その間も彼らは毎年欠かさずライブツアーは開催していて、決して活動を休んでいたわけではありません。後に新作を出せなかった理由については、音楽業界の現状が、ベテランバンドの新作を望んでいなかったことが最大の理由であり、アルバムを作っても売ってもらえる状況ではなかったという旨を明かしています。
事実、本作の3年前に発表されたメンバーの1人、ロバート・ラムのソロアルバム(Subtlety & Passion)には他のメンバーほぼ全員がゲストとして参加していて、あたかもシカゴの新作であるかのような完成度を誇っていました。機会さえあれば、という状況が延々と続いていたのです。
そんな中でメンバーのジェイソン・シェフがカントリー音楽界最高のヒットメイカー、ラスカル・フラッツのベーシスト、ジェイ・ディマーカスにプロデュースを頼んで曲を作ってみるという話を持ち出したところから、事態が動きます。それほどの売れっ子を迎えるのであればアルバム1枚を作るべきだという意見が各所から出始め、あっという間に新作アルバムの制作へと繋がってしまったのです。
ジェイ・ディマーカスは「Back On The Radio」というキャッチフレーズを唱え、本気で頻繁にラジオで流れるようなヒット作を作ろうとしたのですが、残念ながら意図が空回りした部分も見受けられ、一定の評価こそ得たものの、大ヒットには繋がりませんでした。
ただ、アルバムの収録曲は前半の80年代風でヒットを狙えるような楽曲から、後半に並ぶメンバーそれぞれの個性を強く反映したものまでバラエティに富み、音楽的には高い水準を持った作品であるといえます。ただ、ヒットを意識しすぎたためかやや八方美人的なきらいがあり、このアルバムならではという強烈なインパクトが出なかったことが少々残念ではあります。
収録曲のうち、シングルカットされたのは「Feel」「Love Will Come Back」の2曲です。いずれもアダルトコンテンポラリーチャートなどでは健闘したのですが、アルバムではシカゴとラスカル・フラッツの共演が楽しめた後者がなぜかシカゴ単独版でリリースされたり、前者もシカゴの特徴であるホーンセクションをカットしたものをリリースしたりと、ファンからするとややちぐはぐな印象を受けてしまいます。小細工無しにアルバム版と同じものをシングル化した方が受けは良かったと思えるのです。
それでも、「Feel」が先行シングルとして届けられたときには、諦めかけていたシカゴの新曲がリリースされたというだけで、ファンは感涙ものでしたし、この曲自体もかなりの良曲であると思います。私自身、2006年4月26日に発売された国内盤を待ちきれず、3月21日に発売となった米国盤をまず購入し、国内盤も発売日に改めて買いに行くというほどでした。楽曲のクオリティは大御所バンドだけに素晴らしく、余計な背景を考えなければ純粋に楽しめる名作であるといえるでしょう。
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購入金額
2,580円
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購入日
2006年04月26日
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購入場所
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