ASIA。「プログレ」というジャンルが終焉を迎えようとしていた1980年代初頭、いわゆるプログレ界のスタープレイヤーで組まれたバンドがASIA。その1作目は
「商業プログレ」と揶揄されながらも明快で難解ではない楽曲、メンバーのスター性、「プログレ方程式」通りの演奏などでセールスを伸ばした。
しかし、スターを集めたバンドはなかなかその結束を保つのが難しい。本作は3作目だが、すでにメンバーチェンジが行われている。ギタリストが元YESのSteve Howeから当時無名のMandy Meyerに。しかしこれも「結果的にこうなった」と言うだけで、実は2nd発表後の来日コンサート前にHoweと確執があったメインボーカル兼ベーシストで多くの曲のコンポーザーのJohn Wettonが一時離脱している。コンサート後Wettonは出戻り、今度は彼に押し出される形でHoweが離脱し、新ギタリストMeyerになるという複雑な再編劇だった。
本作はそんなお家騒動のあとの作品だが、意外に各楽曲はまとまっている。もともとWettonと元The BugglesのキーボードGeoffrey Downesのコンビが書く曲と、Howeが書く曲は方向性が大きく違ったが、バンド内での音楽性がまとまり、人間関係的な不協和音もなくなったことで結束が強まったのだろうか。
「Go」。パイプオルガンのような音のイントロに続いて、相変わらずのCarl Palmerのズレるギリギリのタメたドラム。♪GO!♪というかけ声がキャッチーだ。Meyerのギターリフやオーバーダブされたディストーションギターが新味だ。
「Hard On Me」はプログレ色は殆ど感じない。普通の良質なアメリカンポップロックだ。この曲は4分もなく、大曲志向で前半と後半で曲調や速さが違って展開したきり戻ってこないなどのかつてのプログレとは一線を画している。強いて言えば間奏のキモチ変拍子風になるところがその片鱗か。
「Too Late」。8分音符でのコード弾きのピアノ、厚いコーラス、サビのリズムにシンクロするスネアドラム、とプログレのテイストを聴かせながらも歌謡ハードロックw。TOTOのデビュー当時の暗さに近いものがある。
結局ASIAというバンドはここまでが活動時期のようなもの。このあとギターリストが固定されない時期が続いたかと思えば、キーマンWettonの再脱退でコアを失う。その後再結成や、重複するメンツでの別バンドでの活動などもあるが、懐古趣味以上にこのジャンルを復活させることはできず、コマーシャルなプログレを目指したASIAは自分たちが育ったフィールドを作り替えることでその使命を終えた。
このアルバムもオーケストラとのコラボ曲1曲以外は4分前後で「まとまっている」。それでいてプログレのフレーバーはかけられていて、覚えやすい曲達だった。でもそれは「プログレッシヴ」=進歩的とはもはや言えないものだったかも知れません。そうそうこれも試聴ファイルのある紙ジャケ盤に繋いでるけど。持っているのは通常盤です。
【収録曲】
1. Go
2. Voice Of America
3. Hard On Me
4. Wishing
5. Countdown To Zero
6. Love Now Til Eternity
7. Too Late
8. Suspicion
9. Rock And Roll Dream
10. After The War
「Go」
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購入金額
2,000円
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購入日
1992年頃
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購入場所
きっちょむさん
2012/05/31
確かに商業的だ。
やっぱり1980年代は、
より単純なパンクロックに世間が流れた時代ですから、
プログレの楽曲自体にも影響があったのでしょうか。
cybercatさん
2012/05/31
>確かに商業的だ。
「いわゆるプログレ」ではなくて、プログレ風の味付け(変拍子やユニゾン、オーケストラの導入)をしたロックですね。軽薄短小がもてはやされた時代ですから..