所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティスト、バンドがある程度の認知を得、カラーを確立すると、よく取り組まれるものに「カバーアルバム」があります。古今の名曲を自分(たち)の解釈で演るとこうなる!というのを世に問うた作品をご紹介します。
TOTO。何度かご紹介している、Boz Scaggsの名作“Silk Degrees”
のツアーバンドを母体とした凄腕スタジオミュージシャンのグループ。最初期
のメンバーは、ドラムスJeff Porcaro、ベースがDavid Hungate、キーボードDavid PaichとSteve Porcaro、ギターSteve Lukather、ボーカルBobby Kimballだったが、Jeffの死とDavid Hungateの離脱といった大きなもの以外も、メンバーの出入りや正式メンバーから協力メンバーへの移行などいくつかの変遷を受けてきた。
この作品は彼らにとっては最後期、最後のオリジナルアルバム(レビュー執筆時 この後2015年に“TOTO XIV〜聖剣の絆〜”がリリース)の前に出たカバー集。メンバーはリズム隊がドラムスSimon PhillipsとベースMike Porcaroと変わっていたが、オリジナルメンバーとしてDavid PaichとSteve Lukather、そしてボーカルはBobbyが復帰していた(Steve Porcaroは参加もゲスト扱い)。還らぬJeffはともかく、最大ヒット作の「Ⅳ」以降最終期まで長くベースラインを支えたMikeと復帰したBobbyにより、望みうるメンツとしては「最もTOTOらしいメンバー」となった形態で出した作品が、まずこのカバー集。彼らは実に結成25周年を数えていた。
そんな彼らが選んだ曲がシブイ。
「While My Guitar Gently Weeps」。言うまでもなくThe Beatlesの代表曲の一つ...でもLennon-McCartneyではなくGeorge Harrisonの作品だったので裏代表曲か。これはLuke(Steve Lukather)がやりたかったのかな?中間部とラストのギターソロ(特に長~~いラスト!)は気持ちよさそうに弾いている。1コーラス目は打ち込みっぽいリズム+シンセでわりに普通なんだけどラストはSimonがダイナミックに盛り上げているし。
「Burn Down The Mission」は南部っぽさと粋な感じが同居する。カントリーのイメージもあるアメリカンロック。TOTOではあんまりこういうのなかったけれど「懐かしい」感じ。途中とラストのピアノのコード弾きでスピーディな感じがしていいね。
「Sunshine Of Your Love」。CreamですよCream!!4/4+3/4+4/4+4/4の変拍子となっているが、変拍子ドンとコイ!!のSimonの面目躍如!でも元曲のルーズなヘヴィさより、カッチリとしたタッチで、マシンのような正確さ。最後の「Girl Goodbye」(1stのハードチューン)を彷彿とさせるリフにのせてLukeが弾きまくるソロのバックでは千手観音ドラマーだけどw
25周年にあたって彼らの育った頃の名曲の新解釈を示した彼ら。レコード会社も変わって、次のアルバムへの繋ぎ、ともいえたけれど、次の“Falling in Between”がDavid Paichの半身引いた関わり方(レコーディングはするがツアーは行かない)とそれに代わるキーボーディストとしてGreg Phillinganesの正式加入、さらにはその直後にMikeがALS発症でTOTO解散、と言うことになってみると、このアルバムが「彼ららしい」最後の作品ともいえる。
名曲の解釈がおもしろく、TOTOファンでなくても聴いて損のない作品です。
【収録曲】()内邦題、<>内オリジナルアーティスト
1. Could You Be Loved <Bob Marley>
2. Bodhisattva(菩薩) <Steely Dan>
3. While My Guitar Gently Weeps <The Beatles>
4. I Can't Get Next To You <Al Green>
5. Living For The City(汚れた街) <Stevie Wonder>
6. Maiden Voyage/Butterfly <Herbie Hancock>
7. Burn Down The Mission <Elton John>
8. Sunshine Of Your Love <Cream>
9. House Of The Rising Sun(朝日のあたる家) <The Animals>
10. Watching The Detectives <Elvis Costello>
11. It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry(悲しみは果てしなく) <Bob Dylan>
「While My Guitar Gently Weeps」
TOTOを識らない世代にも勧められる
当初から追っている世代には、今更感もあるカバー集だけど、超一流のスタジオミュージシャンが自分たちのテクニックを持って再解釈した名曲集...ととらえるとむしろTOTOへのとっかかりにはよいカモ。
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購入金額
2,548円
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購入日
2002年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2012/12/17
ジェントリー・ウィープスというには洒落すぎているようにも思いますがw
cybercatさん
2012/12/17
>ジェントリー・ウィープスというには洒落すぎているようにも思いますがw
そうですね。たしかにww