レビューメディア「ジグソー」

産業ロックの完成形

このアルバムは今回登録した紙ジャケットリマスター盤の他、国内盤の初回CD・LP、北米盤のLPを持っています。もちろん、音楽的に気に入っているのが最大の理由なのですが、当時のロックアルバムとしては極めて優れた音質であったことも、複数枚揃えた理由となっています。

シングル曲として知られているのは、日本ではマツダ・カペラのTV-CFで使われた「Pamela」程度だと思いますが、アルバムとしてはオリコンチャートの上位に顔を出すほど売れたようです。本国では「Stop Loving You」などもヒット曲となっています。

TOTO最大のヒット作は、グラミー賞7部門を制覇した傑作「TOTO IV」であることに疑う余地はありませんが、1枚のアルバムとしての完成度はむしろ本作の方が上ではないかと思っています。シングル曲は単に「シングルとしてカットされた曲」という意味合いしか感じられないほどに、収録曲全てのクオリティが高いことに感心させられます。事実、近年のTOTOのライブでは定番となっている本作の収録曲「Home Of The Brave」は、シングルカットはされていない曲です。

前作から加入したヴォーカリストのJoseph WilliamsもTOTOのサウンドとの相性が非常に良く、私は初代ヴォーカリストのBobby Kimballと2代目のFargie Frederiksenのライブパフォーマンスも観に行った経験がありますが、Joseph Williamsの声が最も曲に合っていると感じられました。

TOTOは今作以降は徐々にハードロックに偏りはじめ、リーダーであったJeff Porcaroが急死した後はギタリストのSteve Lukatherが主導権を握るようになると、一般請けするようなサウンドからは距離を置くようになってしまいます。それらの作品もなかなか良いとは思うのですが、やはり彼らの卓越した技術を存分に発揮しつつも、ヒットチャートも狙えるような音作りをしている本作のようなサウンドこそが、TOTOの本来の持ち味だったのではないかと個人的には思っています。

なお、初回盤とリマスター盤との音質の違いについて触れておきますと、初回盤はやや解像度が甘くクリアさも欠けますが、デジタル録音のピーク音量である0dBに、本当のピークが来るぐらいの絶妙な録音がなされています。一方のリマスター盤は、確かに一つ一つの音は明瞭になりましたが、音を良くしたと見せかけるために音圧を上げ、ダイナミックレンジを狭めてしまっている辺りが感心しません。きちんと空間表現が出来るレベルのオーディオで再生する限りでは、むしろ初回盤の方が臨場感で勝っていると思います。リマスター盤の方で聴いてしまうと、名手Jeff Porcaroの演奏が平板に感じられ、まるで打ち込みに聞こえてしまうのです。

ただ、mp3など圧縮音源にした場合にはリマスター盤で作ったものの方が、クリアで明瞭な分高音質に聞こえます。今時の傾向に合わせたりマスターが施されているというべきなのかもしれませんね。
  • 購入金額

    1,890円

  • 購入日

    2007年03月06日

  • 購入場所

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