レビューメディア「ジグソー」

イヤホンなら1万円でハイエンド気分が味わえます

一昨年のお正月に、自分へのお年玉として「清水の舞台から飛び降りる」覚悟で買いました。

9980円(税込み)の商品ですが、その時点まで「イヤホンに3000円以上支払うなんて!」と

ずっと感じていたんです。

 

購入のきっかけは、年末に裕福な友人が、同じSHUREのSE535という4〜6万円のイヤホンを買ったことです。 

「聴いてみないか? きっと驚くよ」 と言われました。

生まれて初めてのSHURE掛けに戸惑いながら、聞き慣れた音源を楽しみました。

そして、驚きました。

 

何ですかあれは? これまで経験してきたインナーイヤータイプイヤホンとは次元が違います。
分解能が高く、演奏の隅々まで聴き取れます。 音色自体が素晴らしく上品でありながら、音楽が秘めている情熱や冷たさ、愛情や怒りが伝わるようでした。 

その友人が以前同じように貸してくれた「STAXのSR-003」は、分解能の高さが秀逸だと感じましたが、「欲しいと思わせる」ところまで至りませんでした。

でも、今回のSHUREは欲しい。

 

しか~し、高すぎ。実売価格4~6万円はいかにも高すぎです。
件の友人の実弟は、お兄さんの製品を聞いた後すぐにヨドバシカメラに出かけて、下級モデルを買ったと聞きます。 お兄さん曰く「聴き比べると違いを感じるが、そうしなければ十分満足できるやろ」とのことでした。

 

前述の「SHUREのSE535 Special Edition」を買う財力はありませんが、シュアーのエントリーモデルを探しにお正月のヨドバシカメラに出掛けました。
SE215がエントリーモデルですが、1,000円高でトランスルーセントブルーのスペシャルエディションモデルが存在します。
ただ色が違うだけでなく、ドライバーユニット後方に位置するメッシュ構造部品が異なるようで、この変更によって音抜けやバランスが向上しているとのことです。 自らも愛用しているというヨドバシの店員さんも、スペシャルエディションを強く推します。
店頭での比較試聴では、イヤピースのフィット感等も含めて吟味出来るわけでもありませんので、価格とネット上のレビューや店員さんの勧めに従って購入することにしました。


SE535は小さなハウジング内部に3基の高精度MicroDriverを収納した3ウェイ構造ですが、SE215はシングルユニット・フルレンジ構造です。

 

記憶を頼りに比較すると、やはり535の方が正確で、フラットで、上品な音だったと思います。

あの小さな筐体に3つのユニットを正確に配置し、位相を揃えるのはとてもむずかしいだろうと

想像しますが、商品として売られているだけのことはあります。

 

比較すると215は低域寄りのバランスで、分解能で劣るように感じます。

 

 

でもね、製造原価が4〜6倍もあるとは思えません。

お金を出せる方が居られる前提で、良い物を知る方が居られる前提で、その差額が納得できるかどうかが問題なんでしょう。

 

 

話が戦後しますが、私は3000円以上のイヤホンを買う自分が想像出来ませんでした。

理由のひとつに、ケーブルの断線があります。

屋外で使用することが多い、イヤホンですので、使い捨てカテゴリに入れていました。

 

でも、SHUREのイヤホンならハウジングとケーブルが金メッキコネクタで分離できます。

また、このケーブルが一見とても安っぽいですが、きちんとした性能が備わっています。

ケブラー繊維内部皮膜を持つ為に、柔軟性に欠けるのですが、タッチノイズとは無縁。

自転車、あるいは時速10キロを超えるジョギングで使用しても、ウインドノイズは一切発生しません。 

やはりプロの現場で愛されるSHURE。 

見た目より実を取った素晴らしい見識だと思います。

イヤープラグは、指先でつまむことによって収縮し、数分をかけて元の形状に戻る仕組みのソフトフォーム型がS/M/Lの3つ付属。
このソフトフォーム型のMサイズがデフォルトで装着されています。
シリコンゴム製の一般的なソフトフレックス型が、やはりS/M/Lの3つ付属。

 


高級機に付属している、3団フランジ型イヤープラグやイエロープラグは別売り部品として購入し使うことができます。
リモコン付きケーブルなども同じように使うことができます。
ただ、海外製品故か、別売り部品全般は高めの価格設定がなされているようです。

製品の孔に詰まるかもしれない耳垢を掃除するための専用クリーニングツールが付属。
内部にネットで仕切られた部品入れを持つソフトキャリーケースが付属。
ケーブルは116センチと記載されており、実際にその長さがありますが、前述のように外耳を一周後ろに回して装着する仕組みですので
実効長はもう少し短くなるとお考え下さい。 

DAPを上着に入れる場合はジャストフィットですが、カバンに入れる場合は足りないかもしれません。

 

外への音漏れは皆無だと言ってよいでしょう。
また、外部の音も相当遮断されます。 ある意味ノイズキャンセリングに近い使用感が得られます。

それ故に雑踏での使用や自転車利用時の使用は危険が伴う可能性が高いので、音量などをこまめに調整することが必要となるでしょう。


さて、肝心の音色・音質について現在感じていることを書かせてもらいます。

SHUREを買おうと思った最初の動機となった「まるでスピーカーで楽しんでいるような広い音場感」は上級機と変わらず感じられました。
ステージがとても広く展開します。 

かと言って中央で歌う歌手の歌声が薄くなるような事はありません。


右側のギターと左側のギターが、きちんと別れて聴こえるので、演者を志す方が奏法をコピーする助けになること間違い無しです。
落語では寄席の大きさがよく判ります。 演者がお囃子さんに依頼してドロ太鼓を叩いてもらっているのか、そこを節約して自分の足で舞台を踏み鳴らしているのかが音だけで判別出来ます。 観客の入り不入りもよく判ります。
これは特筆すべき長所だと思います。

上級機と比較すると、「音に少し品が無い」と感じています。
ギターで云うなら、3万円のギターと30万円のギターとの違いの様なものを感じました。
低域の分解能や押し出し、迫力はあまり差がないように感じたのですが、主に高域に差を感じます。
製品スペックを見ると
215が再生周波数帯域 : 21Hz ~17.5kHz
535は再生周波数帯域 : 18Hz ~19.0kHz  でした。 これまであまりこのようなスペックを額面通り信じた事はありませんが、今回はどうやら目安となりそうです。

535で感じた「古い音源に残るヒスノイズを暴く傾向」は後退しますので、それを長所と感じる方もおられそうです。
しかし、中広域全体に「品の無さ」を感じる響きが見て取れます。 僅かですが、分解能の高さ故か、そのように感じます。

これまで愛用してきたSONYのイヤフォンは、音楽を聴きやすく取りまとめる傾向があります。 それは、CDや放送音源をMDに録音した音源が元のそれより「聴きやすく、かつ高音質」に聴こえる場合がある事に似ています。 

聴こえない音ができることで、音楽の主体がよく判るようになるとでも云いましょうか? 確かに良い音楽が楽しめたんです。
535の場合は、恐ろしい分
解能と良い音楽の両立が感じられました。 

215の場合は、分解能の高さ故に、音楽の楽しみが後退する事があると感じる場合がありました。 そしてそれは音源のクオリティに左右されます。 良い音源からは良い感動が生まれる傾向が感じられました。

 

思えば昭和世代のオーディオファンにとってSHUREは特別なブランドです。
あの当時のSHUREはフォノカートリッジ分野で大きな力を持っていました。 なかでもV15typeIIIは憧れの的でした。
ダイヤトーンを愛用していた私は、グレースのF8を愛用。
テクニクスを愛用していた友人は、やはりテクニクスの205cを。 DENONのDL103も忘れてはなりません。
JBLを愛用していた友人は、前述のV15や97を使っていました。 スタントンやエラック、オルトフォン。
それぞれに特徴のあるサウンドを響かせた時代です。
安価なものから高級機まで展開していたaudio-technica。 私の愛用はAT-15EaGでしたが、価格と満足度は見事に比例していました。

1年ほどで寿命を迎える交換針に1万円。 カートジッリ本体にはそれ以上の投資が普通に行われていた時代です。 当時の貨幣価値を考えると
5万円のイヤホンという図式も納得できるような気がして来ました。


しかし、SHUREは聴かせどころをよく知ってるな。 マイルスやコルトレーン、ガーシュインやサッチモ、エラやグレン・ミラーを産んだ国。
熱く叫び、上品に、時に暗く、時に明るく、魂が歌い上げますなぁ。

可処分所得の大きな方や、これから色々なものを吸収していく若い方には、ぜひこのSHUREのイヤフォンを試していただきたいと思います。
住環境の関係などでスピーカーで音楽を楽しみづらい方に。 楽器を楽しみ、奏法のコピーを志す方に。
落語に限らず、自然音を楽しむ方には広い音場感が楽しんでいただけます。
もしお財布が許せば、より高価格の上級機を試して下さい。

  • 購入金額

    9,980円

  • 購入日

    2014年01月03日

  • 購入場所

    ヨドバシカメラ京都

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • フェレンギさん

    2015/10/12

    奥様は、トランスルーセントブルーやルビーの輝きにクラっときませんか?
    世代によっては、旦那さんが音漏れのないイヤホンで音楽を楽しんでいるのは、子供の勉強の邪魔にならないので「OK」とならないでしょうか?
    ぜひご検討を願います。
  • mkamaさん

    2015/10/12

    SE215SPE-A、持っていますが、これなかなか良いですよね。

    奥さんをいかに攻略するのが、高価なイヤホンを購入するのには一番の肝ですね。

    私の場合は、奥さんが視覚障害者 朗読ボランティアに参加しているので
    録音の際、持っていた「UE 900」を幾度となく奥さんに貸して、耳を慣らせていき
    UE 900を譲る条件で
    私の誕生日にWestone W60を買って良いと許可をやっともらいました。
    一旦、高価なイヤホンを買ってしまえば、しめたものズルズルと買ってもそんなに怒られません。(前の半額だからとか言って購入)

    >世代によっては、旦那さんが音漏れのないイヤホンで音楽を楽しんでいるのは
    自室でイヤホンで音楽を楽しんでいるときに、呼ばれても全く気が付かないので
    強烈に怒られてしまいます。
    奥さんが寝静まってからが音楽鑑賞の時間です。
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