昨年3月にT430sを借りた時に書いたレビューをブログより転載。
http://katteni80.blog133.fc2.com/blog-category-23.html
・新配列キーボード
2010年1月に発表されたThinkPad X100e/Edgeにて、初めてThinkPadに搭載された6段アイソレーションキーボード。ThinkPadは特有の7段配列を売りにしていただけあり、当初は「やっぱり中国じゃダメだ」とか、「これじゃただのネットブックだ」という批判を受けていたこのキーボードですが、ついにクラシックThinkPadに搭載されたのが2012年6月。
<笠原一輝のユビキタス情報局> 変わるThinkPad、変わらないThinkPad ~6列キーボードになった意図とは
7段キーボードが廃止となった経緯は上のリンクにて語られていますが、実際の打ち味はどのようなものでしょうか。
とは言っても、私は2年前にThinkPad X100eの6段アイソレーションキーボードを体験しているので、それほどの新鮮味は無かったりします。そして、同じ筐体を持つX120e(上写真)を購入していることが、このキーボードの評価なのです。
X120eとT430sの両方に言えるのは、がっしりしたボディでありながら、荷重をしっかりと減衰してくれること。それでいて極端に重いわけではなく、ストロークが2mm(従来は2.5mm)しかないことを考えれば大したものだと思います。そして、キーにくぼみがある為、従来のキーと違和感無く打つ事ができます。
強くタイプしても許容範囲のたわみで、IBM時代のT40のように端が盛大にたわむこともありません。
対して、普通のノートPCはどうでしょうか。何の捻りもない四角形のキートップで、減衰もほとんどされず、ボディを直接タイプしているような状態になっています。当然、快感も何もありませんし、何より指先が疲れてきます。
このように、6段キーボードの採用は妥協ではなく、需要に答え、効率を高めた結果であり、他メーカーのキーボードとは一線を画していると言えます。
ここで、30番台のキーボードの大きな変化を挙げてみようと思います。
基本的にDeleteキーが右端に移動し、PrtScキーが追加されたX1(非Carbon)やX121eの配列を踏襲していますが、右下のカーソルキーが飛び出している点、ファンクションキー列が1mm程度浮き上がっている点が異なります。
6段アイソレーションにおいて、このようなカーソルキーの形状が作られる事は初なのですが、十分なキーピッチが得られるので良い改善だと思います。
対して、ファンクションキー列は、浮き上がりは良いアイデアだと思いますが、従来の4列ごとの区切りが消滅しています。しかし、不思議な事に2ヶ月後のX1 Carbonではこの区切りが復活しています。
レノボお得意の、現行機内でのキー配列のバリエーションと言ってしまえばそれまでですが、この区切りがあれば、30番台のキーボードを最良のアイソレーションキーボードと言えたと思います。
・新形状のクリックボタン
ThinkPadはT400sから、横長で切り欠きのあるタイプのクリックボタンを採用していましたが、翌年2010年のEdgeシリーズより、切り欠きの無い亜種が発生。そして昨年の30番台でついに、切り欠きの無いタイプに統一されています。
2010年のL412で初めてこの切り欠きのあるタイプに触ったのですが、当時の僕はこのように書いています。
"ボタンが大きくなったことで両手をキーボードに置いた状態で左親指を左クリックボタンとスペースキーに、右親指をスクロールボタンに置くことが可能となり、手を動かす事無くほとんどのことができるようになりました"
確かに、両手をキーボードに乗せた状態をずっと維持できるようになったのは、大きな進化だったと記憶しています。ただ、切り欠きのことは、それまで使っていたR52と根本的には変わらないので、大したことは書かれていませんが、今回の改変では、それまであった下部の盛り上がりが無くなっています。それにより、指を引っ掛けるようにして押す、というのが難しくなっています。
簡単な形状に統一してしまおうというのが、今回の目的だと思いますが、それによって使い勝手が下がってしまったのは非常に残念です。
・筐体
ThinkPad T430sのコンセプトは、オールインワン(大画面・通常電圧CPU・光学ドライブ・良いキーボード)で薄くて軽く、且つ強靭という、欲張ったものです。
そのため、上の写真のような持ち方をしてもたわむ感じはありませんし、バッテリーがパームレスト側にあるので、見た目以上に軽々と持つ事ができます。
パソコンにダメージを与える持ち方をするのは、当然良いことではありませんが、ユーザに必要以上に意識させることで使い勝手を悪くするというのも考え物。このパームレストを掴んで持ち運ぶというのは、案外運びやすいのです。
そして、こんな持ち方も可能。さすがに重量物であるバッテリが先端に行くので、持つのはしんどいですが、カーボン製の天板と、ステンレス(?)のヒンジによって、これでもたわみは感じられません。
この強度を実現しているのが、マグネシウム合金製のボトムカバーと、それに覆いかぶさる形で装着されているRoll Cage。
ノートパソコンを一番単純な形で構成しようと思えば、箱型の構造物になると思いますが、それをすると重くてぶ厚いパソコンになってしまいます。逆に、一枚の板なら、ある程度の厚さがあればかなりの強度を出す事ができますが、それではパソコンとは成りませんし、何より、さらに重くなってしまいます。
この、箱と板の良い点だけを盛り込んだのが、このT430sの筐体だと思います。上の写真の右部分を見ると分かるように、ボトムカバーの4辺の内3辺はこのような凸凹した形になっています。
これは、同じ定規でも横に曲げるのと、縦に曲げるのでは全くたわみが違うのと同じで、薄い板で強度を出すための工夫です。そして、四角形の全てをこのような形状にするのでは無く、4辺のみの強度を増すことで、重量増を防いでいるのです。
さて、4辺の内3辺と書きましたが、残る1辺は光学ドライブのある左側面です。この部分は完全に平面にせざるを得ないのですが、これをRoll Cageによって補っています。このRoll Cageは広い間隔で4本のネジでボトムカバーに止められており、さらにX字型の骨が2箇所に入っています。
さらに、見辛いですが、手前の四角の肉抜きの面と奥のX字の部分とは段差があり、これによってさらに強度が増しています。
また、これだけでは無く、光学ドライブを囲むように壁が立てられており、光学ドライブの空間によって生じる強度の低下を、少しでも補おうという姿勢が見えます。
キーボードについても、このRoll Cageの上に包まれるような形で装着されるので、固定するネジは2本でも、少し前のモデルのように、端の方がたわんだりすることはありませんし、使っている内にキーボードが反ってきたりということも無いと思います。
長くなりましたが、このT430sは、ThinkPadの20年間で培ってきた経験が、全て注ぎ込まれていて、本当に完成の域に達していると思います。持った時の、すごく頑丈!でも軽いぞ?という心地良い感触は、他社製ノートでは味わう事のできないものだと思います。
・まとめ
T400sシリーズは自分の中では憧れでした。通常電圧で大画面・薄型・軽量・強靭というモバイルPCの理想を満足するほぼ唯一の存在だったからで、初代のT400sが3万円台で売られているのを見ると、嬉しさと同時に、ショックも感じます。
実際に使ってみても、想像していた通りの良さで、1600×900という大画面機なのに、パームレストを軽く持つだけで持ち運びができるというのは感動ものでした。一番上の写真の5年落ちくらいのT61(14ワイド)には、到底不可能な芸当です。
それでいて、非常に考えられた設計によって全く不安を感じない強度と、見た目はチープになりつつも、非常に打ちやすいキーボードを持っており、まさに反則と言っていい出来です。
こんな風に600Xと並べてみたりと、私は古いThinkPadの方が好きと言い切れますが、実際に仕事をさせるとなると、CPUその他の性能とバッテリーが今仕様だったとしても、600Xを選ぶ、という風にはなりません。やはり、ディスプレイ、筐体・・・と、色んなところで進歩しているのです。
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購入金額
0円
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購入日
2013年03月06日
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購入場所
クロスワーク
白輝望さん
2014/01/06
私もデビューしたいところですが中々機会に恵まれません。ちょうど13.3インチのノートPCが壊れてしまったので、X1Carbonも考えたのですが・・・踏み切れずにいます。
名湯さん
2014/01/07
ケースの構造のくだりは、とりあえず開けてみるか→なんじゃこりゃ!となった覚えがあります。現行モデルはもっと合理的な構造になっているようですね。
X1 Carbonは持っていてウキウキするパソコンでした。後継機が出なさそうなので、X300シリーズのように中古相場は高いままでしょうね…