトーンで張り上げたときの声は一瞬どちらの声かわからなくなることもあるほどです。

ロックバンドとしてのChicagoの魅力を伝えているという意味で貴重な作品なのですが、制作から15年を経たリリースではそれほどの注目を集めることもなく、ファンの間でだけ高く評価されるという作品となってしまいました。予定通りにリリースされていれば世間がどのような評価をしたのかという点が気になる作品です。
  • 購入金額

    2,580円

  • 購入日

    2008年07月23日

  • 購入場所

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