機齢もずいぶん経ってトラブルが多くなったダイナソアA型で、美紀とチャンの二人は無重力下でしかできない結晶を地球へ持って帰るのだが、ノーズギヤのダウンモーターとロック回路が断線するとこからお話が始まる。
航空機と同様ノーズギヤは手動でも降ろせるが、スペースシャトルと同じリフティングボディ宇宙機では大気圏内では推力はなく、大気圏突入のブラックアウト回復から着陸まで時間がない。
最悪は胴体着陸だが、スペースプランニングの社長、ジェニファーは依頼主と賭けをしており、成功すれば報酬のほかに、シェルビー・チューンの427エンジンをかけていた…自分のコブラにつけるために。
その物欲とスタッフの有給+飛行手当2倍のために、発射母機であるハスラーで空中回収なんていう無茶なプランが実行される。
前作と同じように、美紀はいきなり曲芸まがいなことをやらされるわけですが、本当に大変なのは
ここから…
●宇宙開発は湯水のごとく金を使うが、時として見返りもある。
彗星を捕獲、蒸着膜を施して地球圏にもってきて水資源を確保するプロジェクトを手がけていた同業最大手企業が、滅多にない太陽活動活発化により蒸着膜が破損、彗星は大小数個の破片になってしまった。
これで投資回収が危ぶまれ、その会社は経営破たん。
債権回収のオークションが開催されるところからが本編になる。
最大手のオークションということから、
新品ほやほやの宇宙往還機 ダイナソアEや、洋上打ち上げ施設 ほかいろいろ出品されるが、美味しいものは、華僑系のカイロン物産が金にものを言わせて買い占める。
規模拡大を望むジェニファーは臍をかむのだが、カイロン物産には腐れ縁の元旦那が指揮を取っている。
彗星のプロジェクト自体は入札不調に終わるのだが、エントリフィーを払って、彗星への一番乗りした企業が所有権、採掘権を得るレースが実施される。
ジェニファーは、同業に進出を企むレースへの独断で参加を決め、同じくレースに参加する元旦那と賭けをすることになる。
ジェニファーが勝ったら、元旦那が落札したダイナソアE型をもらう。
元旦那が買ったら、ジェニファーは自分の会社ほっぽりだして、元旦那を手伝う。
この賭けはどうなる?
●まとめ
このお話は、一番早く彗星までいって旗を立てて、無事戻るのがミッションである。
限られた時間のなかで、エンジンも、起動上のデポを持たない零細企業がコネと知恵を駆使して頑張っていくさまはなかなか楽しい。
この話が書かれた 1998年時点でMUSES-C計画はすでにスタートしていたので、おそらく彼の頭にも情報は入っていたと思うが、小惑星を魅力ある資源(水)をもつ彗星に変えて、無人機を有人機へ、
そして、国から民間へ舞台を変えてSFとして成立させている。
なお、はやぶさでも使われている イオンエンジンや、プラズマエンジン、レーザー推進…いろいろなエンジンが登場している。
スペースプランニングが用意する宇宙機は、プラズマエンジンを搭載していて、はやぶさのイオンエンジンと同様推進力は小さいが比推力が大きく燃料搭載量が少なく、長時間噴射可能なタイプである。
本作でもいろいろなトラブルに見舞われるが、それは次の中の巻で。
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購入金額
515円
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購入日
1998年03月頃
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購入場所
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